発売日: 2013年1月22日
ジャンル: インディーポップ、エレクトロニカ、R&B
「Anything in Return」は、Toro y Moiの3枚目のスタジオアルバムで、彼のサウンドが大きく進化した作品である。チルウェーブの初期スタイルから一歩踏み出し、ポップ、R&B、ヒップホップの要素を取り入れたエレクトロニカが特徴的だ。アルバム全体を通して、洗練されたビート、キャッチーなメロディ、そして内省的な歌詞が融合し、都会的でリッチなサウンドが広がる。Chaz Bear(本名Chazwick Bundick)は、この作品で一層多様な音楽性を披露し、エレクトロニックポップの分野で新しい地平を切り開いた。
各曲ごとの解説:
- Harm in Change
アルバムの幕開けを飾る「Harm in Change」は、浮遊感のあるシンセサウンドとファンキーなベースラインが絡み合い、Toro y Moiの新たな音楽的方向性を示している。ダンサブルなリズムに、Chazの滑らかなボーカルが重なり、ポップでグルーヴィーな雰囲気が漂う。 - Say That
「Say That」は、アルバムの中でも特にキャッチーで、アップテンポなトラック。繰り返されるシンセリフとビートが強調され、シンプルながら中毒性のあるメロディが印象的。エレクトロポップとヒップホップの影響を感じさせるダンサブルな一曲。 - So Many Details
リードシングル「So Many Details」は、内省的な歌詞と洗練されたビートが特徴的。シンセサウンドとファンキーなベースが絡み合い、感情的なメロディと複雑なリズムが、楽曲に深みを与えている。恋愛の葛藤や個人的な悩みを描写した歌詞も印象的。 - Rose Quartz
「Rose Quartz」は、ゆったりとしたテンポで進行するトラック。リッチなシンセサウンドが曲全体を包み込み、穏やかで心地よい雰囲気を生み出している。ビートとメロディが徐々に積み重なり、幻想的なサウンドスケープが展開される。 - Cola
「Cola」は、低音が効いたベースラインとリズミカルなビートが印象的な楽曲。Chazのボーカルは静かに抑えられ、ミニマルなアレンジが繊細なサウンドデザインを引き立てている。 - Grown Up Calls
「Grown Up Calls」は、よりR&B的な要素が強調されたトラック。柔らかいビートと、メロウなシンセサウンドが特徴で、Chazのボーカルが感情豊かに響き渡る。 - High Living
「High Living」は、軽快なリズムとシンセサウンドが絡み合い、リスナーを心地よい空間に引き込む楽曲。アルバム全体を通して続くファンキーな雰囲気が維持され、明るいトーンが心地よい。 - Touch
「Touch」は、柔らかなリズムと感傷的なメロディが融合した、内省的でリラックスしたトラック。シンセのループが優しく響き、感情的なボーカルが楽曲の中心にある。 - Never Matter
「Never Matter」は、ディスコやファンクの要素を取り入れたダンサブルなトラック。グルーヴィーなベースラインとキャッチーなメロディが耳に残り、エネルギッシュな雰囲気が魅力。 - How’s It Wrong
アルバムの締めくくりとなる「How’s It Wrong」は、ゆったりとしたビートとメロウなシンセサウンドが、アルバム全体のムードを優しくまとめ上げる。感情的なボーカルが最後まで続き、余韻を残す。
アルバム総評:
「Anything in Return」は、Toro y Moiがチルウェーブから大きく進化し、エレクトロニカ、R&B、インディーポップを融合させた作品である。ポップでありながらも内省的な歌詞と、洗練されたサウンドデザインが、アルバム全体を通して一貫している。Chaz Bearは、この作品で彼の音楽的な多様性をさらに広げ、リズムやメロディの多彩なアプローチを見せた。「Say That」や「So Many Details」のようなキャッチーな楽曲から、「Rose Quartz」のような内省的なトラックまで、幅広いスタイルが展開されている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚:
- Paracosm by Washed Out
チルウェーブのエレクトロニカとポップの要素が融合したアルバムで、「Anything in Return」と同様にドリーミーなサウンドが特徴。 - In Colour by Jamie xx
エレクトロニカとR&B、ヒップホップの要素を取り入れたアルバムで、Toro y Moiの洗練されたサウンドに共通する都会的なムードを感じられる。 - Our Love by Caribou
エレクトロポップとR&Bの要素を融合させた作品で、Toro y Moiのサウンドが好きなリスナーにはピッタリの感情的でグルーヴィーな楽曲が楽しめる。 - Awaken, My Love! by Childish Gambino
ファンクやソウル、R&Bの影響が色濃いアルバムで、「Anything in Return」のファンキーなグルーヴを楽しめる作品。 - It Is What It Is by Thundercat
ソウルフルでファンキーなベースラインと、感情的な歌詞が特徴のアルバムで、Toro y Moiのサウンドに共通する多様性が魅力。
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