発売日: 1986年11月21日
ジャンル: ハードコアパンク、ファンク、ハードロック
I Against Iは、Bad Brainsが1986年にリリースした3枚目のスタジオアルバムであり、彼らの音楽スタイルが劇的に進化した作品だ。このアルバムでは、ハードコアパンクに加えて、ファンク、ハードロック、さらにはメタルの要素が取り入れられ、バンドのサウンドがより幅広く、洗練されたものとなっている。特に、アルバム全体を通して見られるリズムの緻密さとH.R.のボーカルの多様性が際立っており、バンドの音楽的成長が感じられる。タイトルの「I Against I」は、自己との闘い、内なる葛藤を意味し、歌詞やサウンドにはスピリチュアルで哲学的なテーマが反映されている。このアルバムは、Bad Brainsの中でも特に高く評価されており、ハードコアパンクの枠を超えた名作として広く認知されている。
各曲ごとの解説:
- Intro
アルバムをスタートさせる短いインストゥルメンタルで、曲全体がエネルギーに満ちている。スリリングなギターリフとリズムセクションが期待感を高め、すぐに次のトラックへとつながる。 - I Against I
アルバムタイトル曲であり、Bad Brainsの代表作の一つ。H.R.のカリスマ的なボーカルと、ファンクのリズムが絡み合い、強烈な印象を残すトラックだ。ギターリフは重厚でありながらもグルーヴ感があり、メタルとファンクが見事に融合している。自己との闘いを描いた歌詞は哲学的で、バンドの精神性が色濃く反映されている。 - House of Suffering
スピーディーでパワフルなハードコアトラック。激しいギターリフとドラムが疾走感を生み出し、H.R.のシャウトが曲全体を引き締める。歌詞は社会的なテーマを含み、抑圧に対する抵抗を表現している。ハードコアパンクのエッセンスが詰まった一曲。 - Re-Ignition
ファンクとハードロックが絶妙に融合したトラック。重く、ゆったりとしたリズムが特徴で、Bad Brainsの多様な音楽性が光る。リズムセクションが非常にタイトで、特にベースのグルーヴが際立つ。H.R.のボーカルはソウルフルで、バンドのダイナミックな表現力が存分に発揮されている。 - Secret 77
リズムが変則的で、メタリックなギターリフが曲全体を支配している。歌詞はスピリチュアルなテーマを扱っており、自己の内なる探求を描いている。複雑な曲構成と、テンションの高いパフォーマンスが印象的で、アルバムの中でも特に実験的な一曲だ。 - Let Me Help
激しいテンポのハードコアパンクで、Bad Brainsらしいエネルギッシュな演奏が詰まっている。ギターとドラムが速いペースで進行し、H.R.のシャウトがさらに曲を加速させる。短いながらも、力強いメッセージが凝縮された一曲だ。 - She’s Calling You
グルーヴィーなベースラインが特徴的なトラックで、ファンク色が強い一曲。リズムが心地よく、H.R.のボーカルも柔らかいトーンで展開される。歌詞は精神的な目覚めや啓示をテーマにしており、バンドの宗教的な側面が強く反映されている。 - Sacred Love
この曲は、H.R.が刑務所から電話を使ってボーカルを録音したことで知られている。独特なボーカルスタイルと、幻想的なサウンドスケープが印象的で、アルバム全体の中でも異彩を放つトラックだ。タイトル通り、愛と信仰について歌われており、静かだが感情的に深い一曲。 - Hired Gun
スピーディーなハードコアパンクトラックで、バンドの攻撃的な一面が前面に出ている。強烈なギターリフとエネルギッシュなドラムが曲を引っ張り、H.R.のボーカルも激しさを増している。社会的なメッセージを含む歌詞が、力強いパフォーマンスをさらに引き立てている。 - Return to Heaven
アルバムの締めくくりとなるこの曲は、スローテンポでメロディアスなトラック。ファンクとメタルが融合したサウンドに、H.R.の静かで深いボーカルが重なり、バンドのスピリチュアルな一面が強調されている。アルバム全体を通してのテーマがまとめられ、心に残るエンディングを提供している。
アルバム総評:
I Against Iは、Bad Brainsがハードコアパンクを基盤にしながらも、ファンクやハードロック、メタルといった異なるジャンルを取り入れることで、より深みと幅広さを持たせた作品だ。このアルバムでは、バンドの音楽的成熟が顕著に感じられ、リズムの多様性やボーカルの表現力が格段に向上している。また、歌詞には自己との葛藤やスピリチュアルなテーマが散りばめられており、バンドの宗教的な信念が強く反映されている。特にタイトル曲「I Against I」や「House of Suffering」、「Re-Ignition」などのトラックは、Bad Brainsの新たな音楽スタイルを象徴する名曲であり、ハードコアパンクの枠を超えたサウンドが楽しめる。彼らの音楽が進化を遂げた重要な作品として、多くのリスナーに影響を与え続けている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- The Real Thing by Faith No More
ファンクとメタルを融合させた革新的な作品で、Bad Brainsのジャンルを超えたサウンドに共鳴する。グルーヴ感と攻撃性が両立したアルバム。 - Rage Against the Machine by Rage Against the Machine
政治的なメッセージとファンク、メタルを組み合わせた作品。Bad Brainsの影響を受けたエネルギッシュなパフォーマンスが光る。 - Angel Dust by Faith No More
エクスペリメンタルなファンクメタル作品で、複雑なリズムとジャンルの融合が魅力。I Against Iのファンクとハードロックの要素が好きなリスナーにおすすめ。 - Meantime by Helmet
重厚なギターサウンドとハードコアのエネルギーが特徴的なアルバム。Bad Brainsの攻撃的な一面を愛するリスナーに響く。 - Fresh Fruit for Rotting Vegetables by Dead Kennedys
政治的なメッセージとパンクの激しさを融合した名作。Bad Brainsのパンクスピリットに共鳴する一枚であり、社会的なメッセージ性が強い作品。
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