発売日: 1997年2月10日
ジャンル: オルタナティブロック、インディーロック、ポストグランジ
『Blur』は、バンドにとってのリブート的な位置付けとなったアルバムだ。ブリットポップの代表として地位を確立していたBlurが、1997年にリリースした本作では、これまでのスタイルを大きく変え、グランジやローファイ、アメリカのインディーロックからの影響を強く受けたサウンドに挑戦している。前作『The Great Escape』の華やかさとは対照的に、シンプルで粗削りなアプローチが特徴だ。
このアルバムは、バンドの解散危機やメンバー間の不和、デーモン・アルバーンの個人的な葛藤など、制作時の困難な状況が色濃く反映されている。その結果、暗く内省的な歌詞と、実験的で多様なサウンドが共存する、Blurのキャリアにおいて重要な転換点となった作品だ。特にシングル「Song 2」は、アメリカでの商業的成功を収め、Blurの国際的な地位を押し上げた。
トラック解説
- Beetlebum
アルバムの幕開けを飾る壮大な一曲で、メロディックなギターとデーモンのリラックスしたボーカルが特徴。歌詞には、関係性の葛藤やドラッグ使用をほのめかす要素が含まれており、切なさと美しさが共存している。 - Song 2
Blurの代表曲として世界的に知られる一曲。激しいギターリフとエネルギッシュな「Woo-hoo!」の掛け声が特徴で、ポストグランジやオルタナティブロックの影響が色濃い。短いながらも圧倒的な勢いで、聴く者の感情を爆発させる。 - Country Sad Ballad Man
アコースティックギターとゆったりとしたリズムが目立つ楽曲で、ローファイ的なサウンドが独特の空気感を生んでいる。田舎の孤独やメランコリックな雰囲気が漂う。 - M.O.R.
デヴィッド・ボウイとブライアン・イーノの影響を強く受けたアップテンポなロックナンバー。ギターリフとシンプルな構成が、力強さと親しみやすさを同時に感じさせる。 - On Your Own
エレクトロニックなビートとリズミカルなギターが特徴的な一曲。自己を見つめ直すような内省的な歌詞が印象に残る。 - Theme from Retro
ジャズやファンクの要素を取り入れたインストゥルメンタル曲。アルバム全体の中で異彩を放つ楽曲で、Blurの実験的な一面を示している。 - You’re So Great
ギタリストのグレアム・コクソンがボーカルを務める楽曲。ローファイでざらついたサウンドが特徴で、切ない恋の感情が歌われる。 - Death of a Party
暗く退廃的な雰囲気が漂う楽曲で、タイトル通り、人生の虚しさや終焉を描いている。ミニマルなビートと陰鬱なメロディーが強烈な印象を残す。 - Chinese Bombs
パンクの影響を感じさせる短い楽曲で、エネルギッシュなギターとデーモンの激しいボーカルが炸裂する。 - I’m Just a Killer for Your Love
重たいベースラインと不穏な雰囲気が特徴。タイトルに込められた危うさが、サウンド全体に反映されている。 - Look Inside America
アコースティックギターとストリングスが美しく響く楽曲で、アメリカ文化への風刺と愛憎が入り混じった歌詞が特徴。 - Strange News from Another Star
叙情的で幻想的な楽曲。ゆったりとしたギターとメランコリックなボーカルが、宇宙的なスケールの孤独感を描き出している。 - Movin’ On
軽快なテンポとキャッチーなメロディーが印象的。アルバムの中でも比較的ポップな楽曲で、リスナーの耳に心地よく響く。 - Essex Dogs
アルバムのラストを飾る実験的な一曲。長尺のインストゥルメンタルパートと語り口調のボーカルが、不気味でシュールな雰囲気を生み出している。
アルバム総評
『Blur』は、バンドがブリットポップの枠を超えて新たな音楽的地平を切り開いた意欲作であり、その実験精神と多様なサウンドが光る作品だ。これまでの明るく洗練されたイメージを脱却し、粗削りながらも感情的に豊かな楽曲を通じて、Blurの新たな魅力を提示している。特に「Song 2」はバンドの国際的な成功を象徴する楽曲として、現在でも色褪せることなく聴かれ続けている。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
OK Computer by Radiohead
同時期にリリースされたアルバムで、実験的なアプローチと内省的なテーマがBlurの『Blur』と共通している。
The Bends by Radiohead
オルタナティブロックの名盤で、激しさと叙情性が融合したサウンドが『Blur』のリスナーに響くはず。
1977 by Ash
エネルギッシュなギターロックとポップなメロディーが融合したアルバムで、Blurの『Blur』に通じる青春の勢いを感じさせる。
13 by Blur
『Blur』の次作で、さらに内省的で実験的なサウンドへ進化した作品。両アルバムを通じてバンドの変遷を楽しむことができる。
Pinkerton by Weezer
ローファイで感情的なサウンドが特徴のアルバムで、Blurの『Blur』と同じく内面的なテーマが印象的。
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