発売日: 2019年8月9日
ジャンル: エクスペリメンタルポップ、インディーフォーク、アートポップ
Bon Iverの4作目となる『i,i』は、これまでの作品で築き上げた音楽スタイルを集大成し、さらにリスナーとのつながりを意識した作品である。本作は、孤独や内省的なテーマを深掘りした前作『22, A Million』の実験性と、『Bon Iver, Bon Iver』のメロディアスなサウンドを融合させたアルバムであり、これまで以上に暖かく包み込むような雰囲気を持っている。
アルバム全体を通じて、多彩なアーティストとのコラボレーションやジャンルを超えたアプローチが見られる一方で、ジャスティン・ヴァーノン特有の詩的な歌詞と感情的なボーカルは健在だ。タイトルの「i,i」は、個人(I)と全体(We)の関係性を象徴しており、アルバム全体で、人間のつながりや共感の重要性が描かれている。
トラック解説
1. Yi
短いインストゥルメンタルで、アルバムの序章を飾るトラック。抽象的なサウンドとボーカルサンプルが、これから始まる音楽の世界への入り口を示す。
2. iMi
ボイスモジュレーションと重厚なリズムが印象的な楽曲。サウンドコラージュのような構成で、実験的ながらもエモーショナルな要素が強い。
3. We
浮遊感のあるシンセと優しいボーカルが特徴的なトラック。歌詞には、個人と全体の関係性についての思索が込められている。
4. Holyfields,
穏やかなメロディと柔らかなボーカルが心地よい一曲。ノスタルジックで詩的な雰囲気が漂い、自然との一体感を感じさせる。
5. Hey, Ma
アルバムを代表する楽曲で、親しみやすいメロディと感動的な歌詞が際立つ。母親とのつながりをテーマにした歌詞が、多くのリスナーの共感を呼ぶ。
6. U (Man Like)
ゴスペル風のコーラスが印象的なトラック。社会問題や人間関係についての思索が歌詞に込められており、ジャズ的なアプローチが楽曲に深みを与えている。
7. Naeem
壮大でエモーショナルな楽曲。ジャスティンのボーカルが楽曲をリードし、終盤の高揚感がアルバムの中でも特に印象的。
8. Jelmore
断片的なサウンドとメランコリックなボーカルが絡み合う実験的なトラック。緊張感のあるアレンジが特徴的。
9. Faith
シンセサウンドとボーカルのレイヤーが美しいトラック。希望や信頼をテーマにした歌詞が、リスナーにポジティブな印象を与える。
10. Marion
アコースティックギターを主体としたシンプルな楽曲。親密で暖かみのある雰囲気が心に響く。
11. Salem
リズミカルでアップテンポなトラック。ジャスティンのファルセットと遊び心のあるアレンジが楽曲に軽快さを与えている。
12. Sh’Diah
静謐でスピリチュアルな雰囲気を持つ楽曲。深い感情が込められたボーカルとアンビエントなサウンドが印象的。
13. RABi
アルバムの締めくくりを飾るトラック。穏やかなメロディとポジティブな歌詞が、聴き手に希望を与え、心地よい余韻を残す。
アルバム総評
『i,i』は、Bon Iverがこれまでのキャリアで築き上げてきたサウンドを集約した、キャリアの集大成ともいえる作品である。フォーク、エレクトロニカ、ゴスペルといった多様なジャンルを融合し、個人的なテーマと普遍的なメッセージをバランスよく描き出している。実験的でありながらもリスナーに寄り添うような暖かさがあるこのアルバムは、Bon Iverのさらなる可能性を感じさせる一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
22, A Million by Bon Iver
本作の前作で、実験的なサウンドと断片的な歌詞が特徴。『i,i』のルーツを探ることができる。
A Moon Shaped Pool by Radiohead
緻密なアレンジと内省的なテーマが共通する名作。『i,i』のアンビエントな一面を楽しめる。
Crack-Up by Fleet Foxes
複雑な楽曲構造とフォークの要素が融合したアルバム。『i,i』の広がりのあるサウンドに共通点がある。
The Age of Adz by Sufjan Stevens
フォークとエレクトロニカを融合させたアルバム。『i,i』と同様に壮大で実験的な要素を持つ。
Love Streams by Tim Hecker
アンビエントとエレクトロニカの要素が強いアルバム。『i,i』の音響的な側面を好むリスナーにおすすめ。
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