アルバムレビュー:Blasting Off by Red Lorry Yellow Lorry

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日: 1991年
ジャンル: オルタナティヴ・ロック、ポストパンク、ゴシック・ロック

概要

『Blasting Off』は、Red Lorry Yellow Lorryが1991年に発表した5作目にして、バンドの“第一章”を締めくくるラスト・アルバムである。
本作は、前作『Blow』(1989年)で顕著になったメロディ重視・感情表現の開放路線をさらに推し進めた作品であり、ポストパンク由来のミニマリズムと、90年代的なオルタナティヴ感覚が交差する、バンド史上最も“流動的”な音像を持つ。

タイトルの「Blasting Off(発射・飛び立つ)」は、本来であれば新たなスタートを示唆するような言葉だが、実際には過去との決別、音楽スタイルの漂流、そして活動停止へと向かう“終わりの予兆”がにじむ。
Chris Reedはこのアルバムの制作直後、バンド名義での活動を一時凍結。PILやThe Fallと並ぶUKポストパンクの硬派な象徴だったRed Lorry Yellow Lorryは、ここでひとまず幕を閉じることとなる。

サウンド面では、ギターの重ね方やリズムの柔軟性が強化され、初期の殺伐としたミニマル・アプローチから脱却。
ただし、ライドン的冷笑やJoy Division的な虚無を抱えるヴォーカル・スタイルは健在であり、“構造の変化”と“本質の維持”が同居するアルバムとなっている。

全曲レビュー

1. This Is

自己定義を掲げるようなタイトルだが、実際の曲調は内省的。
繰り返される「This is who I am」というリリックの裏に、迷いや不確かさが漂う。
軽やかなギターのコーラスと、浮遊感あるドラムが象徴的。

2. Talking Back

前作にも登場したタイトルだが、よりアグレッシブで構築的な再解釈がなされている。
“言い返す”という行為の不毛さと必要性がテーマで、硬質なギターが会話の衝突を音で描く。
メロディの存在感も強く、アルバム中でも特に洗練された一曲。

3. Down on Ice

『Blow』に続いて再収録された楽曲。
氷の上というイメージが象徴するのは、危うさと冷たさ、そして滑り落ちる寸前の緊張感。
音数は少ないが、空間を巧みに使った演出が印象深い。

4. Sea of Tears

哀愁と浄化が交差するバラッド的楽曲。
Chris Reedの声はいつになく感情的で、ヴォーカル・ラインがメロディを優しく導く。
ギターはアルペジオ中心で、波のように穏やかに押し寄せる。

5. Train of Hope

これまでの「Last Train」「Hope」など、列車をモチーフにした過去曲との連続性を感じさせるタイトル。
しかし今回は、“破滅への列車”ではなく、“かすかな希望を積んだ列車”として描かれている。
軽快なリズムに乗せて語られる控えめな楽観。

6. Torn Apart

アルバム中最もエモーショナルで、インダストリアル的な緊張感も取り戻した1曲。
ギターは不穏なディストーションを響かせ、ドラムはミリタリックなビートを刻む。
リリックは“引き裂かれる心”を描写しながら、決して感情に溺れない冷静さも保つ。

7. This Is Energy

前作でも登場したキーワード的トラックが、より重厚な再構築を経て登場。
リズムはダンサブルで、ベースのドライヴ感が際立つ。
“エネルギー”という言葉の持つ、生と死の両義性を表現している。

8. Talking

『Talking Back』のバリエーションとも解釈できる静かなナンバー。
“対話”という概念が、もはや成立し得ないものとして語られる。
エコー処理されたボーカルが、まるで“声の亡霊”のように浮遊する。

9. This is the Way

アルバムの終盤に配された、自伝的とも取れるトラック。
ミッドテンポのビートに乗せて、「これが俺のやり方だ」と繰り返す語り口が印象的。
これは主張ではなく、静かな諦観とともに吐き出された“自己確認”に近い。

10. Blow

最後を飾るのは、前作タイトルを冠した謎めいたクロージング・ナンバー。
これまでの音のすべてが風に吹かれて消えていくかのような浮遊感。
決して劇的な幕引きではないが、そこにこそRed Lorry Yellow Lorryらしい“美学としての静けさ”がある。

総評

『Blasting Off』は、Red Lorry Yellow Lorryが自らの美学と方法論をすべて検証し、変化させ、それでも壊さなかったアルバムである。
それは終焉の予兆を含みながらも、決して悲観に沈まず、むしろ音楽という行為を再定義する穏やかな意志表明のように響く。

初期の攻撃性と沈黙の圧力。中期の構造的整合。後期の情感と音響性。
それらをすべて包含したこのアルバムは、Red Lorry Yellow Lorryという“形なき肖像”の集大成ともいえる。
彼らはここで爆発的に飛び立ったのではなく、“静かに自らの内部へと着地”したのである。

おすすめアルバム(5枚)

  • Catherine Wheel / Ferment
     90年代UKの哀愁とギター・レイヤーが共鳴する傑作。

  • For Against / Aperture
     抑制された感情と透明感が、同質の美しさを持つ作品。

  • The Sound / Thunder Up
     ポストパンクの終末と再生を描いた、内省的最終作。

  • Comsat Angels / Fire on the Moon
     後期作におけるメロディと構成の柔軟性が近い。

  • Echo & The Bunnymen / Reverberation
     変化と継承、声の存在感が際立つ後期的ポストパンク。

コメント

タイトルとURLをコピーしました