
発売日: 1983年4月29日
ジャンル: ニューウェーブ、ポップロック、レゲエロック
ニューウェーブの進化と洗練—Men at Workのさらなる飛躍を遂げた2ndアルバム
1983年にリリースされたCargoは、Men at Workの2作目のスタジオアルバムであり、デビュー作Business as Usual(1981年)の成功を引き継ぎながらも、より洗練されたサウンドへと進化した作品である。本作からは、「Overkill」「It’s a Mistake」「Dr. Heckyll & Mr. Jive」といったヒット曲が生まれ、バンドの人気をさらに確立した。
本作では、ニューウェーブの要素をベースにしつつ、レゲエ、ポップロック、ジャズの影響を強めた楽曲が増え、バンドの音楽的な幅が広がっている。また、前作よりも社会的なテーマを深く掘り下げた歌詞が増え、Cold War(冷戦)の不安や政治的メッセージを含んだ楽曲も多い。
Colin Hayの個性的なボーカルと、Greg Hamの印象的なサックス&フルートが引き続きバンドのサウンドを象徴し、キャッチーなメロディと皮肉の効いた歌詞が絶妙に組み合わさった作品となっている。
全曲レビュー
1. Dr. Heckyll & Mr. Jive
ユーモラスでエネルギッシュなオープニングトラック。
タイトルは「ジキル博士とハイド氏」のもじりで、人間の二面性や社会の欺瞞をテーマにした歌詞が特徴。スウィングジャズ風のリズムと、Greg Hamの印象的なサックスが楽しい雰囲気を作り出している。
2. Overkill
本作の最大のヒット曲であり、Men at Workの代表曲のひとつ。
シンプルなギターリフとシンセサイザーが絡み合い、都会の孤独やプレッシャーを描いたエモーショナルな楽曲となっている。Colin Hayの伸びやかなボーカルと、Greg Hamのサックスソロが印象的で、ニューウェーブロックの名曲として今も愛されている。
3. Settle Down My Boy
アコースティックギターが中心の、温かみのあるミッドテンポの楽曲。夢を追う若者に向けたメッセージが込められた歌詞が印象的。
4. Upstairs in My House
シンプルなポップロックナンバーで、軽快なリズムとストーリーテリングのある歌詞が特徴的な楽曲。
5. No Sign of Yesterday
美しいメロディと、感傷的な歌詞が際立つバラード。
「過去の影が今も心に残る」といったテーマを持ち、シリアスな雰囲気が漂う。バンドの成熟した一面を感じさせる楽曲。
6. It’s a Mistake
政治的なメッセージを含んだ楽曲で、冷戦時代の核戦争の脅威を風刺した歌詞が特徴的。
レゲエ調のビートとキャッチーなメロディが融合し、メッセージ性の強い楽曲でありながらも聴きやすい仕上がりとなっている。
7. High Wire
スピード感のあるニューウェーブロックナンバー。社会の混乱や個人の不安をテーマにした歌詞が、勢いのあるサウンドに乗せられている。
8. Blue for You
ジャズの要素が強い楽曲で、Greg Hamのサックスが楽曲のムードを作り出している。ブルースやスウィングの影響を感じるリラックスしたトラック。
9. I Like To
ユーモラスで軽快なリズムを持つポップソング。日常生活の楽しさをテーマにした陽気な楽曲で、バンドの遊び心が感じられる。
10. No Restrictions
アルバムを締めくくるアップテンポな楽曲で、自由と解放をテーマにしたポジティブなメッセージが込められている。ラストにふさわしい、エネルギッシュなトラック。
総評
Cargoは、Men at Workがデビュー作の成功を経て、より音楽的に洗練され、テーマ性を強めたアルバムとなっている。「Overkill」や「It’s a Mistake」など、ニューウェーブのポップな側面と、シリアスなメッセージを兼ね備えた楽曲が際立つ作品であり、バンドの代表作として高く評価されている。
本作の特徴として、前作Business as Usual(1981年)よりも、政治的・社会的なメッセージが色濃くなった点が挙げられる。冷戦の時代背景を反映した「It’s a Mistake」や、都市生活の孤独を描いた「Overkill」など、単なるキャッチーなポップソングだけでなく、深いメッセージを持つ楽曲が増えた。
サウンド面では、ニューウェーブのポップな要素を維持しつつ、レゲエやジャズの影響を取り入れた楽曲が増え、バンドの音楽的な幅が広がった。Colin Hayの独特のボーカルスタイルと、Greg Hamのサックスやフルートのプレイが引き続きバンドのアイデンティティを形成し、彼らの音楽を唯一無二のものにしている。
Men at Workのキャリアの中でも、Cargoは「ポップなメロディとシリアスなメッセージが融合した、ニューウェーブ時代の名盤」として、多くのファンに愛され続けている。
おすすめアルバム
- Men at Work – Business as Usual (1981)
- デビュー作であり、よりポップでニューウェーブ色が強い作品。「Down Under」「Who Can It Be Now?」収録。
- The Police – Synchronicity (1983)
- レゲエとロックを融合させたニューウェーブの名盤。「Every Breath You Take」収録。
- INXS – Listen Like Thieves (1985)
- オーストラリアのニューウェーブバンドの代表作。ロックとポップの融合が本作と類似。
- Duran Duran – Seven and the Ragged Tiger (1983)
- 80年代ニューウェーブのアイコニックな作品で、メロディのキャッチーさが共通する。
- Tears for Fears – The Hurting (1983)
- ニューウェーブとポップのバランスが絶妙な作品で、社会的メッセージを持つ楽曲が多い。
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- ニューウェーブとポップのバランスが絶妙な作品で、社会的メッセージを持つ楽曲が多い。
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