発売日: 1997年2月25日
ジャンル: インディー・フォーク, ローファイ, フォークロック
Elliott Smithの3作目のアルバム『Either/Or』は、彼の音楽キャリアにおいて大きなターニングポイントとなる作品であり、フォークとポップの要素が巧みに融合された名盤である。このアルバムでは、前作『Roman Candle』やセルフタイトルのアルバムと同様に内省的な歌詞が多いが、音楽的にはより豊かで洗練されたサウンドへと進化している。繊細で感情的なアコースティックギターを中心に、ローファイな録音の美しさを保ちながらも、メロディアスで親しみやすいポップの要素が加わり、Smithの音楽性が大きく広がっている。
各曲ごとの解説:
- Speed Trials
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、静かなギターメロディとSmithのささやくようなボーカルが特徴。シンプルなアレンジが、彼の内省的な歌詞を際立たせており、不安や孤独感が漂う。 - Alameda
この曲では、Smithのギターワークがより力強く展開され、明確なメロディラインが印象的。歌詞には逃避と喪失感が表現されており、Smithの歌声は静かでありながらも感情の深さを感じさせる。 - Ballad of Big Nothing
アルバムの中でも最もキャッチーでポップな一曲。軽快なギターメロディと明るいテンポが特徴だが、歌詞には深い虚無感や無力感が漂う。Smithの音楽における二面性を感じさせるトラック。 - Between the Bars
Smithの代表曲のひとつで、アルバムのハイライト。甘美なメロディと切ない歌詞が融合し、アルコール依存や自暴自棄をテーマにした感情豊かなトラック。Smithのシンプルなギターと優しいボーカルが、リスナーに強く訴えかける。 - Pictures of Me
ポップでエネルギッシュなトラックだが、歌詞にはメディアや自己認識に対するシニカルな視点が込められている。Smithの作品の中でも特にリズミカルでダイナミックな一曲。 - No Name No. 5
内省的で暗いトラックで、Smithの歌声がより静かに響く。シンプルなアコースティックギターのアルペジオが美しく、歌詞には孤独感と疎外感が滲み出ている。 - Rose Parade
軽やかなテンポとメロディックなギターが特徴の曲。表面的には明るい雰囲気を持っているが、歌詞には無力感や諦念が含まれており、彼の独特な皮肉のセンスが光る。 - Punch and Judy
短くて鋭いトラックで、歪んだギターサウンドがインパクトを与える。Smithのボーカルは静かだが、サウンドはエネルギッシュで、アルバム全体に良いアクセントを加えている。 - Angeles
アルバムの中でも特に美しいアコースティックトラックで、Smithのギターワークが際立つ。都会での孤独と喪失感をテーマにした詩的な歌詞が印象的で、Smithの代表作のひとつとして知られる。 - Cupid’s Trick
よりロック色の強いトラックで、荒々しいギターとエネルギッシュなビートが際立っている。Smithの音楽の中でも攻撃的な一面が感じられる一曲で、アルバム全体に変化を加えている。 - 2:45 AM
静かで内向的なトラックで、Smithの孤独感と絶望感が強く表現されている。彼の歌詞には痛みと不安がにじみ出ており、シンプルなアコースティックギターがその感情を引き立てている。 - Say Yes
アルバムを締めくくる軽やかなトラックで、Smithのポップな側面がよく表れている。歌詞には希望と再生が描かれており、アルバムの中でも珍しく明るい終わり方をする一曲。
アルバム総評:
『Either/Or』は、Elliott Smithの音楽的成長を象徴するアルバムであり、彼のフォークとポップのバランスが見事に融合された名盤である。ローファイなサウンドの美しさを保ちながらも、メロディアスで親しみやすいトラックが多く、Smithの感情的な歌詞とギターワークが一層際立っている。内省的でありながらも、彼の音楽の持つ普遍的なテーマが広がり、多くのリスナーに訴えかける作品となっている。『Either/Or』は、Elliott Smithの音楽キャリアの中でも特に重要な位置を占め、フォークロックとインディー音楽の歴史においても、時代を超えて愛され続ける傑作である。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- XO by Elliott Smith
『Either/Or』の次作で、よりポップで洗練されたサウンドを展開。Elliott Smithの美しいメロディと感情的な歌詞がさらに際立つ一枚。 - Pink Moon by Nick Drake
シンプルなギターと内省的な歌詞が特徴で、Smithの繊細なフォークサウンドが好きなリスナーにおすすめ。 - For Emma, Forever Ago by Bon Iver
アコースティックなサウンドと孤独感をテーマにしたアルバムで、Smithの感情豊かなリリックに共感するリスナーにぴったり。 - Heartbreaker by Ryan Adams
内省的で感情豊かなフォークロックアルバム。Smithの歌詞の深みやシンプルなギターアレンジを楽しんだリスナーに最適。 - I See a Darkness by Bonnie ‘Prince’ Billy
暗くて感情的なフォークサウンドが特徴。Smithの持つ陰鬱なトーンが好きなリスナーにはこのアルバムが強く響くはず。
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