発売日: 1966年10月15日
ジャンル: ソウル、R&B
Otis Reddingの全てが詰まったソウルの百科事典
1966年にリリースされたComplete & Unbelievable: The Otis Redding Dictionary of Soul（通称Dictionary of Soul）は、Otis Reddingのキャリアの中でも最も充実した内容を誇るアルバムであり、彼の歌唱力、楽曲の多様性、ソウルの真髄が凝縮された作品である。
本作は、彼のオリジナル曲とカバー曲がバランスよく収録され、アップテンポなダンスナンバーから切ないバラードまで幅広い楽曲が並ぶ。中でも、「Try a Little Tenderness」は、彼のキャリアを象徴する楽曲となり、ソウル・バラードの最高峰と評される。
バックを務めるのは、StaxレコードのハウスバンドBooker T. & the M.G.’sとメンフィス・ホーンズ。彼らのグルーヴィーな演奏とReddingの熱量あふれるヴォーカルが融合し、アルバム全体を通して圧倒的なエネルギーを生み出している。
全曲レビュー
1. Fa-Fa-Fa-Fa-Fa (Sad Song)
タイトル通り、「ファ・ファ・ファ…」というスキャットが特徴的な楽曲。シンプルながらも印象的なメロディとグルーヴィーなホーンセクションが際立ち、Reddingのソウルフルな歌唱が楽しめる。
2. I’m Sick Y’all
ヘヴィなホーンセクションとリズムセクションが際立つミディアムテンポのナンバー。Reddingのシャウトがダイナミックに響き、ファンク的な要素も感じられる一曲。
3. Tennessee Waltz
カントリーの名曲をソウル風に大胆アレンジ。Reddingの情熱的な歌唱と、哀愁を帯びたメロディが見事に融合し、彼の表現力の高さを証明している。
4. Sweet Lorene
エネルギッシュなリズムとホーンセクションが炸裂するアップテンポなナンバー。ダンスフロア向けの一曲で、彼の持つパワフルなソウルが存分に発揮されている。
5. Try a Little Tenderness
本作の最大のハイライトであり、Otis Reddingの代表曲のひとつ。穏やかに始まり、徐々に熱を帯び、最後には爆発的なエモーションへと昇華する構成が特徴的。彼のヴォーカルの表現力が極限まで発揮された、まさにソウル・バラードの金字塔。
6. Day Tripper
The Beatlesのヒット曲をカバー。原曲のロックなテイストを活かしつつ、ホーンとグルーヴィーなベースラインを加えたアレンジが施され、オリジナルとは異なる新たな魅力を持つ楽曲に仕上がっている。
7. My Lover’s Prayer
しっとりとしたバラードで、Reddingの優しく繊細な歌声が光る楽曲。ゴスペルの影響が色濃く、切ないメロディが心に沁みる。
8. She Put the Hurt on Me
ファンキーなリズムと疾走感のあるホーンが印象的なナンバー。Reddingの荒々しいヴォーカルと、力強いバンドサウンドが絡み合う。
9. Ton of Joy
ブルージーな要素を取り入れた楽曲で、ギターとホーンの絡みが心地よい。ミディアムテンポながら、力強いグルーヴが感じられる。
10. You’re Still My Baby
ジャズの影響を感じさせるバラードで、Reddingのバリトンヴォイスが魅力的。メロディの美しさが際立つ一曲。
11. Hawg for You
ファンキーで軽快なリズムのアップテンポナンバー。彼の遊び心のあるヴォーカルと、バンドのノリの良い演奏が印象的。
12. Love Have Mercy
アルバムのラストを飾る情熱的な楽曲。リズムセクションのダイナミックな演奏と、Reddingのエモーショナルな歌唱が印象的。
総評
Complete & Unbelievable: The Otis Redding Dictionary of Soulは、Otis Reddingの音楽的多様性と、彼の圧倒的な表現力が凝縮された作品である。アップテンポのソウル、ブルージーなナンバー、ジャジーなバラード、さらにはロックやカントリーの要素を取り入れた楽曲まで、幅広いスタイルの楽曲が収録されており、まさに「ソウルの百科事典」と呼ぶにふさわしい内容となっている。
特に「Try a Little Tenderness」は、ソウルミュージック史に残る名演であり、Reddingのヴォーカルが持つダイナミズムとエモーションの究極形ともいえる。アルバム全体を通して、彼のエネルギー、感情の奥深さ、音楽に対する情熱が伝わってくる。
このアルバムは、Reddingの音楽を初めて聴く人にも、彼の深い世界に浸りたい人にもおすすめの一枚であり、ソウルミュージックの真髄を知るための必聴盤である。
おすすめアルバム
- Otis Redding – Otis Blue: Otis Redding Sings Soul (1965)
- Reddingのソウルシンガーとしての成熟を示すアルバム。
- Aretha Franklin – Lady Soul (1968)
- 女性ソウルのパワーを体感できるアルバム。「Chain of Fools」など名曲多数。
- Sam Cooke – Live at the Harlem Square Club, 1963 (1985)
- Reddingに影響を与えたサム・クックのライブアルバム。情熱的なパフォーマンスが圧巻。
- Wilson Pickett – The Wicked Pickett (1966)
- Reddingと並ぶソウル界のレジェンド、Wilson Pickettのエネルギッシュな名盤。
- Al Green – Let’s Stay Together (1972)
- 70年代のスムーズなソウルへと繋がる名作。ロマンティックなソウルが好きな人におすすめ。
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