El Cuarto de Tula by Buena Vista Social Club(1997)楽曲解説

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1. 歌詞の概要

「El Cuarto de Tula(トゥラの部屋)」は、Buena Vista Social Club(ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ)によって1997年に世界的に有名になった楽曲で、キューバの伝統的なソン・クバーノ(Son Cubano)のスタイルを象徴するエネルギッシュな一曲である。

歌詞は、Tula(トゥラ)という女性がうっかり寝落ちしてしまい、その間に彼女の部屋が火事になってしまうというコミカルな内容。火事を消そうと人々が駆けつけるが、その騒ぎの中で彼女の恋愛関係の噂が飛び交うという、ラテン音楽らしいユーモラスなストーリーが展開される。

2. 歌詞のバックグラウンド

この曲は、キューバの作曲家Sergio González Siaba(セルヒオ・ゴンサレス・シアバによって書かれたもので、1960年代からキューバで広く知られていたクラシックなソン・クバーノの一つである。

Buena Vista Social Club」によるカバーは、アメリカのプロデューサー Ry Cooder(ライ・クーダー)のプロジェクトの一環として1997年に録音され、キューバ音楽のリバイバルに貢献した

この楽曲では、特にIbrahim Ferrer(イブラヒム・フェレール)、Compay Segundo(コンパイ・セグンド)、Pío Leyva(ピオ・レイバ)といったレジェンドたちの熱いボーカルの掛け合いが際立ち、ライブ感あふれるパフォーマンスが楽しめる。

3. 歌詞の抜粋と和訳

Original Lyrics:
El cuarto de Tula
Le cogió candela
Se quedó dormida
Y no apagó la vela

和訳:
トゥラの部屋が燃えている
彼女は寝落ちしてしまい
ろうそくを消さなかったんだ

Original Lyrics:
¡Ven a ver! Cómo está el cuarto de Tula
¡Ven a ver! Cómo está que arde

和訳:
おいでよ!トゥラの部屋がどうなっているか見てみろ
燃えているんだ

Original Lyrics:
Los bomberos con su campana
Allí llegaron con rapidez

和訳:
消防士たちが鐘を鳴らして
すぐに駆けつけた

引用元:Genius

4. 歌詞の考察

「El Cuarto de Tula」は、キューバ音楽の持つ陽気さと即興性、ユーモアが詰まった作品であり、単なる火事の歌ではなく、ラテン文化特有の「恋愛と騒動」を暗示した二重の意味を持つと解釈されることもある。

例えば、トゥラの部屋の火事を「情熱的な恋の炎」と捉え、騒ぎに駆けつけた男性たちが実は彼女を巡る恋のライバルだったのではないかという解釈もある。

このように、陽気なリズムとコミカルな歌詞の背後に、ラテン音楽の持つ独特のエロティシズムとダブルミーニングが隠されていることが、この曲の魅力のひとつである。

5. この曲が好きな人におすすめの曲

  • “Candela” by Buena Vista Social Club – 火をテーマにしたもう一つのエネルギッシュな楽曲。
  • “Guantanamera” by Compay Segundo – キューバの国民的ソング。
  • “Son de la Loma” by Trío Matamoros – ソン・クバーノのクラシック名曲。
  • “Cienfuegos Tiene Su Guaguancó” by Ibrahim Ferrer – キューバ音楽のリズムと情熱が詰まった一曲。
  • “La Negra Tomasa” by Compay Segundo – 伝統的なラテン音楽の要素を感じられる楽曲。

6. 楽曲の影響と特筆すべき事項

「El Cuarto de Tula」は、1997年の『Buena Vista Social Club』アルバムとドキュメンタリー映画の成功により、キューバ音楽の象徴的な楽曲となった

この曲は現在も世界中のキューバ音楽バンドによって頻繁に演奏され、特にライブでの即興的な掛け合いや、観客とのコール&レスポンスが魅力となっている。

さらに、この楽曲のダンサブルなリズムは、サルサやソン・クバーノのダンスパフォーマンスにも適しており、ラテン音楽好きの間で長く愛され続けている

7. まとめ

「El Cuarto de Tula」は、ソン・クバーノのエネルギーとユーモア、そしてライブ感を存分に味わえる名曲であり、キューバ音楽の持つ魅力を凝縮した作品である。

そのキャッチーなメロディと愉快なストーリーは、聴く人を自然と踊りたくさせるパワーを持ち、今後も世界中で演奏され続けるだろう

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