発売日: 2017年9月1日
ジャンル: ポストロック、エクスペリメンタルロック、エレクトロニカ
Every Country’s Sunは、Mogwaiの9作目のスタジオアルバムで、バンドの持ち味であるダイナミックなサウンドスケープと、静と動のコントラストが見事に表現された作品である。本作では、初期のポストロックの影響を感じさせつつも、エレクトロニカやアンビエント、さらにエクスペリメンタルロックの要素が加わり、バンドが新たな進化を遂げている。アルバムのタイトルは、すべての国に共通する「太陽」というテーマから名付けられ、全体を通して希望と暗闇が交差するサウンドが印象的だ。
プロデューサーには、デイヴ・フリッドマン（The Flaming Lips、Mercury Revとの仕事で知られる）を再び迎え、重厚で洗練された音作りが施されている。特に「Coolverine」や「Party in the Dark」などの楽曲は、キャッチーさとエモーショナルな深みが共存しており、Mogwaiの成熟した音楽性を感じさせる。アルバム全体にわたり、陰鬱でありながらも心を揺さぶるような美しさが漂う本作は、バンドのキャリアにおける重要な位置を占める一枚である。
トラックごとの解説
1. Coolverine
アルバムの幕開けを飾るスローテンポでメランコリックなトラック。ゆったりとしたギターのリフとシンセが重なり、徐々に高まる緊張感がリスナーを引き込む。穏やかでありながらも内省的な一曲。
2. Party in the Dark
珍しくキャッチーなボーカルトラックで、ポップなメロディとノスタルジックな雰囲気が際立つ。Mogwaiにとって新鮮なアプローチであり、バンドの多様な音楽性を感じさせる一曲。
3. Brain Sweeties
ドリーミーでアンビエントなサウンドが印象的。ギターとシンセが織り成す幻想的な音像が美しく、静かに広がるサウンドスケープが心地よい。
4. Crossing the Road Material
リズミカルでエネルギッシュなトラックで、ギターとドラムのダイナミックなアンサンブルが特徴。徐々にビートが増していく構成が刺激的で、聴く者を引き込む。
5. aka 47
アンビエント色が強いミッドテンポのトラック。繊細なギターとシンセの層が重なり、静寂の中に漂う美しさが感じられる一曲。
6. 20 Size
少しダークでミステリアスなトーンを持つ楽曲で、低音のリフとディストーションがかかったギターが印象的。緊張感と荒々しさが共存する一曲。
7. 1000 Foot Face
メランコリックでエモーショナルな楽曲で、ギターの響きが郷愁を誘う。シンプルなメロディがゆったりと展開し、アルバム全体の静かな美しさを象徴するようなトラック。
8. Don’t Believe the Fife
静寂から徐々に盛り上がる構成が特徴で、リリカルなギターとシンセが繊細に絡み合う。ポストロックならではのダイナミクスが生かされた、感動的な一曲。
9. Battered at a Scramble
重厚でエッジの効いたトラックで、鋭いギターとビートが激しく響く。陰鬱なムードが漂い、アルバム中でも特にエネルギッシュな楽曲。
10. Old Poisons
激しいドラムとギターが織りなすハードなナンバーで、Mogwaiのロックな側面が強く表現されている。エネルギッシュで疾走感のある一曲。
11. Every Country’s Sun
アルバムのラストを飾る大作で、静かなピアノから始まり、徐々に壮大なサウンドスケープへと展開する。アルバム全体のテーマである「光と暗闇」のコントラストが美しく表現されているフィナーレ。
アルバム総評
Every Country’s Sunは、Mogwaiがこれまで築き上げてきたポストロックの美学を進化させつつ、新たな挑戦を取り入れたアルバムである。シンセやアンビエントな要素が加わり、アルバム全体に緻密で豊かな音の広がりが感じられる。バンドの持つダイナミズムと陰鬱な美しさが見事に融合し、初期のファンから新しいリスナーまで幅広く楽しめる作品となっている。特に「Coolverine」や「Every Country’s Sun」といった楽曲は、彼らの音楽的成長と成熟を象徴するものであり、深い感動を呼ぶ一枚である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
No One’s First and You’re Next by Modest Mouse
インディーロックのエッセンスが詰まった作品で、ダイナミクスとリズムの巧みな変化が楽しめる。Mogwaiのロックな面が好きなリスナーにおすすめ。
Takk… by Sigur Rós
幻想的で叙情的なポストロックの傑作で、静と動のコントラストが美しい。Every Country’s Sunのエモーショナルな側面と共鳴する。
The Wilderness by Explosions in the Sky
アンビエントなポストロックが特徴で、繊細なギターサウンドと広がりのあるメロディがMogwaiのアルバムと共通する。
Lightless Walk by Cult Leader
激しさと美しさが共存する作品で、エクスペリメンタルなサウンドが魅力的。Mogwaiのハードな側面が好きなリスナーにおすすめ。
Ghosts of the Great Highway by Sun Kil Moon
フォークとロックが融合した作品で、ノスタルジックなサウンドと感情的なリリックが印象的。Mogwaiの叙情的な一面に響く一枚。
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