I’m a Man by The Yardbirds(1965)楽曲解説

Spotifyジャケット画像

1. 歌詞の概要

「I’m a Man」は、The Yardbirdsが1965年にリリースしたシングルで、もともとはシカゴ・ブルースの巨人、ボ・ディドリー(Bo Diddley)によって1955年に書かれた原曲のカバーである。The Yardbirds版は、オリジナルに敬意を払いつつも、英国風のスピード感とエネルギー、そしてエリック・クラプトンのギターによるブルースの再構築によって、完全に彼ら自身のスタイルへと昇華されている。

歌詞は非常にシンプルながらも、力強い自己肯定のメッセージに貫かれている。「I’m a man(俺は男だ)」という繰り返しは、誇り、男らしさ、性的魅力、自己主張を象徴しており、50年代から60年代にかけての男性性に対する時代の空気感がよく表れている。

この曲においては、物語よりもフレーズの繰り返しと語感のリズムが重要であり、ブルース本来の口語的・即興的なスタイルを踏襲している。The Yardbirdsの演奏によって、このシンプルな歌詞にロック的なダイナミズムと挑発性が加えられた。

2. 歌詞のバックグラウンド

「I’m a Man」の原曲は、ボ・ディドリーが1955年にリリースしたもので、ブルースとリズム&ブルースの狭間に位置する代表的なナンバーである。The Yardbirdsはこれを大胆にアレンジし、1965年のライブおよびスタジオ録音で発表した。

特に注目すべきは、ジミー・ペイジ加入以前のクラプトン在籍期、そしてその後のジェフ・ベックやジミー・ペイジを経て構築された「ロック版ブルースの雛形」としての役割である。彼らのバージョンではテンポが速く、ドラムとギターの対話、そしてビートを強調したアレンジによって、クラブやテレビ番組での演奏でも大きな話題を呼んだ。

ライブ・パフォーマンスでは、楽曲の中盤における“rave up(レイヴ・アップ)”と呼ばれるインストゥルメンタル・ブレイクが特徴的で、ギターが徐々に加速していくスリル感が圧倒的である。これは後のハードロックにおけるソロ展開の原型のような存在とも言える。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、「I’m a Man」の印象的な一節を紹介する(The Yardbirds版に基づく)。

I’m a man
俺は男だ

I spell M–A–N
つづりは「M-A-N」

I’m going back down
もう一度戻って

To Kansas town
カンザスの街へ向かう

I’m gonna bring back my second cousin
いとこを連れて帰るぜ

Little John the Conqueroo
その名は“リトル・ジョン・ザ・コンクルー”

He got a mojo hand
奴は“モジョ・ハンド”を持ってる

He got a gypsy woman giving him advice
ジプシー女が助言してくれるんだ

※引用元:Genius Lyrics – The Yardbirds “I’m a Man”

4. 歌詞の考察

この曲の歌詞は、自己確信とブルース的な魔術的信仰(モジョ・ハンドやジプシー)が入り混じった、極めてアメリカ南部的な言語表現で構成されている。「男である」という宣言は、単なる性別を超えた存在証明・性的誇示・カリスマ性の誇張表現であり、当時のR&Bやブルースに見られる典型的な自己演出のひとつである。

一方で、The Yardbirdsのカバーにおいてこの歌詞はよりアグレッシブな自己表現へと進化している。語り手は「俺はただの男じゃない、“綴りまで見せてやる”ほどの確信を持った男だ」と宣言し、その裏には不安定な時代を生き抜く力や欲望のエネルギーが感じられる。

また、歌詞の後半に登場する“Little John the Conqueroo”や“mojo hand”などのワードは、アフリカ系アメリカ人文化に根ざしたフードゥー(呪術)や民間信仰の象徴であり、それがリズミカルな言葉遊びとして取り込まれることで、呪術的なロックンロールのパワーを引き出している。

※歌詞引用元:Genius Lyrics – The Yardbirds “I’m a Man”

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Mannish Boy by Muddy Waters
    “I’m a Man”の対になるブルース・アンセム。男らしさの誇示と反復の美学が共通。
  • Smokestack Lightning by Howlin’ Wolf
    ブルースのプリミティブな魅力を体現する一曲。魔術性とミニマルな言葉の力。
  • Train Kept A-Rollin’ by The Yardbirds
    彼ら自身の代表的なライブ・ナンバーで、勢いと即興性が炸裂する。
  • Dazed and Confused by Led Zeppelin
    ジミー・ペイジが Yardbirds から引き継いだ構造美とブルースの拡張形。

6. “ブルースの衝動からハードロックの胎動へ”──繰り返される「I’m a Man」が意味するもの

「I’m a Man」は、The Yardbirdsの音楽性が伝統的ブルースからロックの攻撃性とエンターテインメント性へと進化した瞬間を象徴する一曲である。

彼らはアメリカ南部のブルースに敬意を表しながらも、それをそのままなぞるのではなく、スピードを上げ、エフェクトを加え、エネルギーと緊張感を増幅させた。その結果、「I’m a Man」は英国ロックにおける白熱のライブ定番曲となり、次世代のギターヒーローたちに道を開いた。

この楽曲の持つ原始的な力、反復による催眠性、そして“男である”という宣言は、60年代のカウンターカルチャーと男性性の再構築とも深く関わっている。すなわち、「I’m a Man」は、自己確立の儀式であり、音楽のうねりの中に存在を刻み込むための呪文なのである。

ロックの初期衝動を体現したこの曲は、今もなお、「声を上げ、自らを主張せよ」というメッセージを、シンプルかつ力強く伝え続けている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました