イントロダクション
King Gizzard & the Lizard Wizard（キング・ギザード・アンド・ザ・リザード・ウィザード）は、オーストラリアのメルボルン出身のサイケデリックロックバンドで、驚異的な生産力とジャンルを超えた音楽性で世界中の音楽ファンを魅了しています。彼らは、サイケデリックロック、ガレージロック、プログレッシブロック、さらにはジャズやヘヴィメタル、電子音楽まで、ジャンルの枠を大胆に超えた作品を次々とリリースしており、特に2017年には1年間で5枚のフルアルバムを発表するという驚異的なペースで注目を集めました。常に新しい音楽を追求する彼らの音楽は、型破りでありながらも高度に計算されたアプローチが特徴です。
アーティストの背景と歴史
King Gizzard & the Lizard Wizardは2010年に結成されました。バンドはフロントマンのスチュ・マッケンジー（Stu Mackenzie）を中心に、ギター、ベース、ドラム、フルートなど、複数の楽器を演奏するメンバーから成り立っています。ライブパフォーマンスでは、ダブルドラム編成やマルチ楽器プレイヤーによる圧倒的な音の厚みが特徴です。
2012年にリリースされたデビューアルバム『12 Bar Bruise』は、ガレージロックとサイケデリックロックを基調としたエネルギッシュな作品で、オーストラリアのインディーロックシーンで徐々に人気を博しました。しかし、彼らの音楽的な革新性が本格的に注目されるようになったのは、2014年のアルバム『I’m in Your Mind Fuzz』や、2016年の『Nonagon Infinity』といったサイケデリックなサウンドを前面に押し出した作品からです。特に『Nonagon Infinity』は、全曲がシームレスに繋がる構成が話題となり、アルバム全体が永遠にループするというユニークなコンセプトで多くのファンを獲得しました。
音楽スタイルと影響
King Gizzard & the Lizard Wizardの音楽スタイルは、一つのジャンルに収まらず、アルバムごとに大きく変化します。サイケデリックロック、ガレージロック、プログレッシブロック、ヘヴィメタル、フォーク、ジャズ、そして電子音楽まで、多様なジャンルを取り入れていることが彼らの大きな特徴です。スチュ・マッケンジーの独特な高音ボーカルや、シンコペーションの効いたリズム、複雑なギターワーク、さらにはフルートやシンセサイザーの使用が、彼らのサウンドにユニークな彩りを加えています。
彼らは、ビートルズやフランク・ザッパ、ブラック・サバス、そしてクラウトロックのバンドから影響を受けており、それらの要素を独自の形でミックスしています。また、彼らは一貫してDIY精神を持ち、ほとんどのアルバムを自主制作でリリースしています。
代表曲の解説
Rattlesnake
「Rattlesnake」は、2017年のアルバム『Flying Microtonal Banana』のオープニングトラックで、バンドの代表的な楽曲の一つです。このアルバムでは、マイクロトーナル音階（通常の音階に加え、より細かな音階）を導入し、非常に特徴的なメロディが展開されます。「Rattlesnake」は、反復的で中毒性のあるギターフレーズが特徴で、マッケンジーのボーカルと共にサイケデリックな雰囲気を強調しています。
この楽曲は、King Gizzardの実験的なアプローチを象徴するものであり、ライブではファンと共に大合唱が起きる定番曲です。
Gamma Knife
「Gamma Knife」は、2016年のアルバム『Nonagon Infinity』に収録された楽曲で、全体がノンストップでループするアルバムの中でも特にハイライトとなる曲です。ヘヴィなギターリフと、急激に展開するテンポが印象的で、アルバム全体のサイケデリックでプログレッシブなテーマを象徴する一曲です。
歌詞は、宗教や死生観に触れており、エネルギッシュな演奏と相まって、リスナーを強烈な音の渦に引き込む力を持っています。
Crumbling Castle
「Crumbling Castle」は、2017年のアルバム『Polygondwanaland』のオープニングを飾る10分を超える大作で、バンドのプログレッシブロックへの傾倒が如実に表れています。この曲は、複雑な構成と緻密なリズムが展開され、幻想的かつ暗示的な歌詞が印象的です。バンドの演奏技術が最大限に発揮された壮大な楽曲で、彼らの実験的な精神が際立っています。
アルバムごとの進化
King Gizzard & the Lizard Wizardは、アルバムごとに音楽的な冒険を続け、常に異なるジャンルを取り入れてきました。1年間に5枚のアルバムをリリースした2017年は、彼らの多作さと音楽的多様性が顕著に表れた年でした。
『12 Bar Bruise』（2012年）: デビューアルバムで、ガレージロックの粗削りなエネルギーが特徴。バンドの初期のサウンドがよく表れています。
『I’m in Your Mind Fuzz』（2014年）: サイケデリックロックの要素が強まり、より洗練された音楽性を追求した作品。ギターリフと反復的な構造が印象的です。
『Nonagon Infinity』（2016年）: 全曲がシームレスに繋がる構成で、無限にループするアルバムとして話題に。プログレッシブロックとサイケデリックロックの融合が見事に表現されています。
『Flying Microtonal Banana』（2017年）: マイクロトーナル音階を取り入れた実験的なアルバムで、異国情緒溢れるサウンドが特徴。「Rattlesnake」を収録。
『Polygondwanaland』（2017年）: プログレッシブロックを基調に、複雑なリズムと壮大なコンセプトが展開される無料配布アルバム。「Crumbling Castle」を収録。
影響を受けたアーティストと音楽
King Gizzard & the Lizard Wizardは、ビートルズやフランク・ザッパ、ブラック・サバス、カンなどのクラシックなロックバンドや、クラウトロックのバンドに影響を受けています。また、彼らはガレージロックやサイケデリックロックの伝統を受け継ぎつつも、プログレッシブロックやジャズ、ファンク、そしてヘヴィメタルといったジャンルを自由に横断し、常に新しい音楽的探求を続けています。
影響を与えたアーティストと音楽
King Gizzard & the Lizard Wizardは、現代のインディーシーンやサイケデリックロックシーンに大きな影響を与えています。彼らの大胆な音楽的実験や、ジャンルにとらわれない多様なアプローチは、多くの若手バンドにインスピレーションを与えています。また、彼らのDIY精神と多作さは、アーティストにとっての一つの新しいモデルとなっており、インディーミュージックの可能性を広げています。
まとめ
King Gizzard & the Lizard Wizardは、ジャンルを超えた多様な音楽性と驚異的な生産力で、現代のロックシーンにおいて独自の存在感を放っています。彼らのサウンドは、サイケデリックロックからプログレッシブロック、ヘヴィメタルまで幅広く、常に進化を続けています。2017年の1年間で5枚のアルバムをリリースするという偉業や、『Nonagon Infinity』の革新的な構成は、彼らがいかに大胆で実験的なアーティストであるかを象徴しています。King Gizzard & the Lizard Wizardは、今後も新たな音楽の境地を切り拓き続けることでしょう。
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