Found Love in a Graveyard by Veronica Falls(2011)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「Found Love in a Graveyard」は、イギリスのインディーポップ・バンド、Veronica Fallsのセルフタイトル・デビューアルバム『Veronica Falls』(2011年)に収録されたオープニング・トラックであり、死と恋、幽霊と現実の狭間で揺れる感情を、ポップで甘美なメロディに乗せて歌い上げる異色のラブソングである。

タイトルのとおり、「墓地で恋を見つけた」という不穏かつロマンティックなコンセプトが貫かれており、語り手は実体のない存在(幽霊)との恋に落ちたことを語っている。しかしこの“幽霊”とは必ずしも超自然的な存在ではなく、過去の記憶や喪失、手の届かない相手の象徴でもあり、聴き手によってさまざまな解釈が可能な比喩的な存在として機能している。

歌詞は全体的にミニマルかつ反復的でありながら、そこに込められた感情は深く、“恋すること”がどこか死の香りすら帯びるほどに強烈であるというアイロニカルな視点が全体を貫いている。甘いメロディとのコントラストが印象的で、明るい音と陰鬱なテーマのギャップこそが、この曲の最大の魅力となっている。

2. 歌詞のバックグラウンド

Veronica Fallsは、ロンドンを拠点とした4人組のインディーバンドであり、ポストパンク、ゴシック、1960年代風のガールグループ・ポップの要素を融合させた独自の音楽性で注目を集めた。「Found Love in a Graveyard」はその代表曲として、彼らの音楽的世界観を象徴する一曲となっている。

この曲の制作当時、バンドは意図的に**“ロマンティックでメランコリックな死生観”をテーマにした作品作り**を行っており、歌詞に登場する「墓地」や「幽霊」は、彼らの音楽に通底する幻想的で内省的なモチーフのひとつであった。

また、Veronica Fallsのサウンドは、The Velvet UndergroundThe Jesus and Mary Chain、The Pastels、そして90年代のC86ムーブメントからの影響が色濃く感じられ、無邪気なメロディの裏側に、破滅的な美学やロマンティシズムを潜ませるという手法が、この曲にも如実に現れている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

以下に、「Found Love in a Graveyard」の印象的なフレーズを抜粋し、日本語訳を併記する。

I found love in a graveyard
私は墓地で恋を見つけた

He said, “You’ll never grow old”
彼は言った、「君は決して年を取らない」と

I’m in love with a ghost
私は幽霊と恋に落ちた

I know that you would never hurt me
あなたが私を傷つけることはないって、わかってる

But I’m afraid of losing you
でも、あなたを失うのが怖いの

出典:Genius – Veronica Falls “Found Love in a Graveyard”

4. 歌詞の考察

「Found Love in a Graveyard」の歌詞は、一見すると不条理で幻想的なストーリーのように思えるが、その根底には愛と喪失、記憶と孤独の交差点がある。幽霊という存在は、物理的にはここにいないが、心の中には強く存在しており、語り手はそれに恋している。これは、過去の恋人、失った人、もしくはまだ触れられない誰かへの想いを象徴しているとも解釈できる。

「He said, ‘You’ll never grow old’」という一節は、永遠の若さ=死の中に閉じ込められた存在としての幽霊の言葉であり、そこには恋に伴う永遠性への願望と、それが実現するときの皮肉な側面が込められている。恋は時に、時間を止めるような力を持ち、それが死と重なることで、“永遠の愛”という幻想の危うさを浮かび上がらせる。

さらに、「I know that you would never hurt me」というラインは、実在しない相手だからこそ安心できる恋への依存を暗示しており、それは現実の痛みを回避するための心の防衛にも見える。一方で、「I’m afraid of losing you」という矛盾した感情からは、たとえそれが幻でも、失いたくないという人間の本質的な孤独と依存がにじみ出ている。

このように、「Found Love in a Graveyard」は、恋愛という普遍的なテーマを通して、存在・記憶・幻想といった哲学的な問題にまで踏み込んでいる楽曲であり、Veronica Fallsの持つ文学的センスが光る作品である。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • Just Like Honey by The Jesus and Mary Chain
    ノイズと甘さが混じり合う、愛と喪失のサイケデリック・ポップ。

  • Strange by Galaxie 500
    幽玄な音像の中で孤独と幻想を描いた、ドリーミーで内省的な楽曲。
  • Come Saturday by The Pains of Being Pure at Heart
    青春のほろ苦さと甘さを疾走感あるメロディに乗せたインディーポップ。

  • Teenage Kicks by The Undertones
    若さと衝動、無垢な欲望をストレートに歌ったパンク・クラシック。

  • Only in Dreams by Weezer
    想い続ける相手への願望と、その距離感を幻想的に描いたロング・バラード。

6. “死と恋はいつも隣り合わせ”——ゴシック・ポップに宿る幻想と現実

「Found Love in a Graveyard」は、Veronica Fallsの音楽性を一言で表すような楽曲であり、ポップであることとゴシックであること、無邪気さと死の影、恋と不在が見事に同居している。甘く耳に残るメロディの裏には、“触れられないものへの欲望”という人間的な衝動が横たわっており、それがこの曲に不穏で美しい余韻を与えている。

この作品は、“恋は人を生かし、同時に死を思わせる”という、恋愛の持つ両義的な本質を描いており、Veronica Fallsのデビューにして既にその世界観を強く確立していたことを示している。現実にあるようでいて、どこか夢の中にいるような感覚。そうした音楽体験が、「Found Love in a Graveyard」には宿っている。

そしてこれは、単なるゴス趣味や奇をてらったタイトルではなく、“愛とは何か”を静かに、そして深く問いかける詩的な問いかけでもある。墓地で見つけた恋。それは、たとえ幻でも、誰かにとっての真実なのだ。

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