アルバムレビュー:Ilana The Creator by Mdou Moctar

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※本記事は生成AIを活用して作成されています。
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発売日: 2019年3月29日
ジャンル: デザート・ブルース、サイケデリック・ロック、トゥアレグ・ロック、ハードロック


概要

『Ilana: The Creator』は、ニジェール出身のギターヒーローMdou Moctarが2019年に発表したスタジオ・アルバムであり、彼のキャリアにおいて重要な転換点となる作品である。

これまでローファイなカセット作品や、現地のフィールドレコーディング的な音源を多く発表してきたMoctarが、本作で初めて“フルバンド体制”による本格的なスタジオ録音に挑戦。
その結果、荒涼としたサハラの空気を纏いながらも、爆発的なエネルギーを持つ“サハラのハードロック”とも言うべき音像が完成している。

録音はアメリカで行われ、プロデューサーにはChris Koltay(Deerhunter、Kurt Vileなど)を起用。
サイケデリック・ロック、ブルース、グランジ、メタル、そしてトゥアレグの伝統音楽が濃密に交差するサウンドは、国境もジャンルも超えた“現代のブルース”として熱烈に支持された。


全曲レビュー

1. Kamane Tarhanin

リズミカルで躍動感あふれるオープニング・トラック。
伝統的な旋律とエフェクトギターが絶妙に融合し、“踊れるトゥアレグ・サイケ”を提示する。
反復フレーズがトランス感を生み、ライブ感覚に満ちている。


2. Taliat

タマシェク語で“彼女”を意味する代表曲のひとつ。
同名曲の過去バージョンよりもアグレッシブに再構築され、ラウドでグルーヴィーなロック・ナンバーに変貌。
ラブソングでありながら、ギターが雄弁に語る熱量が際立つ。


3. Inizgam

爆発的なギターリフが炸裂する、アルバムでも最もハードな楽曲。
まるでSabbathやZeppelinを砂漠で演奏させたかのような重厚感。
ロックリスナーにも訴求力の強い一曲である。


4. Iblis Amghar

「悪魔と長老」というタイトル通り、善悪の二元論的な緊張感が漲る。
複雑なリズムと、揺らめくようなリードギターが儀式的な空気を生み出す。
政治的、精神的テーマを含んだ深みあるトラック。


5. Tarhatazed

インストゥルメンタルながら圧巻の展開力を持つギター・アンセム。
Jimi Hendrixに通じるフリーキーなトーンと、トゥアレグ特有の5音階メロディが融合。
Moctarのギターの“語り”としての力を存分に示す。


6. Ilana

アルバムタイトル曲であり、意味は“創造主”。
祈りのような旋律、そして反復の中に浮かび上がるスピリチュアルな構造。
楽曲全体が“トランス状態”へと聴き手を誘導していく。


7. Anna

ミディアムテンポで展開するメロウなナンバー。
トゥアレグ音楽における“語り”の伝統を感じさせる、静かな内省が魅力。
ギターの余白が詩的に響く。


8. Takamba

タイトルはトゥアレグ文化の伝統舞踏「タカンバ」に由来。
ビートの跳ね方とコール&レスポンス風の演奏が、“祝祭”の熱気を感じさせる。
民族性とロックの融合がもっとも明快に表れている一曲。


9. Tumastin

「我らの民」を意味する、アイデンティティへの深い思索がこめられたラストトラック。
アルバム全体の精神的な締めくくりとして、希望と問いかけが同居する。
エンディングにふさわしい静かな熱がにじむ。


総評

『Ilana: The Creator』は、Mdou Moctarが“世界に向けて本気を出した”瞬間を刻んだアルバムである。
それは、伝統と革新、地域性と普遍性、即興と構築美という相反する要素を、彼独自の感性でまとめあげた極めて完成度の高い作品である。

このアルバムにおける彼のギタープレイは、単なる技巧ではなく“語り”であり、“祈り”であり、“叫び”でもある。
その響きは、サハラの大地を超えて、現代のあらゆる境界を乗り越えて届く音楽の力そのものだ。

爆発的なパフォーマンスと深い精神性を併せ持つこの作品は、アフリカ音楽という枠を超え、グローバル・ロックの重要作として語り継がれていくべき一枚である。


おすすめアルバム(5枚)

  • Tinariwen / Elwan
     トゥアレグ・ロックの元祖が放つ洗練と情熱のアルバム。政治性と詩情が共存する。
  • Jimi Hendrix / Band of Gypsys
     即興性と霊性、ギターが語るソウル。Moctarとの精神的共鳴が強い。
  • Bombino / Deran
     伝統を保ちつつ洗練された現代ブルース。よりメロディアスな一面が際立つ。
  • Khruangbin / The Universe Smiles Upon You
     グルーヴとエスニック感の融合。“静のサイケ”という意味で対照的ながら補完的。
  • Mdou Moctar / Afrique Victime
     本作の発展形。怒りと愛、ギターと詩の爆発が凝縮された次の傑作。

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