
発売日: 2003年5月6日
ジャンル: オルタナティブ・ロック、ポップパンク、エモ
青写真からの飛躍——Anberlinの原点となるエネルギッシュなデビュー作
2003年にリリースされたAnberlinのデビューアルバムBlueprints for the Black Marketは、メロディックなポップパンクとオルタナティブ・ロックの要素を融合させた、バンドのキャリアの礎となる作品である。
このアルバムは、後の彼らの代表作となるNever Take Friendship Personal(2005年)やCities(2007年)のような洗練されたサウンドとは異なり、より生々しく、エネルギッシュなギターリフとストレートなメロディを特徴とする。
ヴォーカルのStephen Christianの伸びやかな歌声と、エモーショナルな楽曲が相まって、2000年代初頭のエモ/オルタナシーンの中で確かな存在感を示した。ポップなメロディと攻撃的なギターサウンドのバランスが絶妙で、シンプルながらも心に残る楽曲が詰まっている。
全曲レビュー
1. Readyfuels
アルバムの幕開けにふさわしい、アップテンポなロックナンバー。パワフルなギターと疾走感のあるドラムが特徴で、「心の燃料は準備万端だ」というタイトルの通り、バンドのスタートを象徴するエネルギッシュな楽曲。
2. Foreign Language
ポップパンク的なノリの良さが際立つ楽曲。キャッチーなメロディとコーラスが特徴で、ライブでの盛り上がりが期待できる一曲。
3. Change the World (Lost Ones)
エモーショナルなリリックと、ダイナミックな展開が印象的なミドルテンポの楽曲。「世界を変えたい」と願うストレートなメッセージが込められており、若者の葛藤と希望を描いている。
4. Cold War Transmissions
ギターリフが際立つ、クールなオルタナティブロック。タイトルが示すように、感情のすれ違いや孤独感をテーマにした歌詞が、楽曲の緊張感を高めている。
5. Glass to the Arson
攻撃的なギターとエネルギッシュなビートが特徴の楽曲。特にサビのシャウト気味のボーカルが、バンドの持つパンク的なエネルギーを強調している。
6. The Undeveloped Story
ポップなメロディと軽快なリズムが際立つ楽曲。青春の未完成な物語をテーマにした歌詞が、アルバム全体のテーマともリンクしている。
7. Autobahn
タイトルはドイツの高速道路を意味するが、楽曲はむしろ切ないバラードに近い。スローテンポで感傷的な雰囲気を持ち、アルバムの中でも異色の楽曲となっている。
8. We Dreamt in Heist
クリーンなギターとエモーショナルなボーカルが特徴的な楽曲。サビのメロディの美しさが際立つ。
9. Love Song (The Cure Cover)
The Cureの名曲「Love Song」をカバー。Anberlinらしいポップパンク的なアレンジが施され、原曲とはまた違ったエネルギッシュな仕上がりになっている。
10. Cadence
アルバムの中でも特にエモーショナルな楽曲。心に響くメロディと、シンプルながらも心を打つ歌詞が印象的。
11. Naïve Orleans
アルバムを締めくくる、切なくも美しいバラード。静かなギターのアルペジオとStephen Christianの繊細なボーカルが、余韻を残す。アルバム全体の流れを締めくくるのにふさわしい一曲。
総評
Blueprints for the Black Marketは、Anberlinの原点となるアルバムであり、彼らの持つメロディックなセンスとエネルギッシュなサウンドが詰まった作品である。
本作は、後のアルバムほどの洗練されたアレンジや深みはないものの、純粋な勢いと熱量が感じられる。ポップパンクとオルタナティブ・ロックの中間に位置するスタイルで、当時のJimmy Eat World、Further Seems Forever、The Juliana Theoryといったバンドとも共鳴するサウンドを持っている。
また、The Cureのカバー「Love Song」など、バンドの音楽的ルーツを感じさせる要素もあり、Anberlinというバンドの方向性を示す青写真(Blueprints)となる作品であることがわかる。
2000年代初頭のエモやポップパンクシーンの熱気を体験したい人には、ぜひ聴いてほしいアルバムであり、ここから始まるAnberlinの進化を知る上でも重要な作品である。
おすすめアルバム
- Jimmy Eat World – Bleed American (2001)
メロディアスなオルタナティブロックとエモの要素が、本作と共鳴する。 - Further Seems Forever – The Moon Is Down (2001)
エモーショナルなメロディとポップパンクの疾走感を持つ作品。 - The Juliana Theory – Emotion Is Dead (2000)
ポストハードコアとエモの融合が、Anberlinのサウンドと共通する。 - Taking Back Sunday – Tell All Your Friends (2002)
エモとポストハードコアの影響を受けた、同時期の重要作品。 - Hawthorne Heights – The Silence in Black and White (2004)
2000年代のエモシーンにおける象徴的なアルバムで、本作と似た感情的なアプローチを持つ。
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