アルバムレビュー：Death Magnetic by Metallica

アルバムレビュー

2024.12.08

発売日: 2008年9月12日
ジャンル: スラッシュメタル、ヘヴィメタル

Metallicaの9作目となる『Death Magnetic』は、バンドがスラッシュメタルの原点に立ち返り、ファンの期待に応えた作品である。前作『St. Anger』での実験的なアプローチから一転し、初期のMetallicaの攻撃性や複雑な楽曲構成を現代的なプロダクションで再構築している点が特徴だ。

プロデューサーにはリック・ルービンを迎え、ダイナミックレンジを意図的に広げたサウンドメイクが行われた。ヘヴィでスピーディなリフ、緻密なアレンジ、そしてカーク・ハメットの復活したギターソロが、アルバム全体を引き締めている。ジェイソン・ニューステッドに代わって2003年に加入したロバート・トゥルヒーヨ（ベース）も、バンドの音楽に新たなエネルギーを加えている。

歌詞には、死や自己探求といった深遠なテーマが込められており、楽曲は一つの物語のように展開していく。『Death Magnetic』は、Metallicaが過去の遺産を尊重しつつ、現代に適応した姿を示す作品である。

1. That Was Just Your Life

アルバムの幕開けを飾る楽曲で、ダークなイントロから急加速するリフが印象的。人生の儚さや死の影をテーマにした歌詞と、ジェームズ・ヘットフィールドの力強いボーカルが楽曲を牽引する。

2. The End of the Line

重厚でスラッシュメタルらしいリフが特徴的なトラック。欲望や堕落をテーマにした歌詞が、キャッチーなコーラスとともに展開される。複雑な曲構成がバンドの成熟を感じさせる。

3. Broken, Beat & Scarred

「What don’t kill ya make ya more strong」というフレーズが印象的な楽曲。困難を乗り越える力をテーマにした歌詞と、重低音の効いたリフがパワフルに響く。

4. The Day That Never Comes

アルバムの中でも特に注目される楽曲で、『One』を彷彿とさせる構成が特徴的。静かなイントロから次第に激しく展開し、戦争や対立をテーマにした歌詞が感情的に描かれている。

5. All Nightmare Long

スラッシュメタルのエネルギーが炸裂する一曲で、夢の中の悪夢をテーマにしている。スピーディなリフと複雑なアレンジが、初期のMetallicaを思い起こさせる。

6. Cyanide

グルーヴ感のあるリフが印象的な楽曲で、死と絶望をテーマにした暗い歌詞が特徴的。ライブでも定番曲として親しまれている。

7. The Unforgiven III

「The Unforgiven」シリーズの3作目で、前2作に比べてメロディアスなアプローチが際立つ。ピアノのイントロが楽曲に新鮮な印象を与えており、内省的な歌詞が心に響く。

8. The Judas Kiss

裏切りと誘惑をテーマにした力強い楽曲で、ヘヴィで攻撃的なリフが特徴的。コーラスのメロディが印象的で、アルバム中でも特に勢いのある一曲だ。

9. Suicide & Redemption

約10分にわたるインストゥルメンタルで、Metallicaの技術力と音楽的な引き出しの多さを堪能できる大作。アルバム全体のテーマである「死」と「再生」を音楽で描き出している。

10. My Apocalypse

アルバムを締めくくる疾走感あふれるスラッシュメタルトラック。破壊と絶望を描いた歌詞が、ジェームズ・ヘットフィールドの激しいボーカルと共鳴し、アルバムを力強く締めくくる。

アルバム総評

『Death Magnetic』は、Metallicaがスラッシュメタルのルーツを再発見し、それを現代的に磨き上げた作品である。複雑で重厚な楽曲構成、メロディアスな展開、そしてテーマ性のある歌詞が融合し、初期のMetallicaファンにとっても新しいリスナーにとっても楽しめる内容となっている。過去へのオマージュを感じさせつつも、新しいMetallicaの一歩を示した名盤である。