
発売日: 2007年2月20日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、エモ、ポストハードコア
Anberlinの最高到達点——叙情と激情が交錯する傑作アルバム
Anberlinの3rdアルバムCitiesは、バンドのキャリアの中でも最も評価の高い作品の一つであり、エモ・オルタナティブ・ロックシーンにおける名盤として知られている。
前作Never Take Friendship Personal(2005年)で確立したキャッチーでありながらもヘヴィなロックサウンドをさらに洗練させ、ダークで壮大な要素を取り入れたアルバムとなっており、楽曲の幅が大きく広がっている。
また、スティーブン・クリスチャン(Vo)の表現力はさらに向上し、エモーショナルなシャウトから繊細なバラードまで、多彩なボーカルスタイルを披露している。歌詞のテーマも深まり、都市(Cities)というタイトルが象徴するように、人生の旅路や自己探求、人間関係の喪失と再生が描かれている。
本作には「Godspeed」「The Unwinding Cable Car」「Dismantle.Repair.」といったバンドの代表曲が収録されており、Anberlinが単なるエモ・バンドではなく、より洗練されたアーティスティックな方向へと進化したことを示す作品となった。
全曲レビュー
1. (Début)
アルバムのオープニングを飾る静かなインストゥルメンタルトラック。次の「Godspeed」への流れを作り出す、シネマティックなイントロ。
2. Godspeed
アルバムの幕開けを告げる、エネルギッシュなロックナンバー。ヘヴィなギターリフとスティーブン・クリスチャンのシャウトが炸裂し、アルバム全体の緊張感とダークな雰囲気を決定づける。
3. Adelaide
キャッチーなメロディとドライビング・ビートが特徴的な楽曲。「アデレード(Adelaide)」という女性の名前がタイトルになっているが、歌詞では過去の人間関係の喪失や孤独がテーマとなっている。
4. A Whisper & A Clamor
シンセサイザーを取り入れた実験的な楽曲で、バンドの新たなアプローチが感じられる。ダイナミックな展開と、静と動のコントラストが印象的。
5. The Unwinding Cable Car
本作の中でも最も有名な楽曲の一つで、アコースティックギターを基調としたバラード。スティーブン・クリスチャンの繊細なボーカルと、メロディの美しさが際立つ。エモという枠を超えた、普遍的な魅力を持つ一曲。
6. There Is No Mathematics to Love and Loss
オルタナティブ・ロックの要素が強い楽曲で、激しいギターリフとドラマチックな展開が特徴的。タイトルが示すように、恋愛の不確実性と感情の揺らぎをテーマにしている。
7. Alexithymia
タイトルの「Alexithymia(失感情症)」は、感情を言葉で表現することが困難な状態を指す心理学用語。この楽曲では、感情を抑え込んでしまう現代社会の孤独を描いている。メロディの浮遊感とシンセの使い方が独特。
8. Reclusion
ヘヴィなギターリフとダークな雰囲気が特徴的な楽曲。歌詞では「世間との隔絶」や「人間関係の破綻」といったテーマが描かれ、アルバムの中でも特に緊張感のある楽曲となっている。
9. Inevitable
ロマンティックなバラードで、「運命的な愛」をテーマにした楽曲。スティーブン・クリスチャンの歌声が際立つ、エモーショナルかつ美しいメロディが魅力的な一曲。
10. Dismantle.Repair.
本作の中でも最も感情的で、Anberlinの代表曲の一つ。「修復(Repair)」をテーマにした歌詞は、人間関係の崩壊と再生を象徴し、リスナーの共感を呼ぶ。楽曲の盛り上がり方が見事で、ライブでもファンに愛される楽曲。
11. (*Fin)
アルバムのラストを飾る7分以上に及ぶ壮大なバラード。ストリングスが加わり、映画のエンディングのような感動的なクライマックスを迎える。スティーブン・クリスチャンのボーカルは、ここで最大限の感情を解放し、アルバムを締めくくるにふさわしいスケール感を持っている。
総評
Citiesは、Anberlinのキャリアにおいて最も完成度が高く、音楽的にも成熟したアルバムである。
本作は、エモやポップパンクの枠を超え、シンセやストリングスを取り入れたダイナミックな楽曲構成と、壮大なスケール感を持つ作品へと進化している。また、歌詞のテーマもより深く、「都市(Cities)」という象徴的なタイトルが示すように、人生の旅路、人間関係の喪失と再生、孤独と希望が交錯する。
特に「The Unwinding Cable Car」「Dismantle.Repair.」「(*Fin)」といった楽曲は、エモ・オルタナティブ・ロックの枠を超え、普遍的な感情を描いた名曲として、長年にわたって愛され続けている。
本作の成功によって、Anberlinはオルタナティブ・ロックシーンの中で確固たる地位を築き、次作New Surrender(2008年)ではさらなるメインストリームへの進出を果たすこととなる。
Citiesは、2000年代のエモ・オルタナティブ・ロックを象徴する作品の一つであり、Anberlinの最高傑作の一つとして今なお輝き続けるアルバムである。
おすすめアルバム
- Jimmy Eat World – Chase This Light (2007)
エモとオルタナティブ・ロックの融合が、本作と共鳴する。 - Thrice – The Alchemy Index Vols. I & II (2007)
静と動のバランス、深い歌詞が本作と似ている。 - Further Seems Forever – How to Start a Fire (2003)
メロディックでエモーショナルなオルタナロックが本作と共通。 - Mae – Singularity (2007)
シンセとオルタナロックの融合が本作とリンク。 - Paramore – Riot! (2007)
エネルギッシュなサウンドとエモーショナルな歌詞が共鳴する作品。
コメント