アルバムレビュー：I See You by The xx

発売日: 2017年1月13日
ジャンル: インディー・ポップ, ドリーム・ポップ, エレクトロニカ

The xxの3作目『I See You』は、バンドのこれまでのミニマルで内省的なスタイルから一歩進んだ、より広がりのあるサウンドを取り入れた作品である。プロデューサーとしてバンドメンバーのジェイミー・スミス（Jamie xx）のエレクトロニックな影響が色濃く反映され、サウンドスケープがこれまで以上にダイナミックに進化している。これまでの控えめで感情を内に秘めたトーンから、より自信に満ちた、開かれた感情表現へと変わっている点も特徴だ。アルバム全体を通して、シンプルでありながらも多層的なアレンジが光り、The xxの音楽が新たなステージに到達したことを示す一作となっている。

各曲ごとの解説:

1. Dangerous
   　アルバムの幕開けを飾るこのトラックは、ホーンのリフとグルーヴ感のあるベースラインが目立つ、これまでのThe xxのサウンドとは一線を画す曲。エネルギッシュで開放感があり、アルバム全体にポジティブなムードを与える一曲である。
2. Say Something Loving
   　シンセサウンドと切ないヴォーカルが絡み合うこの曲は、愛に対する不安や自信をテーマにしている。クロフトとシムのデュエットが、過去の傷や現在の心の葛藤を表現し、感情的な深みを感じさせる。メロディの美しさが際立つトラックだ。
3. Lips
   　滑らかなリズムとエキゾチックなサンプリングが特徴的な一曲で、The xxの新たなサウンドアプローチが感じられる。ヴォーカルは控えめだが、ビートとリズムの組み合わせが曲に独特の浮遊感を与えている。
4. A Violent Noise
   　内向的でダークなトラックで、孤独や不安といった感情をテーマにしている。シンプルなベースラインとシンセが、ヴォーカルに不穏な雰囲気を加え、過去のThe xxらしいミニマルな美しさが光る。
5. Performance
   　クロフトのソロヴォーカルで進行するバラードで、愛の失望や自己表現に対する葛藤がテーマとなっている。控えめなアレンジにより、感情の強さが引き立っており、シンプルながらも深い感動を与える一曲。
6. Replica
   　エレクトロニックな要素が強調されたトラックで、反復されるリズムが不安定さを感じさせる。自己反省や内面的な葛藤を歌詞で表現し、サウンドもそれに呼応するように徐々にビルドアップしていく。
7. Brave For You
   　クロフトが家族に対する感情を歌った感動的なバラード。シンプルなギターリフと控えめなビートが、感情の抑揚を効果的に引き立てており、個人的なテーマがリスナーの心に深く響く。
8. On Hold
   　アルバムの代表曲ともいえるこのトラックは、ホール＆オーツの「I Can’t Go For That (No Can Do)」をサンプリングしたキャッチーなメロディが特徴的。恋愛における期待と失望をテーマにしており、ポップさと深い感情が絶妙に融合している。
9. I Dare You
   　軽快なビートとリズミカルなメロディが印象的な一曲で、愛の高揚感を歌っている。シンプルながらもエモーショナルなヴォーカルと、伸びやかなサウンドがアルバム全体に爽やかさを加えている。
10. Test Me
    　アルバムのラストを飾るトラックで、繊細でメランコリックなメロディが印象的。クロフトとシムの静かなヴォーカルが、徐々にビルドアップするシンセサウンドとともに広がり、アルバムを感情的に締めくくる。

アルバム総評:

『I See You』は、The xxがこれまでのミニマルで内省的なサウンドを進化させ、より広がりのあるダイナミックなサウンドを取り入れた作品である。ジェイミー・スミス（Jamie xx）のエレクトロニカの影響が特に強く反映されており、より開放的で自信に満ちた音楽が展開されている。これまでの抑制された感情表現から、感情を積極的に外に表現する姿勢に変わり、The xxの音楽が新たなフェーズに入ったことを感じさせる。このアルバムは、The xxの音楽的な進化と成長を象徴する作品であり、彼らが新しいサウンドに挑戦しながらも、根本にある親密さと感情的な深みを失っていないことが証明されている。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

1. In Colour by Jamie xx
   The xxのメンバーであるジェイミー・スミスのソロ作品。エレクトロニカとドリームポップが融合したこのアルバムは、『I See You』のエレクトロニックな要素を好むリスナーにぴったり。
2. Settle by Disclosure
   エレクトロとポップの融合が特徴のアルバム。The xxのポップなリズムやビートを楽しめるリスナーにおすすめ。
3. Devotion by Jessie Ware
   静かなエレクトロポップと官能的なヴォーカルが際立つアルバム。The xxの感情豊かなデュエットが好きなリスナーにおすすめ。
4. A Moon Shaped Pool by Radiohead
   静けさとエレクトロニックなアプローチが融合した作品。The xxのミニマルなサウンドと感情的な深みが好きなリスナーに最適。
5. Lost in the Dream by The War on Drugs
   ドリーミーなサウンドスケープと感情的な歌詞が魅力のアルバム。The xxの新しい方向性を楽しんだリスナーには、The War on Drugsの広がりのあるサウンドも響くだろう。