発売日: 2000年4月4日
ジャンル: ファンク、ジャズ・ファンク、ニューオーリンズ・グルーヴ、ソウル・ロック
概要
『Late for the Future』は、ニューオーリンズのグルーヴ集団Galacticが2000年に発表したサード・アルバムであり、バンドのファンクDNAとソングライティングの成熟が交差する、“インストから歌モノ”への転換点とも言える重要作である。
この時点でJelly Joseph(Anjelika ‘Jelly’ Joseph)はまだ参加していないが、本作には当時のヴォーカル担当Theryl “The Houseman” DeClouetが全面参加しており、現在のJelly Josephが担う“魂の声”の原型となる役割を見出せるアルバムでもある。
よりダンサブルに、よりソウルフルに、そしてより濃密に──
『Crazyhorse Mongoose』で確立されたインスト・ファンクの骨格に、人間の声が物語と感情を与える構成が加わったことで、Galacticは初めて“楽曲で魅せるバンド”へと進化した。
全曲レビュー(主要トラック抜粋)
1. Black Eyed Pea
ファンキーなブラスとベースラインが炸裂するオープニング。
Housemanのスモーキーなボーカルが加わることで、冒頭から“熱”が伝わる。
Jelly Josephのソウルフルな歌唱と重ねて聴きたくなる一曲。
2. Bobski 2000
インストで構成されたグルーヴ・ジャム。
ホーンとギターの応酬がアグレッシブで、まさに“音の会話”と呼べるような流れ。
ライブでも頻繁に演奏される人気曲。
3. Action Speaks Louder Than Words
1970年代のソウル・メッセージを思わせるタイトルと構成。
DeClouetのリードで、社会意識と個人の情熱がファンクに宿る瞬間を捉えている。
4. Century City
疾走感のあるファンク・トラック。
タイトルが示す通り、近未来都市の喧騒と躍動を想起させるアレンジが特徴。
バンドのインストとヴォーカルが見事に溶け合った一曲。
5. Love on the Run
本作中もっともメロウなバラード。
リズムを抑えた構成の中で、Housemanの情感たっぷりな歌声が映える。
Jelly Josephが後年この楽曲を引き継ぎ、現代版として再解釈する可能性を感じさせる名曲。
6. Baker’s Dozen
ジャム色の濃いインストゥルメンタルで、スネアの突き上げとギターリフが絡み合う。
“即興の美学”がここでも健在。
総評
『Late for the Future』は、Galacticがインスト・ファンクの枠を超えて“物語のあるバンド”へと進化した第一歩であり、現在のJelly Josephによるソウルフルなパフォーマンスを下支えする構造的ルーツがここに刻まれている。
特にTheryl “The Houseman” DeClouetのヴォーカルは、ファンクのグルーヴに“人間の痛みや喜び”を流し込む装置として機能しており、Jellyの現在の役割との響き合いが深い。
本作を聴くことで、Galacticというバンドが持つ“声”の系譜が見えてくる。
このアルバムのタイトルが示すように、“未来に遅れてやってきた”音楽──だが、それは今だからこそ必要とされるものだった。
そんな時代錯誤で、しかし確信的なグルーヴがここにある。
おすすめアルバム(5枚)
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Galactic / From the Corner to the Block
ヒップホップとファンクの融合。歌モノと実験性の両立が光る。 -
The Greyboy Allstars / West Coast Boogaloo
ジャズ・ファンクの技巧とラフなグルーヴ。Galacticとの文脈共有多数。 -
D’Angelo / Voodoo
ファンクの精神を現代ソウルに変換した金字塔。HousemanとJellyの架け橋的存在。 -
Sharon Jones & The Dap-Kings / 100 Days, 100 Nights
ヴォーカル・ファンクの核心。ソウルフルな女性ボーカルを探るなら必聴。 -
Dumpstaphunk / Dirty Word
ニューオーリンズ新世代ファンク。Galacticとの地元共演も多数。
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