発売日: 2020年9月25日
ジャンル: オルタナティブロック / ノイズロック / ポストロック
By the Fireは、Thurston Mooreが2020年にリリースしたソロアルバムであり、彼の音楽的探求心が最高潮に達した作品だ。Sonic Youthでのノイズロックの遺産を受け継ぎながら、ポストロックやアートロック的な要素を加えた深みのあるサウンドスケープが展開されている。アルバム全体を通じて、彼のギターが中心的な役割を果たし、緻密なアレンジと即興的なエネルギーが絶妙に交錯している。
本作では、Thurstonが率いるバンドが圧倒的なケミストリーを発揮。James Sedwardsのギター、Deb Googeのベース、そしてSteve Shelleyを含む複数のドラマーが、サウンドに豊かな層を加えている。テーマ的には、愛、希望、再生、そして現代社会への静かな抵抗が表現され、全編を通じて叙情的かつ激しいダイナミズムが感じられる。
トラック解説
1. Hashish
アルバムのオープニングを飾る楽曲で、明るく躍動的なギターリフが印象的。リズミカルでキャッチーな展開があり、アルバム全体のトーンを設定する。
2. Cantaloupe
反復的なギターリフと緩やかなテンポが特徴的なトラック。浮遊感のあるメロディが、聴き手を穏やかな精神状態に導く。
3. Breath
約9分の長尺トラックで、緊張感のあるギターと徐々に高まるビルドアップが特徴。複雑な構成がアルバムの中でも際立っている。
4. Siren
鋭いギターリフと詩的な歌詞が絡み合う楽曲。ノイズとメロディが対比をなす構成が、Thurstonの独自のスタイルを象徴している。
5. Calligraphy
叙情的で控えめな楽曲。静と動が交錯する展開があり、繊細なギターワークが際立つ。
6. Locomotives
16分を超えるアルバムの中心的なトラックで、ギターのリフと反復が全体を支配する。ジャムセッションのような自由な構成が魅力的で、アルバムのハイライトとなっている。
7. Dreamers Work
シンプルなアコースティックギターが基調となる楽曲で、穏やかな雰囲気がアルバムの中で一息つける瞬間を提供する。
8. They Believe in Love [When They Look at You]
エモーショナルなボーカルと複雑なギターワークが絡み合うトラック。愛と希望をテーマにした歌詞が印象的。
9. Venus
アルバムのラストを飾る楽曲で、壮大なサウンドスケープとゆったりとしたテンポが特徴。美しい余韻を残しながら、アルバムを締めくくる。
アルバム総評
By the Fireは、Thurston Mooreが音楽的探求を続ける中で生まれた、挑戦的で壮大なアルバムだ。長尺の楽曲や反復的なリフが特徴的であり、彼のギターが織りなすサウンドスケープは、深い没入感を提供する。ノイズとメロディ、激しさと静けさの絶妙なバランスが全編にわたり見事に描かれている。
特に「Locomotives」や「Breath」のような楽曲は、彼の即興的な感覚とバンドの結束力が最大限に発揮されており、リスナーに圧倒的な体験を提供する。本作は、ノイズロックやポストロックのファンだけでなく、アートロックや実験音楽に興味を持つリスナーにとっても楽しめる作品だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Daydream Nation by Sonic Youth
Thurston Mooreが所属していたSonic Youthの代表作で、ノイズとメロディの融合が楽しめる。
To Be Kind by Swans
長尺の楽曲と反復的な構成が特徴のアルバムで、By the Fireのスケール感に共通点がある。
The Seer by Swans
ポストロックと実験音楽の要素を取り入れた壮大な作品で、深い没入感が得られる。
Loveless by My Bloody Valentine
Deb Googeが参加している作品で、ノイズとドリーミーなサウンドのバランスが絶妙。
Hex; Or Printing in the Infernal Method by Earth
アンビエントとドローンを取り入れたアルバムで、By the Fireの静かな側面に響く作品。
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