発売日: 1976年1月6日
ジャンル: ロック、ハードロック、メロディック・ロック
- 概要
- 全曲レビュー
- 1. Something’s Happening
- 2. Doobie Wah
- 3. Show Me the Way
- 4. It’s a Plain Shame
- 5. All I Want to Be (Is by Your Side)
- 6. Wind of Change
- 7. Baby, I Love Your Way
- 8. I Wanna Go to the Sun
- 9. Penny for Your Thoughts
- 10. (I’ll Give You) Money
- 11. Shine On
- 12. Jumpin’ Jack Flash
- 13. Lines on My Face
- 14. Do You Feel Like We Do
- 総評
- おすすめアルバム(5枚)
概要
『Frampton Comes Alive!』は、ピーター・フランプトンが1976年に発表したライヴ・アルバムであり、彼の名を一躍スターダムへと押し上げた音楽史に残る大ヒット作品である。
全米アルバム・チャートで10週連続1位を記録し、1970年代における最も成功したライヴ・アルバムとして、クイーン『Live Killers』やイーグルス『Eagles Live』と並び称される存在となった。
本作は、前作『Frampton』(1975年)を中心に、それまでのソロキャリアを集大成的に再構成したものであり、スタジオ録音では伝えきれなかった“フランプトンの真価”――すなわち、ギタリストとしての超絶技巧と、観客との一体感に満ちたステージング――が極めて鮮やかに刻まれている。
彼のトレードマークともいえる“トーキング・ボックス”が効果的に使われ、聴衆とのコール&レスポンスに象徴されるような、エネルギッシュで温かい空気感がアルバム全体を貫いている。
全曲レビュー
1. Something’s Happening
力強くアルバムの幕を開ける、エネルギーに満ちたロック・ナンバー。
“何かが始まろうとしている”というメッセージが、会場の熱気とともに伝わってくる。
スタジオ版よりもグルーヴが強化されており、バンドの結束感も鮮やか。
2. Doobie Wah
ブルースロックにファンクの要素が加わったジャム風のトラック。
ギターとリズム隊の掛け合いがスリリングで、ライヴならではの即興性が楽しい。
中盤以降のインプロヴィゼーションも聴きどころ。
3. Show Me the Way
代名詞的ヒット曲のライヴ・バージョン。
トーキング・ボックスを駆使したギターと観客のコールが絶妙に絡み、スタジオ版では味わえない“参加型”の感動がある。
キャッチーでありながら、どこか哀しみを帯びたコード進行が美しい。
4. It’s a Plain Shame
ギターリフが印象的なロック・チューン。
フランプトンのシャウトとギターが鋭く絡み合い、ライヴでこそ真価を発揮する曲。
ソロの応酬が熱量をさらに加速させる。
5. All I Want to Be (Is by Your Side)
アコースティック・パートのハイライト。
観客の静かな熱意とフランプトンの誠実な歌声が交錯し、シンプルながら感動的な時間が流れる。
愛をまっすぐに歌うことの美しさが凝縮された一曲。
6. Wind of Change
1972年のデビュー作からの選曲で、静と動が交錯するスケールの大きなバラード。
時間の経過を感じさせない完成度で、フランプトンの初期の美学が現在にも通じることを証明する。
7. Baby, I Love Your Way
おそらく本作でもっとも多くの人の記憶に残るラヴソング。
「君を愛している」というストレートなフレーズが、優しいメロディとともに空間に広がる。
観客とのシンガロングが生む一体感が圧倒的。
8. I Wanna Go to the Sun
ソロキャリア初期の野心的な楽曲を、タイトなアンサンブルで再演。
複雑な展開と多彩なコード進行が、彼の作曲センスの豊かさを物語る。
ギターとピアノのコントラストも見事。
9. Penny for Your Thoughts
短く美しいアコースティック・インストゥルメンタル。
前曲からの流れを切り替える“呼吸”のような存在で、クラシカルなタッチが際立つ。
10. (I’ll Give You) Money
ダイナミックなギター・リフと観客のレスポンスが交錯する、アルバムでもっとも激しいロック・チューン。
物質主義への皮肉と、音楽そのものへの献身がにじむ。
ラストに向けて熱量が爆発する構成は圧巻。
11. Shine On
オールドフレンドであるスティーヴ・マリオットに捧げるような、柔らかでスピリチュアルな一曲。
歌とギターの両方で“光”を描くような、内面的な深さを感じさせる。
12. Jumpin’ Jack Flash
ローリング・ストーンズのカバー。
攻撃的なアレンジと会場全体の盛り上がりが融合し、原曲とは異なる解釈が楽しめる。
フランプトンの声とギターが楽曲に新たな躍動感を与えている。
13. Lines on My Face
静謐で抒情的なバラード。
「顔に刻まれた線は、心の歴史」という詩的な主題が、観客の静かな耳に届けられる。
ギターソロがあたかも涙のように流れる。
14. Do You Feel Like We Do
アルバムのクライマックスにして、フランプトンのキャリアを象徴する約14分の大作。
トーキング・ボックスを駆使したギターソロと、観客との即興的対話によって圧倒的な熱狂を生む。
“君も僕と同じ気持ちかい?”という問いが、文字通りすべてのリスナーに届く魔法のような瞬間。
総評
『Frampton Comes Alive!』は、ピーター・フランプトンというアーティストがギタリスト、シンガー、ソングライター、そしてパフォーマーとしてのすべての面を高い次元で融合させた、“ライヴ・アルバムという形式の完成形”のひとつである。
音源でありながら、“そこにいる”感覚を聴き手に与える力は圧倒的で、音楽が人と人を繋ぐ行為であることをこれほどまでに明確に示した作品は少ない。
多くのライヴ・アルバムが“ベスト盤”のような役割にとどまる中で、本作はむしろ“ピーター・フランプトンの完成形”として、決定的な芸術的価値を持つ。
それは音楽の技術だけでなく、“魂と共鳴する音”の力なのだ。
おすすめアルバム(5枚)
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The Who – Live at Leeds (1970)
ライヴ・アルバム史の金字塔。ロックバンドの爆発力を記録した作品として共鳴。 -
Cheap Trick – At Budokan (1978)
観客との一体感とヒット曲の再演が光る、もうひとつのライヴ名盤。 -
Humble Pie – Performance: Rockin’ the Fillmore (1971)
フランプトン在籍時の前身バンドによるライヴ・アルバム。音のルーツを知る上で重要。 -
Eric Clapton – Just One Night (1980)
卓越したギタープレイと歌心の融合。フランプトンと通じる表現者の在り方を映す。 -
Bob Seger & The Silver Bullet Band – Live Bullet (1976)
同年リリースのライヴ名盤。アメリカン・ロックと観客の熱狂が同居する記録。
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