
1. 歌詞の概要
「I See You」は、Leona Lewis(レオナ・ルイス)が2009年にリリースした楽曲で、映画『アバター』(James Cameron監督)公式主題歌として書き下ろされた壮大なラブ・バラードである。映画のスケールと精神性を映し出すようなこの楽曲は、「私はあなたを“本当のあなた”として見ている」という、深い魂のつながりを描くラブソングとして設計されている。
タイトルの「I See You(あなたが見える)」というフレーズは、映画内で重要なキーワードとして登場する。この言葉は、単に「目に見える」という意味ではなく、相手の本質、存在、魂までも理解し、受け入れるという深い意味合いを持っている。
楽曲は、その哲学的でスピリチュアルなメッセージを受け継ぎ、誰かを本気で理解し、愛し合うということの奇跡と尊さを、Leona Lewisの圧倒的なボーカルで響かせる。
2. 歌詞のバックグラウンド
「I See You」は、James Horner(『タイタニック』『ブレイブハート』など数々の映画音楽を手がけた作曲家)による作曲、Simon Franglenとの共同プロデュースにより制作された。
Leona Lewisがこの曲に起用されたのは、彼女のクリスタルのように澄んだ声と、感情を繊細に伝える歌唱力が『アバター』の世界観にぴったりだったからである。
映画『アバター』において、「I see you」という言葉は、ナヴィ族が使う最も深い挨拶であり、「私はあなたの魂を見ている」という意味を持つ。
この言葉をタイトルに冠した本楽曲もまた、**人種や種族、言葉や形の違いを超えた“心と心の対話”**をテーマにしている。
映画の公開と同時に大きな注目を集めたこの曲は、サウンドトラックのエンドロールを飾りながら、壮大な世界観と個人の感情が融合する“魂のテーマソング”として位置づけられた。
3. 歌詞の抜粋と和訳
この楽曲のリリックは、直感的な感情のつながりと、目には見えない愛や理解を言葉にすることの試みとして書かれている。
I see you / Walking through a dream
夢の中を歩いているあなたが見える
出会った瞬間の幻想的な感覚。それが“夢”のようでありながら、確かに現実でもあるという二重性が描かれている。
I see you / My light in darkness breathing hope of new life
私はあなたを見ている / 闇の中で希望の息吹を与えてくれる光として
このラインでは、「あなた」という存在が、語り手の救いであり再生の象徴であることがはっきりと示されている。
Now I give my hope to you / I surrender
いま、私の希望をあなたに託す / 私はすべてをゆだねる
単なる恋愛ではなく、**人生そのものを重ねて信頼を預ける深い“心の献身”**が現れている。
In your eyes I see the truth / All our hopes and our reason
あなたの目の中に真実が見える / すべての希望と、存在する意味が
この一節は、「私の存在があなたと出会うことで初めて意味を持った」という、愛と共鳴の極致を語っている。
歌詞の全文はこちら:
Leona Lewis – I See You (Theme from Avatar) Lyrics | Genius
4. 歌詞の考察
「I See You」は、Leona Lewisがこれまで歌ってきたラブバラードとは明確に異なる側面を持っている。それは、恋愛の個人的な感情ではなく、“宇宙的な視点”で描かれた愛と共鳴の物語であるという点だ。
この曲では、「見る」という行為が「理解する」「受け入れる」「尊重する」といった深い意味に置き換えられている。つまり、“I see you”とは、「あなたを愛している」以上に、「あなたを存在として認識している」という宣言なのだ。
これは、映画『アバター』の思想とも一致しており、見た目や言語の違いを超えた魂のつながりが、最大の愛の証であるという思想が根底にある。
また、Leonaのボーカルはこの曲で特に静と動のコントラストが美しく、息を潜めるようなサビ前の囁きから、空に舞い上がるようなクライマックスへの盛り上がりは、まさに魂の開放のような感動を呼ぶ。
この曲の特筆すべき点は、**「私はあなたを見ている」ではなく、「私はあなたが“誰であるか”を見ている」という文脈で語られる“愛の深さ”**にある。
それは、愛する人の外見や言動ではなく、“本質”とつながることがいかに尊いかを教えてくれる。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- My Heart Will Go On by Celine Dion
永遠の愛をテーマにした映画『タイタニック』の主題歌。魂のつながりと喪失を描いた壮大なラブソング。 - Only Time by Enya
時間を超えた癒しと、目には見えない感情の流れを描いたエーテル的な楽曲。 - Into the West by Annie Lennox
映画『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』のエンディングを飾った、死と旅立ちをテーマにした哀しみと希望の歌。 - Safe & Sound by Taylor Swift ft. The Civil Wars
静けさの中に潜む恐れと、守られている安心感を共存させた感覚的な映画主題歌。 - Glory by John Legend & Common
精神的解放と人間の尊厳をテーマにした、映画『Selma』の感動的なテーマソング。
6. “あなたの魂を、私は見ている”
「I See You」は、Leona Lewisが**“声”という手段で、見ること・感じること・信じることの全てを表現した一曲**である。
それは、目で見るよりも深く、言葉で語るよりも正確に、
「あなたが誰であるか」「私が誰であるか」を理解しようとする静かな祈りのような歌。
だからこの曲は、恋愛の歌でありながら、同時に人間と人間の存在を肯定するためのアンセムでもある。
“本当に誰かを見る”ということが、どれほど深く、尊い行為なのか。
この楽曲は、そんな問いを私たちに残してくれる。
そして、「私はあなたを見ている」ことが、最も純粋な愛の言葉になりうるのだと教えてくれるのである。
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