1. 歌詞の概要
「Crocodile Rock」は1972年にシングルとしてリリースされ、翌1973年のアルバム『Don’t Shoot Me I’m Only the Piano Player』にも収録された楽曲である。歌詞は、主人公が青春時代を振り返り、当時流行した「クロコダイル・ロック」というダンスとともに、恋や若者文化の輝きを懐 nostalgic に語る内容となっている。
「スージーと踊った夜」「ジュークボックスに夢中になった日々」といった描写は、1950年代から60年代初頭のロックンロール文化を回想するものであり、エルトンとバーニー・トーピンが自身の青春時代の音楽体験を重ねた曲ともいえる。失われた若さへの郷愁をユーモラスに描きつつ、「もうあの頃は戻らない」という哀愁が漂う点が大きな魅力となっている。
2. 歌詞のバックグラウンド
「Crocodile Rock」はバーニー・トーピンがエルヴィス・プレスリーやバディ・ホリー、そして初期のアメリカン・ロックンロールに影響を受けて書いた詞に、エルトン・ジョンがキャッチーなメロディをつけて完成させた。タイトルにある「クロコダイル・ロック」は架空のダンスの名称であり、実際に存在する踊りではない。これは「ロック黄金時代の雰囲気をパロディ的に再現した創作」であり、架空の舞台を通して青春の記憶を描いたのである。
リリース当時、この曲はエルトンにとって初の全米シングルチャート1位を獲得し、彼の世界的成功を決定づける重要な作品となった。ノスタルジックなテーマとキャッチーなメロディ、そしてシンセサイザーを活用したユニークな音作りは、1970年代初頭のポップシーンを象徴する存在となった。
3. 歌詞の抜粋と和訳
引用元：Genius
“I remember when rock was young
Me and Susie had so much fun”
「ロックがまだ若かった頃を覚えている
僕とスージーは本当に楽しい日々を過ごしていた」
“Holdin’ hands and skimming stones
Had an old gold Chevy and a place of my own”
「手をつなぎ、石を水切りし
古い金色のシボレーに乗り、僕の居場所を持っていた」
“But the years went by and the rock just died
Suzie went and left us for some foreign guy”
「だが年月は過ぎ、ロックは死んでしまった
スージーは僕らを去り、外国の男のもとへ行ってしまった」
“La, la-la-la-la-la…”
「ラララ…」
楽しげな響きの中に、若さと恋の喪失の切なさがにじむ。
4. 歌詞の考察
「Crocodile Rock」は、一見するとただの懐古的なポップソングに聞こえるが、その裏には時代の移ろいと喪失感が潜んでいる。歌詞の主人公は、スージーとの思い出を「クロコダイル・ロック」と結びつけて語り、青春時代を象徴的に描き出す。しかし最後には「ロックは死んでしまった」と認め、若さや恋も二度と戻らないことを悟る。
エルトンとトーピンはこの曲で、自分たちが子ども時代に憧れた50年代のアメリカン・ロックンロール文化を追体験しつつ、それが既に過去のものとなった現実を受け止めている。この二重性が、「楽しいポップソング」と「郷愁のバラード」としての両面を与えているのだ。
さらに、この曲には音楽史的な意義もある。50年代ロックンロールへのオマージュを込めたと同時に、シンセサイザーなど新しいサウンドを積極的に導入することで、懐古と革新を融合させている点が特徴的である。つまり「Crocodile Rock」は、過去を称えながら未来のポップミュージックを開拓した楽曲ともいえる。
（歌詞引用元：Genius Lyrics / © Original Writers）
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Saturday Night’s Alright for Fighting by Elton John
同じくアップテンポでエネルギッシュな楽曲。 - Rock Around the Clock by Bill Haley & His Comets
50年代ロックンロールの象徴で、「Crocodile Rock」の元ネタ的存在。 - That’ll Be the Day by Buddy Holly
青春の輝きと失われた時間を思わせるロックンロール。 - Runaway by Del Shannon
ノスタルジックな旋律と切ない歌詞が共通する。 - Grease by Frankie Valli
50年代カルチャーを現代的に再解釈した代表的楽曲。
6. エルトン・ジョン初の全米No.1としての意義
「Crocodile Rock」はエルトン・ジョンの初の全米1位シングルであり、彼の国際的スターへの道を決定づけた歴史的楽曲である。単なるノスタルジーにとどまらず、50年代ロックンロールの精神を1970年代ポップに移植することで、世代を超えた共感を生み出した。
軽快なメロディと無邪気なラララのコーラスの背後には、時代の移ろいと青春の儚さが刻まれている。だからこそ「Crocodile Rock」は半世紀以上経った今でも、多くの人々の心に「楽しくも切ない青春のアンセム」として響き続けているのである。
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