アルバムレビュー：Facelift by Alice in Chains

発売日: 1990年8月21日
ジャンル: グランジ、ヘヴィメタル、オルタナティブメタル

Faceliftは、Alice in Chainsのデビューアルバムであり、彼らをグランジシーンの最前線へと押し上げた作品だ。このアルバムは、暗くヘヴィなリフ、鋭い歌詞、そしてレイン・ステイリーの力強いボーカルで、シアトルの音楽シーンに鮮烈な印象を残した。グランジの黎明期における最も影響力のあるアルバムの一つであり、メタルとオルタナティブロックを融合させた音楽的スタイルが特徴である。Alice in Chainsは、独特のハーモニーや重厚なサウンドを駆使して、陰鬱でダークな雰囲気を作り上げ、1990年代のロックシーンに革命をもたらした。

各曲ごとの解説:

1. We Die Young
   　アルバムのオープニングトラックで、鋭いギターリフと攻撃的なボーカルが印象的。短くてパンチのあるこの曲は、若さと暴力に対する怒りをテーマにしており、直線的なヘヴィメタルの影響を強く感じさせる。
2. Man in the Box
   　Alice in Chainsを一躍有名にした代表曲であり、ステイリーの特徴的なボーカルとジェリー・カントレルのワウペダルを使ったギターが際立つ。歌詞はメディアや社会の抑圧を批判しており、重厚で陰鬱なサウンドがそのメッセージを増幅する。
3. Sea of Sorrow
   　スローなテンポと悲しげなメロディが特徴のこの曲は、ブルージーなギターリフが印象的。歌詞は絶望や感情的な苦悩を描いており、ステイリーのエモーショナルなボーカルが心に響く。
4. Bleed the Freak
   　宗教や権力に対する反抗をテーマにしたこのトラックは、激しいギターリフと力強いボーカルが特徴。歌詞は、人々が持つ内なる力や反抗心に焦点を当て、曲全体に強いエネルギーを与えている。
5. I Can’t Remember
   　この曲は、重苦しいギターとスローなリズムが印象的なスラッジメタル風のサウンドを持つ。歌詞は喪失感や記憶の断片について歌っており、鬱々とした雰囲気が曲全体を支配している。
6. Love, Hate, Love
   　エモーショナルなバラード調のこの曲は、愛と憎しみが交錯する複雑な感情を描いている。スローなギターパートとステイリーの悲痛なボーカルが、曲に強烈な感情的深みを与えている。
7. It Ain’t Like That
   　タフでグルーヴ感のあるリフが特徴のトラック。アリス・イン・チェインズのヘヴィメタル的な側面が前面に出ており、攻撃的なギターサウンドが曲全体に力強いダイナミズムをもたらしている。
8. Sunshine
   　アルバムの中では比較的明るい曲調で、ファズのかかったギターとリズミカルなドラムが印象的。歌詞は喪失と追悼をテーマにしており、どこか開放感と哀愁が同居する独特の雰囲気を持つ。
9. Put You Down
   　短く攻撃的なこのトラックは、パンク的なエネルギーを感じさせる。シンプルでストレートなリフと激しいボーカルが特徴で、Alice in Chainsの激しい側面がよく表現されている。
10. Confusion
    　複雑な感情や混乱をテーマにしたミディアムテンポのトラック。重厚なギターと静かなボーカルの対比が際立っており、内省的な歌詞と共に、リスナーに深い印象を残す。
11. I Know Somethin (Bout You)
    　ファンキーなリズムとギターリフが特徴の異色なトラックで、Alice in Chainsの多面的な音楽性を垣間見ることができる。歌詞は皮肉と軽蔑を含んだ内容で、ダンサブルなビートが独特のエネルギーを放っている。
12. Real Thing
    　アルバムを締めくくるこの曲は、スローでありながらもヘヴィなグルーヴが際立つ。精神的な葛藤や中毒をテーマにしており、歌詞の暗さと音楽の重厚さが融合して、圧倒的なインパクトを残す。

アルバム総評:

Faceliftは、Alice in Chainsのデビュー作として、彼らのダークでヘヴィなサウンドを世に知らしめた重要なアルバムだ。グランジの草創期において、メタルの影響を強く受けたその音楽スタイルは異彩を放ち、シアトルシーンの中でも独自のポジションを築いた。レイン・ステイリーの強烈なボーカルとジェリー・カントレルのギターワークが絶妙に調和し、特に「Man in the Box」や「We Die Young」といった代表曲が、バンドのキャリアを象徴する楽曲として今も高く評価されている。陰鬱でありながらもエネルギッシュなサウンドが、多くのロックファンを引きつけた傑作だ。

このアルバムが好きな人におすすめの5枚:

1. Badmotorfinger by Soundgarden
   ヘヴィなギターリフと深みのあるボーカルが共通しており、グランジとヘヴィメタルの融合を楽しみたいリスナーには最適。クリス・コーネルのシャウトと複雑なサウンドが、Alice in Chainsのファンにも響くだろう。
2. Ten by Pearl Jam
   同じくシアトル出身のグランジバンドで、感情的なボーカルとパワフルなギターサウンドが特徴。エディ・ヴェダーの魂を揺さぶる歌声が、レイン・ステイリーの感情豊かなスタイルと共鳴する。
3. Dirt by Alice in Chains
   Faceliftが気に入ったなら、さらにダークでヘヴィなサウンドが際立つこのアルバムも必聴。内省的で苦悩に満ちた歌詞と、より成熟した音楽性が特徴。
4. Core by Stone Temple Pilots
   グランジとハードロックの融合を特徴としたこのアルバムは、ヘヴィなギターリフと叙情的なメロディが共通しており、Alice in Chainsファンにとっても魅力的な一枚。
5. Superunknown by Soundgarden
   ダークな歌詞と複雑なリズム、ヘヴィなサウンドがAlice in Chainsに通じる要素を持っている。特に、内面的な葛藤や精神的なテーマを扱う点で共通点が多い。