イントロダクション
締め付けるようなドラム・グルーヴが転がり、ヘヴィなベースとホーンが街角の湿気を巻き込む。
そこへ乗るのは “声のリズムマシン”――アンジェリカ “Jelly” ジョセフのパワフルでソウルフルな歌声だ。
25 年以上のキャリアを誇るGalactic は、新たな看板ヴォーカリスト Jelly を迎え、ニューオーリンズの伝統と現代ファンクの最前線を橋渡しし続けている。
バンドの背景と歴史
1990 年代半ば、ニューオーリンズのクラブ Tipitina’s で出会ったジェフ・レインズ(Gt)とロブ・メルキュリオ(Ba)が中心となり Galactic を結成。
Mardi Gras の開放感とミーターズ譲りの重心低めファンクを掛け合わせたサウンドで支持を獲得し、2000 年代には全米ジャム・サーキットの常連へ成長した。
歴代アルバムでは多彩なゲストを迎えるスタイルが定番だったが、2020 年、地元出身シンガー Anjelika “Jelly” Joseph を正式フィーチャー。
以降、ライブもレコーディングも“一丸となったファンク楽団”へと進化し、2024 年には『Live at the New Orleans Jazz & Heritage Festival 2024』を発表。
2025 年春からは “Global Groove” と題した 30 都市ツアーが予定され、新作フルアルバムの完成も噂されている。
音楽スタイルと特徴
Galactic の核はニューオーリンズ独特のセカンドライン・ビート。
ドラマー、スタントン・ムーアの跳ねるタッチがフロアを揺らす一方、リッチ・ヴォーゲルの鍵盤とベン・エルマンのサックスがジャズ~サイケの色彩を散りばめる。
Jelly のヴォーカルが加わってからは、ゴスペルの熱量とネオソウルのメロウさが前面に押し出され、インスト主体だった過去作に “歌で導くカタルシス” が生まれた。
代表曲/ライブ定番曲
曲名 | 特徴 | 収録 |
---|---|---|
Right On | Jelly 参加後の新機軸。クラップとサックスリフで幕開けし、コール&レスポンスが爆発 | 『Jazz Fest 2024 Live』 |
Clap Your Hands | 重量級ベースとドラムブレイクがせめぎ合うファンク・アンセム | 同上 |
Heart of Steel | 旧友イリノイ・チャップリンのブルージーな曲を Jelly が再解釈、熱いシャウトで観客を掌握 | シングル(2023 Live ver.) |
Baker’s Dozen | インスト時代からのキラーチューン。中盤のドラム・サックスバトルは観る者を恍惚へ導く | 『Tchompitoulas EP』(2023) |
ディスコグラフィのハイライト
『Ruckus』 (2003)
ダン・“ザ・オートメイター”・ナカミュラをプロデューサーに迎え、ヒップホップ的ビートを導入。バンドの多様性が開花した作品。
『From the Corner to the Block』 (2007)
ゲスト MC を大量招致し、ニューオーリンズ・ブラスとラップをクロスオーバー。革新的ミクスチャーの礎。
『Tchompitoulas EP』 (2023)
Jelly 体制初のスタジオ音源。アフロキューバンの新星シマファンクらを迎え、トライバルなリズムと極太グルーヴを提示。
『Live at the New Orleans Jazz & Heritage Festival 2024』
最新ライブ作。フェス特有の昂揚と観客の声援まで真空パックし、Jelly のエネルギーを決定的に刻印。
影響を受けた音楽とアーティスト
- The Meters:セカンドラインの土台とファンクのポケット感覚
- Dr. John:サイケデリック・クレオールサウンド
- James Brown:オン・ザ・ワンのタイム感とショウアップ精神
- Funkadelic:ギターのサイケデリアとコズミックなステージング
影響と現在の立ち位置
Galactic + Jelly 体制は、ジャムバンド界隈に「固定シンガー×流動的ゲスト」という新フォーマットを浸透させた。
地元ニューオーリンズでは若手ファンクバンドが Jelly を “シスター・アイコン” として仰ぎ、女性ヴォーカルを前面に据える流れが加速。
また Tipitina’s(彼らがオーナーを務める老舗クラブ)は次世代ミュージシャンの登竜門となり、都市ぐるみのファンク・エコシステムを形成している。
オリジナル要素
- “Funk-n-Roll Parade”
ライブ終盤、ホーン隊と Jelly が客席フロアへ降り、観客ごと会場を練り歩く名物パレード。 - タブレット即興ミックス
キーボードのヴォーゲルがタブレット・サンプラーでニューオーリンズの環境音(ストリートパレードや教会ベル)を即時ループし、曲間に挿入。 - Tipitina’s Record Club
バンド自らキュレーションする月刊アナログ盤サブスク。最新ライヴ音源をいち早くプレスし、ファンコミュニティを深化させている。
まとめ
Galactic featuring Jelly Joseph は、ニューオーリンズという豊穣な土壌から湧き出るファンクの奔流に、強靭でしなやかな歌声を重ね合わせた。
歴戦のバンドが培った即興力と、Jelly が放つソウルフルな熱が交錯するとき、フロアはまるで真夏のミシシッピ川のように沸き立つ。
次なるアルバムと世界ツアーで、彼らはどんな“新しい宴”を描き出すのか。
耳と身体を準備し、迫り来る熱波に飛び込んでほしい。
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