発売日: 2021年4月2日
ジャンル: インディーロック、オルタナティブロック
スコットランドのインディーロックバンド、The SnutsのデビューアルバムW.L.は、彼らの地元での成功と情熱的な音楽性を世界に示す画期的な一枚だ。タイトルのW.L.は「West Lothian」の略であり、彼らの故郷に捧げられている。地元の風景や生活がアルバム全体を通して感じられ、聴き手にノスタルジックで温かい感情を呼び起こす。
このアルバムは、エネルギッシュでキャッチーなインディーロックから、感情的で静謐なバラードまで幅広いサウンドを網羅している。The Snutsは、The LibertinesやArctic Monkeysといったバンドからの影響を感じさせつつ、独自のスタイルを確立している。以下、全13曲を一つずつレビューし、このアルバムがどれだけ多彩で魅力的かを掘り下げていこう。
トラックごとの解説
1. Top Deck
アルバムの幕開けにふさわしい高揚感あふれるトラック。煌びやかなギターリフとJack Cochraneのエモーショナルなボーカルが印象的だ。地元を題材にした歌詞が親しみを感じさせ、アルバム全体のトーンを設定している。
2. Always
シンプルなメロディが心に残るラブソング。ギターのアルペジオが中心となり、Jackの温かみのある歌声が際立つ。感傷的な歌詞が多くのリスナーに共感を呼ぶだろう。
3. Juan Belmonte
スパニッシュギターを思わせるイントロから一転、疾走感のあるロックサウンドに展開する曲。バンドの遊び心とエネルギーが詰まっており、ライブ映えする一曲だ。
4. All Your Friends
アコースティックギターがリードするミディアムテンポのトラック。歌詞は友情や喪失をテーマにしており、ほろ苦い感情が滲む。Jackのボーカルが特に感情的に響く。
5. Somebody Loves You
優しいメロディと楽観的な歌詞が特徴の楽曲。シンプルなリズムと柔らかいアレンジが、聴き手に希望を与えるような温かさを持つ。
6. Glasgow
The Snutsの地元愛が最も色濃く表れたトラック。スコットランドの街並みや生活を詩的に描き、ノスタルジーを呼び起こす。ギターリフが壮大なスケール感を与えている。
7. No Place I’d Rather Go
アコースティックサウンドが中心となった静謐な一曲。シンプルな構成ながらも、歌詞の深さとJackのボーカルがリスナーの心に刺さる。
8. Boardwalk
海辺を思わせる爽やかなトラック。軽快なリズムと心地よいメロディラインが特徴で、夏の日を思い起こさせる楽曲だ。
9. Coffee & Cigarettes
日常の中の小さな瞬間を切り取ったような歌詞が印象的。軽快なテンポとキャッチーなコーラスが、耳に残る一曲。
10. Maybe California
アメリカのカリフォルニアを夢見るような曲。ギターのアルペジオと控えめなリズムセクションが、曲全体に開放感を与えている。
11. Don’t Forget It (Punk)
タイトル通り、パンキッシュなエネルギーが爆発する一曲。疾走感のあるリズムと激しいギターリフがアルバムにアクセントを加える。
12. Blur Beat
ミステリアスで実験的な雰囲気を持つ楽曲。リズムの不規則な展開とエフェクトがかかったボーカルが、独特の世界観を作り出している。
13. Sing For Your Supper
アルバムの最後を締めくくる壮大なバラード。歌詞には自己反省や希望が込められており、シンプルなメロディが心に残る。感情が高ぶるクライマックスは、アルバム全体の総括として完璧だ。
インディーロックの新たな可能性を示した作品
W.L.は、The Snutsが地元スコットランドへの愛を音楽に昇華させた感情豊かな作品だ。シンプルでキャッチーなメロディが多い一方で、サウンドには深みがあり、リスナーを何度も引き込む魅力がある。故郷の情景や日常の些細な瞬間が詩的に描かれた歌詞は、聴き手に温かみと共感をもたらす。
プロデューサーのTony Hoffer(Beck、Phoenixなどを手掛けた実力派)による洗練されたプロダクションも、このアルバムの完成度を高めている。
アルバム総評
W.L.は、The Snutsの多彩な才能と情熱を示した見事なデビュー作であり、彼らの未来に大きな期待を抱かせる一枚だ。エネルギッシュなロックナンバーから、内省的なバラードまで幅広いスタイルを網羅しながらも、アルバム全体を通じて一貫したアイデンティティを持っている。特に、故郷への愛や青春の記憶が反映された歌詞が、聴き手の心を揺さぶる。インディーロックの新たな風として、The Snutsがシーンで確固たる地位を築くのは時間の問題だろう。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
The Balcony by Catfish and the Bottlemen
エネルギッシュでキャッチーなロックサウンドが共通点。青春の感情が詰まったアルバム。
Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not by Arctic Monkeys
日常の出来事を描いた歌詞と、エッジの効いたギターがThe Snutsと似た魅力を持つ。
Employment by Kaiser Chiefs
ポップとロックのバランスが絶妙で、キャッチーな楽曲が多い一枚。
Costello Music by The Fratellis
スコットランド発のバンドとして、The Snutsのサウンドに親和性を感じる軽快なアルバム。
A Brief Inquiry Into Online Relationships by The 1975
多様なスタイルを取り入れたアルバムで、The Snutsの実験的な一面に共通する要素がある。
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