発売日: 2016年8月19日
ジャンル: エレクトロニカ、シンセポップ、ウィッチハウス
『Amnesty (I)』は、Crystal Castlesが2016年にリリースした4枚目のアルバムであり、バンドにとって新章の幕開けを告げる作品だ。本作は、前作『Crystal Castles (III)』の後にアリス・グラスが脱退し、新ボーカリストのイーディス・フランシスを迎えて制作された初のアルバムである。アリス・グラス時代の攻撃性と混沌とした美学を受け継ぎつつも、イーディスのより抑制されたボーカルが新たな色を加えている。
アルバム全体を通して、イーサン・カスのプロダクションはこれまで以上に洗練されており、ノイズとメロディーのバランスが絶妙だ。暗く不穏なトーンの中にも、一筋の光が見えるような希望が感じられる。歌詞には人権問題や社会的抑圧といったテーマが散りばめられ、政治的なメッセージが強調されていることも特徴だ。
トラック解説
- Femen
アンビエントなイントロでアルバムが静かに始まる。ミニマルなビートと不気味なシンセが絡み合い、緊張感を生み出すオープニングトラックだ。 - Fleece
イーディスの囁くようなボーカルと重厚なビートが印象的な楽曲。攻撃的なサウンドが過去作を彷彿とさせつつも、メロディアスな一面が新鮮だ。 - Char
本作を象徴する楽曲の一つ。幻想的でドリーミーなシンセサウンドと、イーディスの幽玄なボーカルが絡み合う。アルバムの中でも特に美しいトラックだ。 - Enth
ノイズ混じりのシンセリフと激しいビートが織りなすダンサブルな楽曲。クラブシーンに適したエネルギーに満ちた一曲。 - Sadist
ゆったりとしたリズムと不穏なサウンドスケープが特徴。タイトルが示すように、陰鬱で挑発的な雰囲気が漂う。 - Teach Her How to Hunt
ノイズとメロディーが融合した楽曲で、実験的なアプローチが際立つ。中毒性のあるリフが印象的だ。 - Chloroform
緊張感のあるシンセサウンドと、不気味な空気感が支配する楽曲。静と動がダイナミックに交錯する一曲だ。 - Frail
アルバムの中で特にキャッチーなトラック。ポップな要素とノイジーなビートが融合し、聴きやすさと激しさが両立している。 - Concrete
アリス・グラス時代を思い起こさせる、アグレッシブでカオティックな楽曲。イーディスのボーカルが新たな解釈を加えている。 - Ornament
幻想的なシンセサウンドが広がる楽曲で、アルバムの中でも特にアンビエントな雰囲気が強い。 - Their Kindness Is Charade
アルバムを締めくくるトラックで、重厚なサウンドとミステリアスなボーカルが印象的。現代社会への批評的な視点が反映された歌詞が心に残る。
アルバム総評
『Amnesty (I)』は、Crystal Castlesの新たな一歩を示す作品であり、アリス・グラス時代の遺産を引き継ぎながらも、イーディス・フランシスの個性を融合させたバランスの取れたアルバムだ。過去作に比べると控えめな印象も受けるが、その分、洗練されたプロダクションと深みのある楽曲構成が際立つ。特に「Char」や「Frail」といったトラックは、バンドの進化と新しい可能性を象徴する名曲である。ダークで美しいサウンドスケープが広がるこのアルバムは、Crystal Castlesの次なるステージを期待させる一枚だ。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
LP1 by FKA Twigs
ミニマルで実験的なサウンドとエモーショナルなボーカルが、『Amnesty (I)』のダークで美しい雰囲気と共通する。
Visions by Grimes
幻想的で中毒性のあるシンセサウンドと、ポップなメロディーが融合した作品で、Crystal Castlesのファンに響く一枚。
Silent Shout by The Knife
ダークで前衛的なエレクトロポップが特徴で、政治的なテーマと実験的なサウンドが共鳴する。
Blue Lines by Massive Attack
トリップホップの先駆的なアルバムで、深みのあるサウンドスケープがCrystal Castlesの静謐さに通じる。
Woman by Justice
力強いシンセサウンドとメロディックな構成が、『Amnesty (I)』のダンサブルな側面と共通する作品。
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