Baby Fratelli by The Fratellis（2007）楽曲解説

楽曲レビュー

2025.10.26

1. 歌詞の概要
2. 歌詞のバックグラウンド
3. 歌詞の抜粋と和訳
4. 歌詞の考察
5. この曲が好きな人におすすめの曲
6. 現在における評価と影響

1. 歌詞の概要

「Baby Fratelli」は、スコットランドのロックバンド The Fratellis が2007年にシングルとしてリリースした楽曲で、デビュー・アルバム『Costello Music』（2006年）に収録されている。歌詞は奔放で型破りな女性像「ベイビー・フラテリ」を主人公に描き、彼女の自由奔放で危うい魅力を歌い上げている。内容は一貫してスピーディーで享楽的であり、恋愛や欲望というテーマを軽快かつシニカルに表現している。タイトルにバンド自身の名前「Fratelli」を重ねることで、グループのアイデンティティと遊び心が込められた曲でもある。

2. 歌詞のバックグラウンド

The Fratellisは2005年に結成され、翌年の『Costello Music』で一躍注目を浴びた。アルバム収録曲「Chelsea Dagger」が大ヒットしたことで知られるが、「Baby Fratelli」もまたシングルとして成功を収め、全英シングルチャートでトップ30入りを果たした。

歌詞の題材となっている「ベイビー・フラテリ」は、映画『グーニーズ』（1985年）に登場する悪党一家「フラテリ一家」へのオマージュとも言われる。バンド自身が「フラテリ」という架空の苗字を名乗っていることからも分かるように、彼らはポップカルチャーからの引用やユーモアをバンド名や楽曲に織り込むことを得意としていた。

「Baby Fratelli」は、荒々しいギターリフ、疾走感のあるリズム、そして大合唱できるサビを特徴としており、アルバム全体の「パブ・ロック的」な勢いを象徴している。ライブでも盛り上がる定番曲として長く愛されている。

3. 歌詞の抜粋と和訳

英語歌詞（抜粋）
“Baby Fratelli
She had your measure right from the start”

日本語訳
「ベイビー・フラテリ
彼女は最初から君を手玉に取っていた」

さらに、奔放さを象徴するようにこう歌われる。

英語歌詞（抜粋）
“She said, ‘baby, let’s go for a ride’”

日本語訳
「彼女は言った、『ねえ、ドライブに行こうよ』」

（歌詞引用元: Genius）

4. 歌詞の考察

「Baby Fratelli」は、典型的な「ロックンロール・ヒロイン像」を描き出している。危険な香りを放ち、男性を翻弄する女性像は、1950～60年代のロックンロールやガレージロックにもしばしば見られるテーマであり、The Fratellisはそれを21世紀的なスピード感で再解釈している。

ここで重要なのは、彼女がただの恋愛対象ではなく「自由と混乱の象徴」として描かれている点だ。彼女の存在は混沌を招きつつも抗えない魅力を放ち、リスナーを物語の中に巻き込んでいく。タイトルに「Fratelli」という名前を冠していることから、バンド自身を戯画化した存在として「ベイビー・フラテリ」を描いているとも考えられる。つまり、この曲は自己パロディ的な側面も持ち合わせているのである。

音楽的にも、この曲はThe Fratellisの特徴を凝縮している。パンキッシュなギターリフと、サッカー場やパブで大合唱できるようなコーラス。これはまさに2000年代中盤のUKインディ・ロックシーンを象徴するスタイルであり、Arctic MonkeysやKaiser Chiefsと並ぶ形で語られる理由でもある。