
発売日: 2019年5月17日
ジャンル: インディーロック、フォークロック
概要
『Indiana』は、Briston Maroneyが2019年にリリースした2作目のEPであり、彼の名をインディーロックシーンに本格的に知らしめた重要作である。
元々テネシー州出身のシンガーソングライターであったBriston Maroneyは、本作を通じて、自身のルーツに根ざしたフォーキーな感性と、若々しいロックの衝動を鮮やかに融合させた。
彼のソングライティングは、繊細な内省と大胆なエモーションが共存しており、その等身大のリアリティが、多くのリスナーの共感を呼び起こした。
EPタイトル『Indiana』は、地名であると同時に、物理的・精神的な「旅路」を象徴している。
自らの居場所を探し、過去と向き合いながら、未来へと踏み出す若者の姿が、アルバム全体を貫く大きなテーマとなっている。
粗削りながらも瑞々しいサウンドと、リリックに滲む誠実さ。
『Indiana』は、Briston Maroneyというアーティストの出発点を鮮やかに刻みつけた作品である。
全曲レビュー
1. Small Talk
勢いのあるギターとエネルギッシュなボーカルが炸裂するオープニング。
表面的な会話への倦怠感をテーマに、若さゆえの衝動をそのまま叩きつけたような一曲である。
2. Fool’s Gold
理想と現実のギャップをテーマにした、ミディアムテンポのナンバー。
きらめくギターリフと、どこか寂しげなメロディラインが心に残る。
3. Chattanooga
自身のルーツであるテネシーの街をテーマにした、温かみとノスタルジーに満ちた楽曲。
穏やかなアコースティックサウンドが、故郷への複雑な想いを優しく包み込んでいる。
4. Under My Skin
恋愛における葛藤と脆さを描いたエモーショナルなバラード。
感情を絞り出すようなボーカルが、楽曲に生々しいリアリティを与えている。
5. Caroline
軽快なビートと甘酸っぱいメロディが魅力のラブソング。
若さ特有の高揚感と切なさが絶妙に交差する一曲である。
6. Rose
アルバムの締めくくりにふさわしい、静かで内省的なナンバー。
花をモチーフに、愛と喪失、そして自己成長を静かに見つめる。
総評
『Indiana』は、Briston Maroneyの持つ「若さの混乱と美しさ」を率直にパッケージした、瑞々しい傑作EPである。
彼の音楽には、過剰な演出はない。
むしろ、粗削りなギターの音、感情をそのまま吐き出すようなボーカル、未整理なままの思考と感情。
それらがストレートに音楽へと結実しており、リスナーはそこに、飾らないリアルな自分自身を見出すことができる。
また、インディーロックのラフなエネルギーと、フォークに根ざした温かみのあるメロディセンスが絶妙に同居しており、Briston Maroneyの音楽的な多面性を早くも感じさせる内容となっている。
『Indiana』は、旅の途中にいるすべての人に向けられた、親密で、時に苦く、しかし確かな励ましを含んだ作品なのである。
おすすめアルバム(5枚)
- Pinegrove『Skylight』
フォーキーなインディーロックと内省的なリリックの融合。 - Bright Eyes『I’m Wide Awake, It’s Morning』
若き日の不安と希望をリアルに切り取った名盤。 - Snail Mail『Lush』
成長の痛みを透明なサウンドに乗せて歌うインディーロック。 - Lucy Dacus『Historian』
叙情的なストーリーテリングと骨太なギターサウンドが魅力。 - Kurt Vile『Bottle It In』
脱力感と緻密なソングライティングを併せ持つ現代フォークロック。
制作の裏側(Behind the Scenes)
『Indiana』は、ナッシュビルのスタジオでレコーディングされ、プロデューサーとしてエンジニアのKyle Dreadenが参加している。
Briston Maroneyは、楽曲制作において極力「その場の感情」を優先し、多くの曲が短期間のうちに書き上げられたという。
また、アレンジにおいても過剰なプロダクションを避け、ギターとボーカルのナチュラルな響きを中心に据えることで、楽曲の持つリアリティを最大限に活かしている。
この制作スタンスが、『Indiana』に漂う生々しさと親密さを支えているのである。
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