
発売日: 2004年4月13日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、インディーロック、ポストハードコア
繊細さと情熱が交錯するデビュー作——As Tall As Lionsが描く音楽の詩情
ニューヨーク出身のバンドAs Tall As LionsのデビューアルバムLafcadioは、オルタナティブ・ロック、エモ、ポストハードコアの要素を織り交ぜた、情熱的かつ繊細な作品である。
本作は、感傷的なメロディ、ダイナミックなバンドアレンジ、叙情的な歌詞が見事に融合し、2000年代のエモ/オルタナティブロックシーンにおいて独自の地位を築いた。ヴォーカルのDaniel Nigroのソウルフルな歌声と、流れるようなギターライン、空間的なプロダクションが特徴的で、後のセルフタイトル作As Tall As Lions(2006年)で完成する独自の音楽性の片鱗が感じられる。
タイトルのLafcadioは、日本に帰化したギリシャ生まれの作家小泉八雲(Lafcadio Hearn)に由来しているとも言われており、どこか神秘的で詩的な雰囲気がアルバム全体に漂っている。
全曲レビュー
1. 96 Heartbeats
アルバムの幕開けを飾る、心臓の鼓動を思わせるリズミカルなドラムと、美しく儚げなメロディが印象的な楽曲。繊細なヴォーカルとギターのアルペジオが絡み合い、バンドの持つエモーショナルな魅力を象徴する一曲。
2. If I’m Not Out Burning
ギターの美しいクリーントーンが響く、浮遊感のある楽曲。歌詞では、喪失や迷いといったテーマが扱われており、エモーショナルな展開が胸を打つ。
3. Acrobat
アルバムの中でも特に激しい展開を持つ楽曲。ポストハードコア的な要素が強く、ダイナミックなリズムチェンジが特徴。ヴォーカルの表現力が際立ち、楽曲全体がドラマチックに展開していく。
4. Why We Cry at Movies
タイトル通り、映画のワンシーンのように感傷的な楽曲。ピアノを基調としたアレンジと、Daniel Nigroのソウルフルなボーカルが絡み合い、バンドの持つシネマティックな音楽性を引き出している。
5. Break Blossom
ダークな雰囲気を持つ、ポストロック的なアプローチの楽曲。ギターの残響音が空間を支配し、内省的な歌詞がリスナーを引き込む。
6. A Stab at the Sun
オルタナティブロックとエモの中間を行く、疾走感のあるナンバー。キャッチーなメロディと、緊張感のあるリズムが特徴で、バンドの持つライブ映えするダイナミックな一面が表れている。
7. The Carousel
静かなギターアルペジオから始まり、徐々に感情の高まりとともに展開していく楽曲。サウンドのレイヤーが増していく中で、ヴォーカルの熱量も上がっていき、終盤には圧倒的なカタルシスを迎える。
8. Love, Love, Love (Love, Love)
タイトルの繰り返しが印象的なミドルテンポの楽曲。ロマンティックな歌詞と、美しいメロディが調和し、心に残るサウンドスケープを生み出している。
9. Goodnight, My Lady, and a Forever Farewell
アルバムのラストを締めくくる、壮大なバラード。サウンドが徐々に広がっていき、バンドの持つドラマチックな演出力が存分に発揮される。静かに幕を閉じるようなエンディングが印象的。
総評
Lafcadioは、As Tall As Lionsの原点であり、彼らの持つエモーショナルな魅力と、詩的な音楽性が詰まった作品である。
本作の特徴は、繊細なメロディとダイナミックなバンドアレンジのバランスの良さにあり、静と動のコントラストが絶妙に表現されている。ヴォーカルのDaniel Nigroの持つ表現力豊かな歌唱が、楽曲に深みを与え、バンドの持つ唯一無二のサウンドを際立たせている。
2000年代のオルタナティブ・ロック/エモ・シーンの中では、比較的アート志向の強いバンドであり、Lafcadioはその後のセルフタイトル作As Tall As Lions(2006年)やYou Can’t Take It with You(2009年)へと続く、彼らの進化の始まりとなる重要な作品である。
本作は、激情と叙情が交錯する、美しくも儚いロックアルバムであり、ポストロックやシネマティックな音楽に興味があるリスナーにも響く作品となっている。
おすすめアルバム
- Circa Survive – Juturna (2005)
エモーショナルなヴォーカルとアート志向のサウンドが共通。 - The Appleseed Cast – Low Level Owl (2001)
ポストロックとエモを融合させた、実験的なサウンドが本作とリンク。 - Copeland – Beneath Medicine Tree (2003)
繊細なメロディと叙情的な歌詞が、本作と共鳴する。 - Mae – The Everglow (2005)
美しいメロディとシネマティックな展開が、本作と類似。 - The Dear Hunter – Act I: The Lake South, The River North (2006)
アートロック的なアプローチとドラマチックな構成が共通点を持つ。
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