発売日: 1981年5月30日
ジャンル: ポストパンク, ゴシック・ロック
Echo & the Bunnymenの2作目『Heaven Up Here』は、バンドがその音楽的方向性をさらに深め、よりダークで内省的なサウンドを追求した作品である。『Crocodiles』の荒々しさを残しつつも、より成熟したアレンジと深みのある歌詞が特徴的で、ポストパンクのムーブメントの中でも名作と称される一枚だ。気だるく重厚なギター、陰鬱なベースライン、そしてイアン・マッカロックの感情的で鋭いヴォーカルが絶妙に絡み合い、バンドのアイデンティティを確立したアルバムとなっている。音楽的にも感情的にも強い影響を与える作品で、初期ポストパンクシーンの象徴的な存在として評価されている。
各曲ごとの解説:
- Show of Strength
アルバムのオープニングを飾るこの曲は、重厚なギターと沈み込むようなベースラインが特徴。歌詞には不安や内的葛藤が色濃く反映され、マッカロックの歌声が感情的に響く。曲全体に漂う緊張感が強烈な印象を残す。 - With a Hip
リズムセクションが際立つトラックで、ダンサブルなビートと鋭いギターリフが曲を引き締めている。エネルギッシュでありながらも、歌詞には暗いテーマが漂う。 - Over the Wall
アルバムの中でも特に長い曲で、エピックな構成が特徴的。徐々に高まる緊張感と、ギターの繊細なアルペジオがリスナーを引き込む。マッカロックのヴォーカルは静から動へと移り変わり、感情の波を感じさせる。 - It Was a Pleasure
軽やかなリズムとシンプルなギターリフが特徴の一曲。曲全体に軽やかさがありながらも、歌詞は皮肉や諦念を感じさせ、アルバム全体のムードに貢献している。 - A Promise
シングルカットされた曲で、感情的な歌詞とドラマティックなギターリフが印象的。ポストパンクの枠を超えた普遍的な魅力を持つ曲で、バンドのファンからも愛されている一曲。 - Heaven Up Here
タイトル曲であり、アルバムのテーマを象徴する一曲。幻想的でダークなサウンドが、天と地の狭間を漂うような感覚を生み出しており、バンドのサウンドがより深みを増している。 - The Disease
退廃的なテーマを扱ったトラックで、ポストパンクらしい暗い雰囲気が際立つ。ギターとベースが重なり合い、独特の緊張感を生み出している。 - All My Colours
ミステリアスでゆったりとした曲で、ギターのエフェクトとマッカロックの詩的な歌詞が幻想的なムードを作り出している。曲全体に漂うメランコリックな雰囲気が特徴的。 - No Dark Things
アップテンポで、エネルギッシュなギターリフが曲を引っ張る。リズムの展開がダイナミックで、ポストパンクらしいアグレッシブな一面が感じられる一曲。 - Turquoise Days
ゆっくりとしたビートと、浮遊感のあるギターサウンドが特徴的なトラック。内省的な歌詞が静かに心に響き、アルバム全体の流れを締めくくるような深い余韻を残す。 - All I Want
アルバムの最後を締めくくるトラックで、シンプルでありながらも強いエネルギーを持つ。激しいギターサウンドと感情的なヴォーカルが、アルバム全体の集大成として見事にまとめ上げられている。
アルバム総評:
『Heaven Up Here』は、Echo & the Bunnymenがポストパンクの中でも特に芸術的な表現に達した作品であり、バンドの音楽的成長が明確に感じられる。暗く内省的なテーマが全編にわたって描かれ、マッカロックの鋭い歌詞とバンドの緻密なアレンジが見事に融合している。ギターのリバーブやエコーが生み出す広がりのあるサウンドと、ベースやドラムのタイトなリズムが、ポストパンクの中でも異彩を放っている。エモーショナルで深遠な内容を持ちながらも、音楽的には非常に洗練されており、Echo & the Bunnymenの最高傑作のひとつとして多くのファンに支持され続けている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Faith by The Cure
同じくポストパンクのダークな側面を探求したアルバムで、内省的なテーマと重厚なサウンドが共通している。 - Closer by Joy Division
ポストパンクの代表的なアルバムで、ダークで内省的なテーマが特徴。『Heaven Up Here』と同じく、感情的な深みがある。 - Script of the Bridge by The Chameleons
エコーの効いたギターとメランコリックな歌詞が特徴のアルバムで、Echo & the Bunnymenのファンに特におすすめ。 - Seventeen Seconds by The Cure
ミニマルでダークなサウンドと、幻想的なムードが共通するアルバム。『Heaven Up Here』の持つ内省的な雰囲気が好きなリスナーに最適。 - Kaleidoscope by Siouxsie and the Banshees
ポストパンクとゴシックロックの要素を融合させた作品で、実験的なサウンドとメランコリックなトーンが共通している。
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