アルバムレビュー：…But the Little Girls Understand by The Knack

発売日: 1980年2月15日
ジャンル: パワーポップ、ロック

成功のプレッシャーと急ぎすぎた2ndアルバム

1979年のデビューアルバム Get the Knack で**「My Sharona」** を生み出し、一気にスターとなった The Knack。しかし、その急激な成功が裏目に出た2ndアルバム が、1980年にリリースされた …But the Little Girls Understand だ。

このアルバムは、デビュー作からわずか8か月後にリリースされ、前作の流れを引き継いだパワーポップ路線を維持しているものの、新鮮味や楽曲の完成度で前作を超えることはできなかった。そのため、商業的にも批評的にも前作ほどの評価を得られず、「The Knackは一発屋だったのか？」という議論を巻き起こすこととなる。

しかしながら、本作には「Baby Talks Dirty」や「Can’t Put a Price on Love」など、前作のエネルギーを継承しつつ、よりワイルドでラフな雰囲気を持つ楽曲も収録されており、単なる失敗作とは言い難い。むしろ、「Get the Knack」の成功の影に隠れた、パワーポップファンには聴きどころの多いアルバム とも言える。

全曲レビュー

1. Baby Talks Dirty

アルバムのリードシングルで、「My Sharona」に似たグルーヴ感とリフ を持つ楽曲。しかし、前作のヒットを狙いすぎた感があり、オリジナリティには欠ける。それでも、荒々しいギターとDoug Fieger のエネルギッシュなボーカルは健在。

2. I Want Ya

疾走感のあるロックンロールナンバー。The Knack らしいポップなメロディとキャッチーなサビが印象的。

3. Tell Me You’re Mine

ミドルテンポのナンバーで、ややThe Beatles の影響を感じさせる楽曲。

4. Mr. Handleman

カントリーやフォークの要素を持つ異色の楽曲。シンプルなメロディとリズムが際立つ。

5. Can’t Put a Price on Love

バンドにしては珍しいバラード風の楽曲 で、Doug Fieger のエモーショナルなボーカルが光る。アルバムの中では新しいアプローチが感じられる楽曲のひとつ。

6. Hold on Tight and Don’t Let Go

ブルースロック的な要素を取り入れたナンバーで、前作のサウンドからの変化を感じさせる。

7. The Hard Way

The Kinks のカバーで、オリジナルへのリスペクトを感じさせるロックンロールナンバー。

8. It’s You

シンプルでストレートなロックナンバー。印象的なギターリフとシンプルなメロディが特徴的。

9. End of the Game

このアルバムの中では比較的実験的な楽曲で、サイケデリックな要素も含んでいる。

10. The Feeling I Get

ラブソング風のポップナンバーで、前作に近い雰囲気を持つ。

11. (Havin’ a) Rave Up

ロックンロールの王道的な楽曲で、ライブ映えしそうなエネルギッシュなナンバー。

12. How Can Love Hurt So Much

アルバムのラストを飾るバラード風のナンバー。Doug Fieger のソウルフルなボーカルが際立つ。

総評

…But the Little Girls Understand は、前作の成功に追いつこうとしたが、結果的に急ぎすぎた2ndアルバム である。前作 Get the Knack のような爆発的なエネルギーや、キャッチーなヒット曲には欠けるが、それでもパワーポップとしての魅力は十分にある。

特に、「Baby Talks Dirty」や「Can’t Put a Price on Love」は、The Knack のワイルドな一面を引き出した楽曲 であり、バンドが持つロックンロールの本質を感じることができる。一方で、前作の二番煎じのような楽曲も多く、結果として The Knack の急激な衰退を加速させる要因となった。

おすすめのリスナー:

「My Sharona」以外の The Knack の音楽を掘り下げたい人
パワーポップの歴史に興味がある人
The Kinks や Cheap Trick のようなバンドが好きな人

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成功のプレッシャーと急ぎすぎた2ndアルバム