発売日: 2014年9月9日
ジャンル: ポストパンク・リバイバル、インディーロック
『El Pintor』は、Interpolにとって5枚目のスタジオアルバムであり、バンドの進化を象徴する一枚だ。タイトル「El Pintor」はスペイン語で「画家」を意味すると同時に、「Interpol」のアナグラムでもある。本作は、ベーシストのカルロス・デングラーが脱退した後、残るメンバー3人が新たな形で制作した初のアルバムであり、ポール・バンクスがギターとベースの両方を担当している。
音楽的には、バンドが初期のミニマルで鋭いサウンドに回帰した一方で、より磨き上げられたアレンジと洗練された雰囲気が加わっている。陰鬱でメランコリックな要素が随所に残りつつも、エネルギッシュで躍動感のある楽曲が目立つ。歌詞のテーマは愛、喪失、自己再生といった普遍的なものが中心で、ポール・バンクスの重厚なボーカルがこれらのテーマを深く掘り下げている。
以下、各トラックの詳細を解説する。
1. All the Rage Back Home
アルバムの幕開けを飾るエネルギッシュなトラックで、リードシングルとしてもリリースされた。静かなイントロから爆発的なサビへの展開が印象的で、恋愛の高揚感と不安が織り交ぜられた歌詞が心に残る。
2. My Desire
暗くメランコリックなトーンの楽曲で、内省的な歌詞が特徴。ギターとベースが織り成す緊張感のあるアレンジが、感情の葛藤を鮮やかに描き出している。
3. Anywhere
シンプルで力強いギターワークが主導するアップテンポなトラック。希望と解放感を感じさせるサウンドが、アルバム全体における明るい瞬間を提供する。
4. Same Town, New Story
ミニマルなリズムと夢幻的なギターが特徴のトラック。歌詞には新たな始まりへの希望と過去への未練が交錯しており、独特の浮遊感が漂う。
5. My Blue Supreme
ポップなメロディが目立つ楽曲で、アルバムの中でも異彩を放つ一曲。軽やかなアレンジと詩的な歌詞が、Interpolの新しい一面を感じさせる。
6. Everything Is Wrong
リズミカルで躍動感のあるナンバー。切迫感のあるギターリフとダイナミックなビートが特徴で、不安や葛藤を描いた歌詞と見事にマッチしている。
7. Breaker 1
暗く緊張感のあるトラックで、反復的なギターリフが不穏な雰囲気を生み出している。都会的な孤独感をテーマにした歌詞が、楽曲のムードをさらに引き立てる。
8. Ancient Ways
アルバムの中でも特に攻撃的で荒々しい楽曲。重厚なギターとドラムが楽曲を支配し、バンドのエネルギッシュな側面を強調している。
9. Tidal Wave
ゆったりとしたテンポで進む楽曲で、感情的な深みとリリカルな歌詞が印象的。繊細なギターと控えめなビートが、アルバム全体の中で静かな休息を提供する。
10. Twice as Hard
アルバムのラストを締めくくるドラマチックなトラック。重厚なサウンドとポール・バンクスの感情的なボーカルが相まって、アルバム全体に感慨深い余韻を残す。
アルバム総評
『El Pintor』は、Interpolがバンドとしての原点に回帰しつつも、新しいチャプターを切り開いた作品だ。カルロス・デングラーの不在が危惧されたが、残るメンバーがそれを克服し、より引き締まったサウンドを実現している。「All the Rage Back Home」や「Everything Is Wrong」などの楽曲は、バンドの新しいエネルギーと成熟したアプローチを示している。
このアルバムは、初期のファンにも新しいリスナーにも訴求する内容であり、Interpolの音楽的な継続性と進化を同時に感じさせる。ダークでエモーショナルな雰囲気とエネルギッシュなサウンドが見事に融合し、彼らのキャリアの中で重要な位置を占める作品となっている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Editors – In Dream
ダークで洗練されたサウンドが、『El Pintor』の雰囲気と共通する。
The National – High Violet
内省的でエモーショナルな歌詞と緻密なアレンジが、『El Pintor』に通じる。
Bloc Party – Four
エネルギッシュでダイナミックなサウンドが、Interpolの攻撃的な側面を好むリスナーにおすすめ。
Joy Division – Substance
ポストパンクの原点ともいえるアルバムで、Interpolの音楽的ルーツに触れられる。
The Killers – Battle Born
スタジアムロック的なスケール感と感情的なアプローチが、『El Pintor』の明快なサウンドと響き合う。
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