
発売日: 2019年2月8日
ジャンル: ファンク、ソウル、ニューオーリンズ・グルーヴ、ヒップホップ、ブラス・ポップ
概要
『Already Ready Already』は、Galacticが2019年にリリースしたスタジオ・アルバムであり、Jelly Joseph(Anjelika ‘Jelly’ Joseph)をフィーチャリングだけでなく“声の中核”として全面に押し出した、現体制Galacticのスタート地点とも言える作品である。
このアルバムの特徴は、収録時間が全体で30分にも満たないという濃縮型ミニマル・ファンク構成。
だがその分、Jelly Josephのパワフルでカラフルな歌声が常に前景化されており、Galacticが“ボーカル・バンド”へと完全にシフトしたことを明確に告げる作品となっている。
伝統的ニューオーリンズ・ファンクを基盤にしながらも、ヒップホップ、ダンス、ブラス・ポップ、エレクトロなどを貪欲に取り込み、古くて新しい“現代型ファンク”として鮮烈な輝きを放っている。
全曲レビュー(全曲紹介)
1. Already
イントロなし、いきなり突き抜けるブラスとビート。
タイトル曲にして、Galacticの新章を切り開くファンク・アタック。
インストだが、その勢いはすでに“歌って”いる。
2. Going Straight Crazy (feat. Princess Shaw)
ソウルフルでグルーヴィーなR&Bナンバー。
JellyではなくPrincess Shawのボーカルだが、この曲の熱量は後年Jellyのライブレパートリーとして受け継がれる。
高揚感とメロディアスなファンクが融合。
3. Clap Your Hands (feat. Miss Charm Taylor)
アフロ・ヒップホップ・ソウルの文脈を継ぐ一曲。
Charm Taylorの詩的ラップと歌が、Jellyの持つ“語りと歌の交差点”と響き合う。
多様性と祝祭性の象徴。
4. Everlasting Light (feat. David Shaw & Nahko)
サイケポップ×ファンクの実験作。
Jellyは参加していないが、エモーショナルなボーカルデュオ構成が、Jellyを中心に据えるバンドの方向性の布石として作用。
5. Touch Get Cut (feat. Princess Shaw)
最もラフでパンチの効いたナンバー。
Jelly Josephがライブで歌う際には、さらに攻撃的なフェミニンファンクとして再構築されることが多く、彼女のステージングを代表する1曲でもある。
6. Dance At My Funeral (feat. BOYFRIEND)
ニューオーリンズの祝祭文化と“死”のユーモアを融合。
BOYFRIENDのセクシュアルで挑発的なリリックが炸裂するが、Jelly Josephの存在感とも呼応する“自分自身を生き抜く宣言”のようなトーンが際立つ。
7. Ready Already
クールダウンのようでありながら、実は高揚感に満ちたファンク・チューン。
Jelly Josephのコール&レスポンス的パフォーマンスが加わると、ライブでは完全に爆発する。
8. Move Fast (Live Bonus – feat. Mystikal)
CDエディション等で追加されることの多いボーナストラック。
『Carnivale Electricos』収録の楽曲のライブバージョンで、Jelly Josephがこのタイプの激烈ファンクにも自在に対応できることを証明。
総評
『Already Ready Already』は、Galacticが“声を持ったファンク集団”として完全にシフトした第一歩であり、Jelly Josephというシンガーの表現力が、バンド全体のアーキテクチャを再定義した作品である。
短く、濃く、熱い。
そして何よりも“前に進んでいる”──それがこの作品に込められたメッセージだ。
Jellyのボーカルは、ただ歌うのではなく、ファンクというジャンルそのものに現在形の息吹を与えている。
このアルバムを聴いたあとにライヴを体験すれば、その“準備万端=Already Ready”というタイトルの意味が、完全に理解できるはずだ。
おすすめアルバム(5枚)
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Tank and The Bangas / Green Balloon
ニューオーリンズ発、ソウルとヒップホップの融合。Jelly Josephの多様性と重なる。 -
Anderson .Paak / Ventura
現代ソウル×ファンクの決定版。Galacticとの親和性は極めて高い。 -
The Suffers / It Starts with Love
女性ヴォーカル主体のソウル・グルーヴ。Jelly Josephを思わせる力強さ。 -
Chaka Khan / Hello Happiness
ディスコとファンクを2020年代仕様に更新。Jellyが目指す未来と重なる。 -
Galactic / Into the Deep
『Already Ready Already』直前の重要作。Jellyの表現力が開花する前夜。
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