アルバムレビュー：Carnivale Electricos by Galactic

発売日: 2012年2月21日
ジャンル: ファンク、マルディグラ・ミュージック、アフロブラジリアン、ブラス・バンド、エレクトロ・ファンク

概要
全曲レビュー（主要トラック抜粋）
総評
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概要

『Carnivale Electricos』は、Galacticが2012年にリリースしたコンセプト・アルバムであり、ニューオーリンズのマルディグラ（Mardi Gras）とブラジルのカーニバルを音楽で接続した、祝祭的かつ文化横断的なファンク交響詩である。

Jelly Joseph（Anjelika ‘Jelly’ Joseph）はこの時点ではまだバンドに正式加入していないが、彼女が後年表現する“声の熱狂”や“女性的パワー”の礎がこの作品に潜んでいる。
このアルバムでは、ニューオーリンズの伝統音楽、ブラス・バンド、ヒップホップ、そしてサンバやアフロブラジリアンのビートが融合し、南北アメリカの黒人文化圏をつなぐサウンドの祝祭空間が出現している。

ゲストにはMardi Gras Indians、Al “Carnival Time” Johnson、Mardi Gras大定番のBig Chief Juan Pardo、さらにはブラジルの伝説的アーティストCarlinhos Brownらが名を連ねており、祝祭のリアリティとトランス状態を音で実現した異色作でもある。

全曲レビュー（主要トラック抜粋）

1. Ha Di Ka (feat. Big Chief Juan Pardo & The Golden Comanche)

インディアン・チャントとブラス・ファンクが交錯する、マルディグラ開幕の咆哮。
歴史と精神性が同居するパーカッシブなナンバー。
Jelly Joseph加入後の“儀式性あるボーカル”にも共鳴する空気感。

2. Hey Na Na (feat. David Shaw & Maggie Koerner)

ソウルとポップの中間を行くエネルギッシュな一曲。
後年、Maggie KoernerのパートをJellyがライブで歌い継ぐようになり、彼女のライブ・ハイライト楽曲のひとつにもなっている。
Jellyの表現力の幅を象徴するルーツ的トラック。

3. Magalenha (feat. Carlinhos Brown)

ブラジルのカーニバル精神が爆発する、Carlinhos Brownの代表曲カバー。
Galacticはこの楽曲でサンバとファンクを大胆にミックスし、リズムの海に飲まれるような快楽性を表現。
多言語的・多文化的サウンドの中に、Jellyのような“多次元的ボーカル”が将来的に不可欠になる予感が漂う。

4. Move Fast (feat. Mystikal & Mannie Fresh)

ヒップホップ meets マルディグラ！
Mannie FreshのプロダクションとMystikalの野性味あふれるラップが、ブラスと共に跳ねる。
クラブとパレードが混ざり合う異常なテンション。

5. Voyage Ton Flag (feat. Cyril & Ivan Neville)

ネヴィル家の血統が参加するソウル・ファンク・ナンバー。
ニューオーリンズの黒人誇りと歴史が、現代ファンクのテンポで鳴らされる。
Jellyのソウルフルな表現と交錯する“語り継ぎの音楽”。

6. JuLou

ブラスバンドと打楽器の応酬によるインストゥルメンタル。
まるで夜明けのパレードに出会ったような、サイケデリックな躍動が印象的。
Jelly期のライブでも、彼女のシャウトを交えたアレンジで演奏されることがある。

総評

『Carnivale Electricos』は、Galacticがマルディグラとカーニバルという“世界最大級の祝祭”をファンクの言語で語り直した、文化横断型コンセプト・アルバムの傑作である。

音の中にあるのは単なる楽しさではなく、祝祭に込められた怒り、誇り、哀悼、再生の感情。
その情熱とエネルギーを、Jelly Josephという歌い手は後に全身で受け継ぎ、現在のGalacticにおける“魂の化身”となっていく。

このアルバムを聴くことは、Jelly期Galacticの声の源流をたどる旅でもある。
“電化された祝祭”という異名を持つこの作品は、まさにGalacticの精神的マイルストーンと呼ぶにふさわしい。