発売日: 1994年6月21日
ジャンル: ローファイ・インディーロック、パワーポップ、ガレージロック
- ローファイ・インディーロックの金字塔——Guided by Voicesが生んだDIYの傑作
- 全曲レビュー
- 1. Hardcore UFOs
- 2. Buzzards and Dreadful Crows
- 3. Tractor Rape Chain
- 4. The Goldheart Mountaintop Queen Directory
- 5. Hot Freaks
- 6. Smothered in Hugs
- 7. Yours to Keep
- 8. Echos Myron
- 9. Gold Star for Robot Boy
- 10. Awful Bliss
- 11. Mincer Ray
- 12. A Big Fan of the Pigpen
- 13. Queen of Cans and Jars
- 14. Her Psychology Today
- 15. Kicker of Elves
- 16. Ester’s Day
- 17. Demons Are Real
- 18. I Am a Scientist
- 19. Peep-Hole
- 20. You’re Not an Airplane
- 総評
- このアルバムが好きな人におすすめの5枚
ローファイ・インディーロックの金字塔——Guided by Voicesが生んだDIYの傑作
1994年、オハイオ州デイトン出身の**Guided by Voices（GBV）**は、ローファイ・インディーロックの決定的名盤『Bee Thousand』をリリースした。安価な4トラック・レコーダーを使い、自宅で録音されたこのアルバムは、荒削りなサウンドと圧倒的な楽曲の多様性で、ローファイ・ロックの美学を確立した作品として、今なお多くのアーティストに影響を与えている。
GBVは、元教師であるロバート・ポラードを中心に結成されたバンドで、80年代から活動していたものの、長らく無名の存在だった。しかし、本作で彼らの評価は一変し、インディー・ロック・シーンの最前線に躍り出ることとなる。
当時の主流は、Nirvanaを筆頭とするグランジやオルタナティブ・ロックだったが、GBVはザ・フー、ザ・ビートルズ、バズコックス、R.E.M.といったクラシックなポップ／ロックのエッセンスをDIY精神で再構築し、独自のローファイ・サウンドを確立した。
短くキャッチーな楽曲、シュールな歌詞、ノイズ混じりの録音、そしてポップなメロディ。これらの要素が絶妙に組み合わさり、『Bee Thousand』は90年代インディーロックのマスターピースとして語り継がれている。
全曲レビュー
1. Hardcore UFOs
アルバムの幕開けを飾る、エネルギッシュなガレージロックナンバー。ザラついたギターとシンプルなメロディが、GBVの世界へとリスナーを引き込む。
2. Buzzards and Dreadful Crows
メロディアスなパワーポップ・チューン。60年代のブリティッシュ・インヴェイジョンを思わせる楽曲構成で、GBVのクラシカルなポップセンスが光る。
3. Tractor Rape Chain
アルバムのハイライトのひとつ。切なくも力強いメロディと、ざらついたローファイ録音が絶妙にマッチしており、多くのファンが「GBVの最高傑作」と評する名曲。
4. The Goldheart Mountaintop Queen Directory
アコースティックギターの響きが美しいミディアム・テンポの曲。デモ音源のような荒々しさの中に、驚くほど洗練されたポップメロディが隠れている。
5. Hot Freaks
シュールな歌詞とファズの効いたギターリフが特徴的な曲。ポラードのボーカルが妙にクセになる、GBVらしいトラック。
6. Smothered in Hugs
エモーショナルなコード進行が印象的なナンバー。GBVの中では比較的整ったサウンドプロダクションで、ローファイながらもエピックな雰囲気を持つ。
7. Yours to Keep
短いながらも、どこか懐かしさを感じさせる曲。GBVの楽曲の多くが1〜2分で終わるが、ここにも**「短くても記憶に残るメロディを作る」というポラードのセンスが表れている。**
8. Echos Myron
疾走感のあるギターポップ。ポップパンク的な勢いと、GBVらしい雑然とした録音が融合した名曲。
9. Gold Star for Robot Boy
ノイジーなギターとキャッチーなメロディが融合した、GBVのDIY精神を象徴する一曲。
10. Awful Bliss
シンプルなアコースティック・バラード。アルバムの中でも最も穏やかで、静謐な美しさを持つ楽曲。
11. Mincer Ray
サイケデリックなムードを持つ短いトラック。意図的に荒れたミックスが、奇妙な雰囲気を作り出している。
12. A Big Fan of the Pigpen
リフが印象的なガレージロック・ナンバー。ポラードのシャウトがエネルギッシュ。
13. Queen of Cans and Jars
インディーポップ的なメロディと、ざらついたサウンドの対比が魅力的な曲。
14. Her Psychology Today
ノイズ混じりのギターが印象的な、実験的なナンバー。
15. Kicker of Elves
タイトルからしてシュールな楽曲。GBVの遊び心と奇妙なユーモアが詰まっている。
16. Ester’s Day
シンプルなコード進行ながら、どこかクセになる中毒性を持つ楽曲。
17. Demons Are Real
ノイジーで、パンキッシュな雰囲気を持つ短いトラック。
18. I Am a Scientist
アルバムを代表する名曲のひとつ。「私は科学者だ、でも自分自身を理解できない」というリリックが印象的で、ローファイ・インディーロックのアンセム的な存在となっている。
19. Peep-Hole
穏やかで美しいバラード。アルバム終盤に、こうした静かな楽曲があることで、全体の流れがよりドラマチックになる。
20. You’re Not an Airplane
フィナーレを飾る短いアコースティックナンバー。
総評
『Bee Thousand』は、ローファイ・インディーロックの金字塔的作品であり、90年代のDIY精神を象徴するアルバムである。プロダクションの粗さを逆手に取った独特のサウンドと、抜群のポップセンスが見事に融合し、オルタナティブ・ロックの歴史に残る名盤となった。
多くの曲が1〜2分で終わるため、聴いているとまるでアートパンクやガレージポップの短編集のような感覚を味わえる。ローファイでありながら、メロディのクオリティは驚くほど高く、後のインディーロック・バンド（The Strokes、The Shins、Car Seat Headrestなど）に多大な影響を与えた。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
- Pavement – Slanted and Enchanted（1992年）
ローファイ・ロックの代表作。GBVと並ぶ90年代インディーの象徴。 - The Replacements – Let It Be（1984年）
ガレージロックとパワーポップの融合。 - Sebadoh – Bakesale（1994年）
DIYロックの名盤。 - Neutral Milk Hotel – In the Aeroplane Over the Sea（1998年）
フォークとローファイの融合。 - The Shins – Oh, Inverted World（2001年）
GBVの影響を受けたインディーポップの名作。
『Bee Thousand』は、ガレージロック、パワーポップ、DIY精神が融合した90年代インディーロックの傑作である。
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