発売日: 1972年10月6日
ジャンル: プログレッシブロック
アルバム全体の印象
『Foxtrot』は、Genesisがプログレッシブロックの巨匠としての地位を確立した4枚目のスタジオアルバムであり、ジャンルのクラシックとして高く評価されている作品だ。このアルバムでは、Peter Gabrielが率いるドラマチックなボーカルとストーリーテリング、Tony Banksの緻密なキーボードアレンジ、そしてSteve Hackettのメロディックなギターワークが融合し、Genesisの音楽的完成度が頂点に達している。
特にアルバムの目玉である23分を超える大作「Supper’s Ready」は、プログレッシブロックの歴史における最重要楽曲の一つとされる。アルバム全体を通じて、複雑な楽曲構造、シンフォニックなアレンジ、詩的で象徴的な歌詞が特徴的で、Genesisの創造性が存分に発揮されている。
『Foxtrot』は、1970年代初頭のプログレッシブロックブームを象徴する作品であり、Genesisの音楽的遺産を語る上で欠かせない一枚である。
トラックごとの解説
1. Watcher of the Skies
アルバムを開幕する壮大なトラックで、Tony Banksのメロトロンによる荘厳なイントロが印象的。宇宙的なテーマの歌詞と、変拍子を多用したアレンジが、リスナーをGenesisの幻想的な世界へと引き込む。
2. Time Table
ピアノを基調としたメロディアスな楽曲で、中世の宮廷を思わせる優雅な雰囲気が漂う。歌詞には文明の栄枯盛衰が描かれ、Genesisの詩的な一面が光る。
3. Get ‘Em Out by Friday
社会批判的なテーマを扱ったトラックで、演劇的な要素が強い楽曲。未来的なディストピアを描写した歌詞が、Peter Gabrielの多面的なボーカルパフォーマンスによって生き生きと表現されている。
4. Can-Utility and the Coastliners
リズミカルなギターとキーボードが絡み合うドラマチックな楽曲。王の神話的な物語をテーマにした歌詞が、シンフォニックなアレンジとともに展開される。Genesisの作曲能力が発揮された一曲だ。
5. Horizons
Steve Hackettによるソロギターのインストゥルメンタルトラック。クラシカルな要素が強く、繊細で感情豊かな演奏が美しい。次の大作「Supper’s Ready」への静かな序章として機能している。
6. Supper’s Ready
アルバムのハイライトであり、プログレッシブロックの代表的な組曲。23分を超える壮大な楽曲で、7つのパートから成り立っている。宗教的なテーマ、黙示録的なイメージ、そしてGabrielの演劇的な語り口が圧倒的な世界観を作り上げている。楽曲は静かなセクションと激しいセクションが交互に現れるダイナミックな構造で、聴き手を音楽の旅へと誘う。特に終盤の「As Sure As Eggs Is Eggs」でのクライマックスは感動的だ。
アルバム総評
『Foxtrot』は、Genesisが持つ音楽的野心と技術の粋を凝縮した作品であり、プログレッシブロックの金字塔と呼べるアルバムだ。物語性と音楽性が見事に融合した楽曲群は、リスナーに深い没入感を与え、70年代の音楽シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。
特に「Watcher of the Skies」と「Supper’s Ready」は、Genesisの創造性が極限まで発揮されたトラックであり、バンドの代表作として語り継がれている。『Foxtrot』は、プログレッシブロックファンならずとも一度は体験しておきたい名作である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Selling England by the Pound by Genesis
『Foxtrot』に続くアルバムで、同様にドラマチックでシンフォニックな要素が楽しめる。
Close to the Edge by Yes
プログレッシブロックの名盤で、複雑な構成と壮大なサウンドが魅力。
Thick as a Brick by Jethro Tull
1曲で構成されたアルバムで、ストーリーテリングとプログレ要素が融合している。
In the Court of the Crimson King by King Crimson
プログレッシブロックの原点とも言えるアルバムで、幻想的な世界観が共通する。
Dark Side of the Moon by Pink Floyd
シンフォニックなアプローチと深いテーマが、『Foxtrot』のリスナーに響く作品。
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