
発売日: 2022年5月13日
ジャンル: ガレージロック、ブルースロック、ルーツロック、サザンロック
概要
『Dropout Boogie』は、The Black Keys の11作目のスタジオアルバムであり、
“ルーツ回帰”と“現代的ロックの快楽”の絶妙なバランス を手にした2020年代の代表作である。
前作『Delta Kream』(2021)ではヒル・カントリー・ブルースのカバーに徹し、
彼らのルーツを深く掘り起こす方向へ振り切った。
その直後に制作された『Dropout Boogie』は、
ブルースの源流で温めた熱を、再び The Black Keys のロックへと戻す
という流れを持っている。
録音は Dan Auerbach の Easy Eye Sound スタジオ。
セッション形式で、
- Billy F. Gibbons(ZZ Top)
- Greg Cartwright(Reigning Sound)
- Angelo Petraglia(Kings of Leon)
などのゲストと即興ベースで曲を構築していった。
そのため、
荒々しい生感 × すっきりしたプロダクション
という両側の良さが共存している。
本作は、初期ローファイ期の混沌でもなく、
『Brothers』『El Camino』のモダンロックでもなく、
『Let’s Rock』の原点回帰一辺倒でもない。
むしろ、
The Black Keys が歩んできた20年分の要素を自然体で混ぜ合わせた“現在形ブルースロック”
と言える。
全曲レビュー
1曲目:Wild Child
本作の代表曲であり、勢いとキャッチーさのバランスが抜群。
Auerbach のリフがすぐ耳に残り、Carney のドラムは跳ねるように躍動する。
初期の勢いと中期のポップ性が美しく結晶した名曲。
2曲目:It Ain’t Over
スローファンク気味のリズムに、甘くソウルフルなメロディ。
ブラック・キーズの“夜の表情”がよく出ている大人のミッドテンポ曲。
3曲目:For the Love of Money
泥臭いブルースロック。
重量級のリフと Dan の甘辛いボーカルが心地よく、ライブ感が強い。
4曲目:Your Team Is Looking Good
軽快なロックンロールで、ガレージ時代のスピリットが戻ってくる瞬間。
バンドが“遊んでいる感じ”が最高に楽しい。
5曲目:Good Love(feat. Billy F. Gibbons)
ZZ Top の Gibbons が参加し、テキサス・ブギー感が一気に濃くなる。
ギターの絡みがとにかく豪快で、アルバムのハイライトのひとつ。
6曲目:How Long
しっとりしたソウルフルな曲。
Auerbach のメロディメイカーとしての才能がよく表れており、『Brothers』の温度感に近い。
7曲目:Burn the Damn Thing Down
直球のガレージロック。
ファズリフが荒く刻まれ、勢いで押し切る痛快ナンバー。
8曲目:Happiness
スウィーティで温かいメロディが広がる。
ブラック・キーズの“優しい側面”がにじむ佳曲。
9曲目:Baby I’m Coming Home
ヴィンテージソウルの香りが漂う一曲。
サザンソウル〜ロックの縦軸が美しく噛み合う。
10曲目:Didn’t I Love You
アルバムの締め。
ビターで哀愁のあるブルースロックで、しみじみとした表情を残して終わる。
総評
『Dropout Boogie』は、
ブルースロックの伝統、ガレージの荒々しさ、モダンロックの洗練
この三本の柱をゆるやかに束ねた、
“2020年代の The Black Keys の名刺代わり”といえるアルバムである。
初期の汚れた音も、
中期のモダンな空気も、
後期の大人びた落ち着きも、
すべて自然に混ざっている。
ブルース × ガレージ × アメリカーナ
という彼らの本質が、
最も素直で、最も肩の力が抜けた形で表れているのが本作だ。
特に「Wild Child」「It Ain’t Over」「Good Love」は、
ブラック・キーズの歴史の中でも上位に入る完成度であり、
バンドが“まだまだ走れる”ことを力強く示している。
『Delta Kream』のルーツ掘り下げから一転して、
本作では再び“自分たちの音”へ戻ってきた。
その過程が非常に美しい。
おすすめアルバム(5枚)
- Delta Kream (2021)
直前作であり、本作の“ブルース回帰の熱源”となった作品。 - El Camino (2011)
勢いとポップ性のピーク。本作のキャッチーさと通じる。 - Brothers (2010)
ブルース × ソウル × モダンの完成形。メロディの深みが比較対象として最適。 - Let’s Rock (2019)
“二人組ロック回帰”の直前章。流れの理解に欠かせない。 - Magic Potion (2006)
荒々しい初期の魂を知ることで、本作の“自然体の成熟”がより味わえる。



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