アルバムレビュー：A Farewell to Kings by Rush

アルバムレビュー

2025.03.13

発売日: 1977年9月1日
ジャンル: プログレッシブロック、ハードロック

Rushの音楽的飛躍――プログレッシブロックへの完全移行を果たした作品
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総評
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Rushの音楽的飛躍――プログレッシブロックへの完全移行を果たした作品

1977年にリリースされた『A Farewell to Kings』は、Rushが本格的にプログレッシブロックの領域へと踏み込んだ転換点となるアルバムであり、前作『2112』（1976年）の成功を受け、より洗練された作曲技術とシンセサイザーの導入を取り入れた作品となっている。

本作では、Rushの特徴である複雑な楽曲構成、哲学的な歌詞、演奏力の高さがさらに際立ち、バンドがより壮大なストーリーテリングを展開するようになった。特に「Xanadu」や「Cygnus X-1」などの長尺プログレ楽曲が際立ち、後の『Hemispheres』（1978年）へと続くストーリーが描かれている。

このアルバムは、Rushが70年代プログレの王道を歩みつつも、独自のスタイルを確立した重要な作品であり、バンドの黄金時代への布石となった。

全曲レビュー

1. A Farewell to Kings

アコースティックギターの静謐なイントロから始まり、突然のハードロックリフへと展開するオープニング曲。
歌詞は「王の終焉（Farewell to Kings）」をテーマに、権力の腐敗と人々の自由を訴えるものとなっている。
この曲では、ゲディ・リーがシンセサイザーを積極的に使用し、Rushの新しい音楽的アプローチが垣間見える。

2. Xanadu

11分を超える大作で、Rushのプログレ時代を象徴する名曲の一つ。
コールリッジの詩「Kubla Khan」にインスパイアされた、永遠の命を求めた男の物語が描かれる。
シンセサイザーとアレックス・ライフソンのギターが幻想的な雰囲気を作り出し、徐々に壮大な展開へと向かう。
楽曲の構成は非常にダイナミックで、静と動が見事に融合したRushらしいプログレッシブロックの傑作。

3. Closer to the Heart

本作の中で最もキャッチーでシンプルな楽曲で、Rushの代表曲の一つ。
人間の精神性や理想の社会を追求するメッセージが込められており、アコースティックギターと優しいメロディが印象的。
ライブでは定番曲となり、多くのファンに愛されている。

4. Cinderella Man

ゲディ・リーが作詞を手がけた楽曲で、映画『ミスター・ディーズ・ゴーズ・トゥ・タウン』（1936年）にインスパイアされた作品。
ハードロックとプログレ要素がバランス良く融合し、キャッチーなメロディの中にもダイナミックな演奏が光る。

5. Madrigal

本作の中では最も短い楽曲で、美しいアコースティックバラード。
シンセサイザーが繊細に使われ、メロウな雰囲気が漂う。Rushの中でも珍しいスタイルの楽曲。

6. Cygnus X-1 Book I: The Voyage

10分以上に及ぶSFコンセプトの大作で、『Hemispheres』（1978年）の「Cygnus X-1 Book II: Hemispheres」へと続く物語の第一部。
ブラックホール「Cygnus X-1」へ向かう宇宙船「Rocinante」のクルーが、未知の世界へと旅立つストーリーが描かれる。
緊迫感のあるベースライン、スリリングなギターリフ、ニール・パートのドラマチックなドラムが絡み合い、Rushの楽曲の中でも特にスリリングな展開を持つ楽曲。

総評

『A Farewell to Kings』は、Rushがプログレッシブロックバンドとして完全に成熟したことを示す作品であり、シンセサイザーの導入、複雑な楽曲構成、哲学的な歌詞といった要素がより強調されたアルバムである。

特に「Xanadu」「Cygnus X-1 Book I: The Voyage」などは、Rushのプログレ時代を象徴する楽曲であり、本作が『Hemispheres』へと続く橋渡しの作品であることを示している。

また、「Closer to the Heart」のようなキャッチーな楽曲も収録されており、プログレファンだけでなく、より広いロックリスナーにもアピールする構成になっている。

このアルバムの成功を受けて、Rushはさらに複雑でドラマチックな楽曲へと進化し、次作『Hemispheres』でプログレ時代のピークを迎えることとなる。

70年代プログレッシブロックの中でも特に重要な作品の一つであり、Rushのプログレ期を深く理解する上で欠かせない名盤。