発売日: 1968年8月27日
ジャンル: サイケデリックロック、フォークロック
アルバム全体の印象
「Crown of Creation」は、Jefferson Airplaneが1968年にリリースした4枚目のアルバムであり、バンドのサイケデリックロックの到達点といえる作品である。本作では、前作「After Bathing at Baxter’s」の実験的なアプローチを引き継ぎつつも、よりコンパクトでメロディアスな楽曲を中心に構成されている。その結果、挑戦的でありながらもリスナーに親しみやすい作品に仕上がっている。
歌詞のテーマには、当時のカウンターカルチャーや反戦、環境問題への批判、そして愛やアイデンティティの探求が盛り込まれている。また、メンバーそれぞれの個性が際立つ楽曲が揃っており、グレイス・スリック、マーティ・バリン、ポール・カントナーのボーカルと作詞が見事に融合している点も特筆すべきポイントだ。
音楽的には、フォークロックのルーツを持ちながらも、サイケデリックなエフェクトや実験的なアレンジが多用されており、1960年代末のロックシーンを象徴するサウンドを楽しめる。また、ヨーマ・カウコネンのギターやジャック・キャサディのベースが織り成すリズムセクションも、このアルバムに深みを与えている。
各曲解説
1. Lather
アルバムのオープニングを飾るグレイス・スリックの楽曲。彼女の柔らかなボーカルが特徴で、社会への皮肉とノスタルジアが混ざり合った歌詞が印象的。シンプルなアレンジの中に、深い感情が込められている。
2. In Time
マーティ・バリンとポール・カントナーの共作による幻想的なトラック。ゆったりとしたテンポと優雅なメロディが、聴く者を夢の世界へ誘う。愛と希望をテーマにした歌詞が心に響く。
3. Triad
デヴィッド・クロスビー(The Byrds)の未発表曲をJefferson Airplaneがカバーした楽曲。禁断の愛をテーマにした挑発的な歌詞が特徴で、グレイス・スリックの官能的なボーカルが圧倒的な存在感を放っている。
4. Star Track
ヨーマ・カウコネンの作曲による楽曲で、ブルースの影響が色濃い。ギターリフが印象的で、バンド全体の演奏力が際立つトラック。
5. Share a Little Joke
マーティ・バリンの作品で、サイケデリックなエフェクトとミステリアスな歌詞が融合した楽曲。フォークロックの温かみと幻想的な雰囲気が共存している。
6. Chushingura
短いインストゥルメンタルで、実験的なサウンドスケープが特徴。アルバム全体の流れを一旦リセットするような役割を果たしている。
7. If You Feel
マーティ・バリンがリードボーカルを務めるアップテンポな楽曲。爽快なリズムとキャッチーなメロディが、アルバムの中で特にポップな印象を与える。
8. Crown of Creation
アルバムのタイトル曲で、ポール・カントナーが作詞作曲を手掛けた楽曲。反戦と反権力をテーマにした歌詞が、カウンターカルチャーのスピリットを象徴している。重厚なサウンドと鋭いメッセージ性が際立つ一曲。
9. Ice Cream Phoenix
ヨーマ・カウコネンとチャールズ・C・カイトの共作による楽曲で、ブルースとサイケデリックが融合した一曲。カウコネンのギターソロが特に印象的だ。
10. Greasy Heart
グレイス・スリックがリードボーカルを務める風刺的な楽曲。物質主義や虚栄心を批判した歌詞が特徴で、彼女の強烈な個性が光る。
11. The House at Pooneil Corners
アルバムのラストを飾る壮大なトラックで、ポール・カントナーとマーティ・バリンの共作。終末的なテーマとドラマチックなアレンジが印象的で、アルバム全体を締めくくるにふさわしい。
アルバム総評
「Crown of Creation」は、Jefferson Airplaneが1960年代のサイケデリックムーブメントの最前線に立つバンドとして、社会的、音楽的なメッセージを深化させたアルバムである。商業的なポップスに傾倒せず、実験性や鋭いメッセージ性を追求した結果、本作はロック史における重要な作品となった。
特に「Triad」や「Crown of Creation」のような楽曲は、当時の社会や文化を反映する一方で、現在でも普遍的な魅力を持っている。Jefferson Airplaneの多面的な才能と、60年代末のカウンターカルチャーの精神を存分に感じられる一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
「Surrealistic Pillow」 by Jefferson Airplane
バンドのブレイクスルーアルバムで、より親しみやすいサイケデリックロックが楽しめる。
「Volunteers」 by Jefferson Airplane
「Crown of Creation」に続くアルバムで、さらにラディカルな政治的メッセージを含む。
「Anthem of the Sun」 by Grateful Dead
サンフランシスコのサイケデリックシーンを代表する作品。即興演奏と実験性が共通している。
「Forever Changes」 by Love
フォークとサイケデリックが融合した名盤。詩的な歌詞と独創的なアレンジが「Crown of Creation」に通じる。
「Axis: Bold as Love」 by The Jimi Hendrix Experience
幻想的なギターサウンドと深みのある楽曲が、Jefferson Airplaneの作品と共鳴する部分が多い。
コメント