アルバムレビュー:Express by Love and Rockets

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

Spotifyジャケット画像

発売日: 1986年9月15日
ジャンル: ポストパンク、ネオサイケ、オルタナティブ・ロック、ドリームポップ


概要

『Express』は、Love and Rocketsが1986年にリリースしたセカンド・アルバムであり、ポストパンクの陰影とサイケデリックの眩暈が融合した唯一無二のロック・サウンドを確立した重要作である。

前作『Seventh Dream of Teenage Heaven』が霧の中に沈むような内省的美学を展開していたのに対し、
『Express』ではよりアグレッシブかつ色彩豊かな音響世界へと踏み出している

Bauhaus解散後という出自を引きずりながらも、Love and Rocketsはすでに**“ゴシック・ロック以後”のロックバンド**として新たな進化を遂げていた。

本作では、トライバルなリズムとトレモロギター、催眠的なベースライン、幻想的なシンセサウンドが交錯し、
グラムロック〜クラウトロック〜シューゲイザーに至る系譜を予感させるサウンド構造が完成されている。

そのビジョンは明確で、時に官能的で、時に霊的。

『Express』は、音楽が知覚を拡張する“装置”でありうることを証明した、1980年代インディー・ロックの隠れた頂点である。


全曲レビュー

1. It Could Be Sunshine

オープニングにして、すでに意識は現実から浮遊している。

ゆったりとしたテンポ、エコーの効いたヴォーカル、トレモロ・ギターの波。
“陽光のようでいて、どこか現実味のない”心象風景が広がる。

この曲で提示される“サイケデリック・オプティミズム”が、アルバム全体のトーンを規定する。

2. Kundalini Express

アルバムのタイトルを象徴する、高速サイケ・ロックンロール。

“クンダリーニ”とはヒンドゥー教の生命エネルギーの象徴であり、
この曲では覚醒と超越をロックの速度で駆け抜ける

スネアの連打、反復されるリフ、ドライヴ感のあるヴォーカル──
この一曲でLove and Rocketsは、“神秘と肉体”を両立させたロック・バンドとしての地位を決定づけた。

3. All in My Mind

ドリーミーでメランコリックなスローバラード。

「すべては僕の頭の中で起きてるんだ」という言葉に表されるように、現実と幻の境界が溶け出す

この曲はのちにアメリカでシングルヒットとなり、
Love and Rocketsが単なるUKカルチャーの産物ではなく、グローバルな感覚と親しみやすさも持ち合わせていたことを証明した。

4. Life in Laralay

ミステリアスなリズムとボーカルが印象的なアヴァン・ポップ。

“Laralay”という架空の場所を巡るこの曲は、非現実的な空間に根ざした夢想と疎外の物語であり、
曲全体がひとつの短編小説のようでもある。

ギターの揺らぎとスペーシーなシンセが、聴く者を別世界へ誘う。

5. Yin and Yang (The Flowerpot Man)

本作の中でも屈指のアグレッシブなトラック。

東洋思想をもじったタイトルが示すように、二元性と対立の力学をポストパンク的に解体再構築したサイケ・グラム・ナンバー

ギターが歪みとともに螺旋を描き、ドラミングが瞑想と興奮を同時に喚起する。

Love and Rocketsが持つ最も“爆発的”な側面が表出する瞬間。

6. Love Me

囁くようなヴォーカル、官能的なリズム、酩酊感に満ちたサウンド。

タイトル通りの欲望と依存のアンビバレントな感情が、ドリーミーなサウンドの中でじわじわと滲み出す。

シンプルなようで、構成は極めて緻密。
リズムの呼吸が生理的に気持ち良く、“聴くというより、浸かる”曲である。

7. All in My Mind (Acoustic)

同曲の別バージョンで、ギターとヴォーカルを軸にしたアコースティック編成。

静けさの中に不安と余白が広がる、夜の夢のような美しさ

原曲とは異なり、孤独や回想といったテーマがより際立ち、別の情感を伴って響く

アルバムの深度を増す重要なバージョン。

8. An American Dream

ラストを飾るにふさわしい、幻と現実の交差を描いた長尺のサイケデリック・バラード

「アメリカン・ドリーム」を逆説的に描くこの曲は、80年代という時代への批評性を含んでおり、
音楽的にもPink FloydSpiritualizedを予感させるような広がりを見せる。

終盤の音響処理はもはやサイケデリックというより“音による瞑想”の領域であり、
アルバム全体の浮遊感を完璧に昇華させて幕を閉じる。


総評

『Express』は、Love and Rocketsがロックの構造を借りながら、ポストパンク以降の“音の幻視”を追求したアルバムである。

サイケ、クラウト、ゴス、グラム、ニューウェイヴといった要素が渾然一体となりながら、
そのどれにも属さない独自の浮遊感と知覚の揺らぎを持つ

それは、決してシーンの“主流”にはならなかったかもしれないが、
のちのシューゲイザー、ドリームポップ、オルタナティブ・ロックに確実な影響を与えた未来の音楽でもあった。

『Express』は、単なるバンドの2ndアルバムではない。

“幻覚的音響世界の地図”としての完成形のひとつなのである。


おすすめアルバム(5枚)

  1. Spacemen 3 – Playing with Fire (1989)
     瞑想的サイケロックの極北。Love and Rocketsの精神的後継者とも言える。
  2. The Jesus and Mary ChainDarklands (1987)
     フィードバックと耽美の融合。サイケとポップの交錯点。
  3. Cocteau Twins – Victorialand (1986)
     声と空気の楽器化という意味で、Expressのドリーミーな側面と呼応。
  4. Julian Cope – Fried (1984)
     英国的サイケと内省性が交錯する孤高のアシッド・フォーク。
  5. Tones on Tail – Everything! (1998/編集盤)
     Love and Rockets以前、Bauhaus解散後に生まれた実験的ユニットの集大成。音響面での直接的ルーツ。

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