発売日: 1996年（リマスター・再発含む形で再注目）
ジャンル: ファンク、ジャズ・ファンク、ニューオーリンズ・グルーヴ、インストゥルメンタル・ファンク
概要
『Coolin’ Off』は、ニューオーリンズ出身のファンクバンドGalacticが1996年にリリースしたデビュー・アルバムであり、現代ファンク・ジャムシーンの出発点として語り継がれるクラシックである。
本作にJelly Joseph（Anjelika ‘Jelly’ Joseph）は参加していないが、現在のGalacticにおける彼女の存在を踏まえつつ、バンドのルーツを知るうえで不可欠なアルバムとして解説する。
Galacticは、伝統的なニューオーリンズ・ファンクを基盤にしながら、ヒップホップ、ジャズ、R&B、ロックなどの要素を流動的に取り入れ、即興性とグルーヴ重視のスタイルを築いてきた。
『Coolin’ Off』はその名の通り、“気取らず、でも火力は高い”ファンクサウンドで、シンプルにして強力なグルーヴの磁場を展開する。
全曲レビュー（主要トラック抜粋）
1. Go Go
オープニングからして炸裂する、ゴーゴー＋ファンクの融合ナンバー。
パーカッシブなドラムと厚いブラスセクションが、身体を自然と揺らす導入曲。
2. Welcome to New Orleans
インストながら“街そのもの”を表現しているかのような一曲。
ブラスとギターの掛け合いが、ニューオーリンズの雑踏を思わせる。
3. Something’s Wrong With This Picture
このアルバムで最も“ジャズファンク”寄りの曲。
ドラムは跳ね、ベースは語り、ギターは鋭く空間を切る。
即興性の高さがバンドのライブ的な魅力を伝える。
4. Witch Doctor
トリッキーな変拍子と不穏なコード感が、サイケデリックな魅力を放つ。
90年代以降のジャムバンド文化と親和性が高い一曲。
5. My Mind is Hazy
スローなファンクバラードで、ビートとホーンの揺らぎが心地よい。
のちにヴォーカルゲストを迎えて再演される機会も多い人気曲。
総評
『Coolin’ Off』は、Galacticの“始まり”を告げるアルバムでありながら、すでにそのスタイルは完成されている。
ニューオーリンズの土壌から生まれたファンクを、90年代の耳で再構築する試みとして、現代のリスナーにとっても新鮮に響く。
この作品の最大の魅力は、インストゥルメンタルでありながら“語るように鳴る”演奏である。
ボーカルが不在であっても、サックスやギター、ドラムがストーリーテラーとなり、リスナーの身体に直接語りかける。
Jelly Josephが加わった現在のGalacticは、よりソウルフルでボーカル・ドリブンなバンドへと進化しているが、その土台にある“Coolin’ Offのグルーヴ”を知ることで、バンドの音楽的軌道がより鮮明に見えてくるはずだ。
おすすめアルバム（5枚）
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The Meters / Rejuvenation
ニューオーリンズ・ファンクの源流。Galacticの音の根にあるDNA。 -
Lettuce / Crush
現代ファンクジャムの王道。Galacticと同じくインスト＋即興の融合。 -
Snarky Puppy / We Like It Here
ジャズ・ファンクの即興的極北。Galacticの進化形とも言えるスケール感。 -
Sharon Jones & The Dap-Kings / Naturally
ファンクとソウルのボーカル・パワー。Jelly Joseph期Galacticとの共振点が多い。 -
Galactic / Already Ready Already
Jelly Joseph参加以降の代表作のひとつ。『Coolin’ Off』との対照が興味深い。
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