発売日: 1996年5月20日
ジャンル: オルタナティブロック、ポストグランジ、ブリットポップ
『Everything Must Go』は、Manic Street Preachersが1996年にリリースした4枚目のスタジオアルバムであり、バンドの再生と進化を象徴する重要な作品だ。リッチー・エドワーズの失踪という悲劇を乗り越え、彼の歌詞を一部使用しつつも、新たな音楽的方向性を模索した結果生まれたアルバムである。本作では、過去の過激で内省的な要素から一歩引き、より広がりのあるサウンドスケープと普遍的なテーマを取り入れた、ドラマチックで感情的な作品に仕上がっている。
プロデューサーにマイク・ヘッジスを迎えたことで、サウンドはより洗練され、オーケストラのアレンジや緻密なプロダクションが施されている。ジェームス・ディーン・ブラッドフィールドの情熱的なボーカルと、バンドのパワフルな演奏が見事に調和し、リッチーの影が残るアルバムでありながら、新たな章の始まりを予感させる作品だ。
トラック解説
- Elvis Impersonator: Blackpool Pier
アルバムの幕開けを飾る一曲。ブラックプールという英国的な景色を舞台に、偽物(イミテーション)としての生き方を描いた歌詞が特徴的。 - A Design for Life
バンドの代表曲であり、労働者階級の誇りをテーマにしたアンセム的な一曲。壮大なオーケストレーションとジェームスの力強いボーカルが響く、アルバムの中核を成す名曲だ。 - Kevin Carter
南アフリカの写真家ケヴィン・カーターをテーマにした楽曲。トランペットソロが印象的で、ジャズの要素を取り入れた実験的なアプローチが際立つ。 - Enola/Alone
切迫感のあるギターワークとキャッチーなコーラスが特徴の楽曲。孤独と自己反省をテーマにしており、エネルギーに満ちたロックナンバーだ。 - Everything Must Go
アルバムタイトル曲で、前に進むために過去を手放すというテーマを歌った一曲。軽快なリズムとポジティブなメロディーが、再生の意志を感じさせる。 - Small Black Flowers That Grow in the Sky
リッチーの歌詞を使用した叙情的な楽曲。アコースティックギターとハープのアレンジが美しく、動物実験をテーマにした繊細で痛ましい一曲。 - The Girl Who Wanted to Be God
詩人シルヴィア・プラスにインスパイアされた楽曲。力強いビートと華やかなメロディーが印象的で、リッチーの文学的な視点が反映されている。 - Removables
比較的シンプルなロックナンバーで、存在の不安定さや自己否定をテーマにしている。短いながらも印象に残る一曲。 - Australia
希望と開放感に満ちた楽曲で、失意からの逃避と新たな出発を歌っている。軽快なギターリフと力強いボーカルが、前向きなエネルギーを感じさせる。 - Interiors (Song for Willem de Kooning)
抽象画家ウィレム・デ・クーニングに捧げられたトラック。抽象的で詩的な歌詞と、深みのあるギターサウンドが印象的だ。 - Further Away
明るいメロディーが特徴のロックナンバー。距離と喪失をテーマにした歌詞が、リズミカルなサウンドに包まれている。 - No Surface All Feeling
アルバムを締めくくる感動的なトラック。感情的なギターサウンドと歌詞が、リッチーへの別れを暗示するような深い余韻を残す。
アルバム総評
『Everything Must Go』は、Manic Street Preachersが悲劇を乗り越え、新たな地平を切り開いたアルバムだ。過去の暗さを引きずりつつも、ポジティブで希望に満ちたサウンドと普遍的なテーマが、バンドの再生と進化を象徴している。特に「A Design for Life」や「Everything Must Go」といった楽曲は、バンドの代表作として多くのリスナーに愛されており、感情的な深みと洗練された音楽性が見事に融合している。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
(What’s the Story) Morning Glory? by Oasis
壮大でキャッチーなロックサウンドが特徴のアルバムで、『Everything Must Go』のメロディアスな要素に通じる。
OK Computer by Radiohead
人間の疎外感や変化を描いたアルバムで、深いテーマ性とドラマチックな音楽性が共通している。
Urban Hymns by The Verve
ドラマチックなサウンドと感情的な歌詞が、『Everything Must Go』の雰囲気と調和する。
The Bends by Radiohead
ギター中心のサウンドと叙情的な歌詞が、『Everything Must Go』のエモーショナルな側面に似ている。
Coming Up by Suede
グラムロック的な華やかさと普遍的なテーマを持つアルバムで、Manic Street Preachersのポップな側面が好きな人におすすめ。
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