発売日: 2015年4月7日
ジャンル: インディーフォーク / アメリカーナ
Lord Huronの2枚目のアルバムStrange Trailsは、デビュー作Lonesome Dreamsで確立した映画的で冒険心あふれる音楽世界をさらに深化させた作品だ。本作は、孤独な旅路やロマンス、死と再生といったテーマが織り込まれ、まるで古い西部劇やゴシックな小説の中を彷徨うような感覚を味わえるアルバムである。
バンドのリーダー、ベン・シュナイダーはこの作品において、架空のキャラクターやストーリーを背景に楽曲を構築し、それを支えるノスタルジックなフォークロックサウンドで物語を彩っている。アルバム全体に漂うミステリアスで暗いトーンは、儚い美しさを伴いながら、リスナーを物語の中へと引き込んでいく。
トラック解説
1. Love Like Ghosts
アルバムの幕開けとなるこの曲は、静かなギターと囁くようなボーカルで始まる。幽霊のような愛をテーマにした歌詞が、アルバム全体のミステリアスなトーンを象徴している。「愛は消えたが、痕跡だけが残っている」というテーマが心に残る一曲。
2. Until the Night Turns
アップテンポで軽快な曲調ながら、歌詞は死や夜への恐れといった暗いテーマを扱っている。キャッチーなメロディとリズムが聴きやすく、アルバムの中でも特に耳に残る楽曲だ。
3. Dead Man’s Hand
タイトルからもわかるように、この曲は死と運命をテーマにしている。カントリーブルースの要素を取り入れたメロディが特徴で、まるで西部の砂埃が舞う荒野で繰り広げられる物語のようだ。
4. Hurricane (Johnnie’s Theme)
嵐をテーマにしたこの楽曲は、激しさと穏やかさが同居している。ストリングスとギターが複雑に絡み合い、歌詞の中に登場する「ジョニー」というキャラクターの物語がドラマチックに展開される。
5. La Belle Fleur Sauvage
フランス語で「美しい野生の花」を意味するこの曲は、自由な精神と儚さを象徴している。穏やかなリズムとシュナイダーの柔らかな声が美しく調和し、聴き手を自然の中へと誘う。
6. Fool for Love
この楽曲は、恋に落ちる愚かさと情熱を描いている。明るいギターリフとキャッチーなメロディが特徴で、アルバムの中でも特にポップな印象を持つ一曲。
7. The World Ender
復讐と終末をテーマにした暗いトーンの楽曲。ダークな歌詞に反して、力強いリズムとエネルギッシュなサウンドがリスナーを鼓舞する。歌詞の中の復讐者の物語が鮮烈に心に残る。
8. Meet Me in the Woods
このアルバムの代表曲ともいえる楽曲。ミステリアスで幻想的な歌詞と、リバーブが効いたギターの響きが印象的だ。「森で私に会いに来て」というフレーズが、アルバム全体の持つゴシックな雰囲気を象徴している。
9. The Yawning Grave
静かなアコースティックギターが特徴のこの曲は、死や運命といったテーマを繊細に描いている。アルバムの中でも特に神秘的な雰囲気を持つ楽曲だ。
10. Frozen Pines
この楽曲では、失われた愛と孤独がテーマになっている。淡々としたリズムが、雪深い森の中を彷徨う感覚をリスナーに与えてくれる。
11. Cursed
呪いと悲劇をテーマにした暗いトラック。歌詞の中で描かれる不運な運命が、シュナイダーのボーカルによってドラマチックに表現されている。
12. Way Out There
希望と冒険心が歌われた楽曲で、アルバムの中では比較的明るいトーンを持つ。広大な景色を思わせるサウンドスケープが、リスナーを未知の場所へと連れて行く。
13. Louisa
この楽曲は、過去の恋人への想いを歌っている。明るいメロディが切ない歌詞と対照的で、どこか懐かしさを感じさせる一曲だ。
14. The Night We Met
アルバムのラストを飾るこの楽曲は、切なく美しい愛の喪失を描いている。シュナイダーの感情的な歌声とシンプルなメロディが心を揺さぶり、多くのリスナーにとってハイライトとなる名曲だ。
アルバムの背景: ダークな物語世界への没入
Strange Trailsは、架空の物語やキャラクターが楽曲ごとに存在しており、ベン・シュナイダーが語る「暗いトレイル」をテーマにしたストーリーテリングが際立つアルバムである。シュナイダー自身のビジュアルアートへの才能も活かされ、各曲が映画のシーンのように生き生きと描かれている。聴く者に独自の世界観を提示し、物語に没入させる力がこの作品の魅力だ。
アルバム総評
Strange Trailsは、Lord Huronの物語性と音楽的実験が見事に融合したアルバムだ。フォーク、アメリカーナ、そしてゴシック的な要素が織りなす楽曲群は、一曲一曲が個別の物語でありながら、全体として統一感を持っている。神秘的でシネマティックな音楽世界は、リスナーに深い感動と想像力を与えるだろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The Lumineers by The Lumineers
ストーリーテリングとフォークサウンドのバランスが魅力のアルバム。
Helplessness Blues by Fleet Foxes
広がりのあるハーモニーと物語性豊かな歌詞が共通点。
Down the Way by Angus & Julia Stone
切ない愛の物語と繊細なアレンジが、Strange Trailsの雰囲気と共鳴する。
Carry the Ghost by Noah Gundersen
内省的な歌詞とフォークロックのサウンドが、このアルバムを気に入った人におすすめ。
Fear Fun by Father John Misty
物語性豊かな歌詞とダークなユーモアが楽しめる一枚。
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