アルバムレビュー：Kill ’Em All by Metallica

アルバムレビュー

2024.12.08

発売日: 1983年7月25日
ジャンル: スラッシュメタル

Metallicaのデビューアルバム『Kill ’Em All』は、スラッシュメタルの原点ともいえる作品であり、ヘヴィメタルの歴史に新たな章を刻んだ一枚である。このアルバムは、スピード、攻撃性、そして革新性を兼ね備えたサウンドで、当時のメタルシーンに衝撃を与えた。Metallicaのメンバーが影響を受けたNWOBHM（ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル）やパンクロックの要素を融合させ、独自のスタイルを確立している。

プロデューサーにポール・カーツォフを迎え、バンドの持つ生々しいエネルギーをそのままパッケージしたこの作品には、ジェームズ・ヘットフィールド（ボーカル＆リズムギター）、ラーズ・ウルリッヒ（ドラム）、カーク・ハメット（リードギター）、そしてクリフ・バートン（ベース）の若き才能が凝縮されている。歌詞には反抗心や自由への渇望が込められており、ギターリフの切れ味とスピード感は、後のメタルシーンの基盤を築いた。

『Kill ’Em All』は、現在でもスラッシュメタルの金字塔として評価されており、その衝撃は40年近く経った今も色褪せることがない。

1. Hit the Lights

アルバムの幕開けを飾る曲で、Metallicaのエネルギーが爆発するようなイントロから始まる。スピード感あふれるリフとシャープなギターソロが特徴的で、バンドの自己紹介とも言える一曲。ヘットフィールドの力強いボーカルが、これからの展開を予感させる。

2. The Four Horsemen

アルバムの中でも特に人気の高い楽曲。アポカリプス（黙示録）に登場する「四騎士」をテーマにした歌詞が、重厚なリフとドラマチックな展開で描かれる。中盤のテンポチェンジとギターソロは、バンドのアレンジ力の高さを物語っている。

3. Motorbreath

パンクロックの影響が色濃く出た曲で、短くて疾走感のある構成が特徴。歌詞には自由なライフスタイルへの賛美が込められており、ライブでの盛り上がりが想像できる一曲だ。

4. Jump in the Fire

ヘヴィなリフとキャッチーなメロディが融合した楽曲で、聴きやすさと激しさが絶妙にバランスしている。歌詞は誘惑や堕落をテーマにしており、Metallicaのダークな一面を垣間見ることができる。

5. (Anesthesia) – Pulling Teeth

クリフ・バートンによるベースソロがフィーチャーされたインストゥルメンタル曲。歪みを効かせたベースサウンドがギターのように響き、彼の卓越した演奏技術が存分に発揮されている。

6. Whiplash

スラッシュメタルを象徴するスピード感あふれる楽曲。ヘッドバンギングを描写した歌詞がまさにライブ向きであり、Metallicaのエネルギーを最もストレートに伝える一曲だ。

7. Phantom Lord

重厚なリフと疾走感が融合した曲で、ファンタジックなテーマの歌詞が印象的。中盤のテンポダウンから再びスピードアップする展開がスリリングだ。

8. No Remorse

比較的長めの楽曲で、ドラマチックな展開が特徴的。タイトル通り「容赦のない」歌詞が攻撃的なリフと相まって、Metallicaのダークな魅力を引き立てている。

9. Seek & Destroy

ライブの定番曲として知られる一曲で、観客との一体感を生むアンセム的存在。ミドルテンポながらも力強いリフとキャッチーなコーラスが、聴き手の心を掴む。

10. Metal Militia

アルバムを締めくくるスラッシュメタルの大爆発。バンドのメタルへの愛と反抗精神を詰め込んだ歌詞が印象的で、疾走感のあるリズムが最後まで飽きさせない。

アルバム総評

『Kill ’Em All』は、Metallicaが若さと情熱で作り上げたスラッシュメタルの原点であり、ジャンル全体に多大な影響を与えた歴史的作品である。全曲にわたってスピードと攻撃性が際立つ一方で、アレンジの巧みさやリフの魅力も随所に感じられる。シンプルながらも圧倒的なパワーを持つこのアルバムは、スラッシュメタルのファンなら必聴の一枚だ。