1. 歌詞の概要
「Let’s Get Rocked」は、Def Leppardが1992年にリリースしたアルバム『Adrenalize』のオープニングを飾るシングルであり、全世界で大きなヒットを記録した代表曲のひとつである。歌詞のテーマはシンプルで、青春の自由、反抗心、そしてロックによる解放感をストレートに描いている。
主人公は「テレビを消して外に出ろ」「宿題なんて放り出して楽しもう」といったメッセージを叫び、日常生活の退屈さを振り払うように「Let’s get rocked!(ロックしようぜ!)」と繰り返す。そのフレーズ自体が曲のスローガンとなり、聞き手に即座にシンガロングさせる力を持っている。内容的には軽快でユーモラスだが、裏には「束縛からの解放」というロックの根源的精神が流れている。
2. 歌詞のバックグラウンド
1992年の『Adrenalize』は、Def Leppardにとって非常に特別な作品である。1987年の『Hysteria』で頂点を極めた後、バンドは大きな試練に直面した。1980年代末にギタリストのスティーヴ・クラークが急逝し、精神的にも音楽的にも大きな痛手を負ったのだ。そうした状況下で制作された『Adrenalize』は、彼の不在を埋めつつ、前作に続くアリーナ・ロック的なスケールを維持しようとする挑戦だった。
「Let’s Get Rocked」はその幕開けを飾るにふさわしい、軽快でポジティヴなアンセムとなった。シングルとしては全英2位、全米15位を記録し、MTVでのヘヴィローテーションによって世界中の若者に響いた。特にCGを駆使したミュージック・ビデオは当時としては斬新で、主人公のアニメキャラクター「Dopey」が親への反抗やテレビゲームの世界を彷徨うコミカルな映像は、曲のテーマを視覚的に強調した。
こうした背景を踏まえると、「Let’s Get Rocked」は悲劇を乗り越えたバンドの「生きる喜び」の宣言であり、ロックを通じて再び前進しようとする強い意思の表れでもある。
3. 歌詞の抜粋と和訳
(歌詞引用元:Def Leppard – Let’s Get Rocked Lyrics | Genius)
Do you wanna get rocked?
ロックしたいかい?
Let’s get, let’s get, let’s get, let’s get rocked
さあ、ロックしようぜ
I don’t wanna work it out
ごちゃごちゃ考えたくはない
I just wanna play
ただ楽しみたいだけなんだ
I don’t wanna take the bus
バスになんか乗りたくない
I don’t wanna go to school
学校にだって行きたくない
Let’s get the rock out of here!
ここからロックで飛び出そう!
歌詞は極めてストレートで、日常や義務から逃れ、ただ「楽しむ」ことを賛美している。80年代的な享楽主義の延長でありながら、90年代初頭の若者文化にフィットするポップな言葉選びが印象的だ。
4. 歌詞の考察
「Let’s Get Rocked」は、Def Leppardの楽曲の中でも最もユーモラスで直接的なメッセージを持っている。従来の彼らがしばしば扱ってきた「愛と欲望」「裏切りと情熱」といったシリアスなテーマとは異なり、この曲は「退屈な日常からの解放」「音楽による自由」というロックンロールの原点に立ち返っている。
「学校に行きたくない」「宿題は嫌だ」という歌詞は、表面的には子供じみた反抗に聞こえるが、そこには「権威や束縛からの自由」を求めるロックの普遍的精神が込められている。これはビートルズやストーンズから続く伝統を受け継ぎつつ、90年代初頭のポップ・ロックの文脈に置き換えられたものだ。
また、この曲がリリースされた1992年という時代背景も重要である。グランジが台頭し、ロックがシリアスな方向に傾いていく中で、Def Leppardはあえて「楽しさ」「祝祭性」を前面に押し出した。この選択は批評家から賛否を呼んだものの、大衆的には強く受け入れられ、彼らが依然としてアリーナを揺るがす存在であることを証明した。
「Let’s get rocked!」という掛け声はライブで絶大な効果を発揮し、観客が一体となって叫ぶ瞬間は、まさにロックの持つ祝祭的な力を体現している。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Pour Some Sugar on Me by Def Leppard
同じく祝祭性に満ちたアンセムで、観客参加型のエネルギーが共通する。 - Armageddon It by Def Leppard
ユーモアとコール&レスポンスを重視した楽曲で、「Let’s Get Rocked」との親和性が高い。 - Rocket by Def Leppard
ロックの推進力と祝祭感をテーマにした楽曲。アリーナを揺るがす迫力が共通する。 - We’re Not Gonna Take It by Twisted Sister
反抗と自由をユーモラスに描いた80年代ロックの代表曲。 - Livin’ on a Prayer by Bon Jovi
アリーナロックの象徴的アンセム。前向きなメッセージと観客との一体感が共通する。
6. 「Let’s Get Rocked」が持つ象徴性
「Let’s Get Rocked」は、Def Leppardにとって90年代の幕開けを告げる重要な楽曲であり、彼らが悲しみを乗り越えてなお「楽しむこと」を選んだ証でもある。深いテーマ性を持つ『Hysteria』の後に、あえて軽快でストレートな楽曲を提示することで、バンドは自らの幅広さを示した。
ライブではオープニングや終盤の定番として観客を盛り上げる役割を担い続けており、観客が「Let’s get rocked!」と叫ぶ瞬間は、バンドとファンが一体化する儀式のように機能している。
総じて「Let’s Get Rocked」は、Def Leppardの音楽における「享楽」と「解放」の精神を端的に表す楽曲であり、90年代以降も彼らがアリーナ・ロックの旗手であり続けたことを証明する鮮烈なアンセムなのである。
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