発売日: 2018年6月29日
ジャンル: ヒップホップ、R&B
Drakeの5枚目のスタジオアルバム『Scorpion』は、全25曲からなる2部構成の大作であり、彼の音楽キャリアの集大成ともいえる作品である。1枚目はラップを中心とした「Side A」、2枚目はR&Bを基調とした「Side B」と分かれており、Drakeのアーティストとしての多面性を存分に発揮している。
このアルバムでは、彼の私生活に関する話題が多く取り上げられ、特に隠し子の存在に関する告白や、名声と孤独に対する複雑な感情がテーマとして描かれている。Noah “40” ShebibやTay Keith、DJ Premierなどのプロデューサーが参加し、サウンド面でも多彩な表現がなされている。また、未発表音源からのMichael Jacksonのボーカルサンプルが使用されるなど、アルバム全体に渡って意欲的な挑戦が見られる。
トラック解説
Side A
1. Survival
アルバムのオープニングトラックで、Drakeの成功とプレッシャーを語る。ダークで重厚なプロダクションが印象的。
2. Nonstop
クラブ向けのアップテンポなトラック。反復的なフックが中毒性を生み出し、成功への自信を前面に押し出している。
3. Elevate
野心をテーマにした楽曲で、メロディアスなフックが印象的。成功への決意が感じられる。
4. Emotionless
Mariah Careyの楽曲「Emotions」をサンプリングし、社会的な期待や孤独について語る。隠し子の存在に初めて言及した衝撃的な一曲。
5. God’s Plan
リードシングルとして世界的なヒットを記録した楽曲。前向きなメッセージとキャッチーなビートが特徴。
6. I’m Upset
恋愛と名声の複雑さを描いたトラック。力強いフックとエネルギッシュなビートが特徴。
7. 8 Out of 10
自信に満ちたリリックと軽快なビートが融合した楽曲。批判に対する応答がテーマ。
8. Mob Ties
トラップビートとメロディアスなフローが特徴の楽曲。名声と権力について語られている。
9. Can’t Take a Joke
軽快なトラックで、成功を手にした後の皮肉を描く。ユーモアの中に鋭さが光る。
10. Sandra’s Rose
DJ Premierによるプロダクションが光るトラック。母親への敬意が感じられる感情的な内容。
11. Talk Up (featuring Jay-Z)
Jay-Zをフィーチャリングしたトラックで、社会問題への言及や名声について語られる。
12. Is There More
アルバムのSide Aを締めくくる楽曲で、成功に対する虚しさや孤独を表現。アンビエントなサウンドが心に残る。
Side B
13. Peak
アンビエントなR&Bトラックで、恋愛における心の摩擦をテーマにしている。
14. Summer Games
エレクトロポップの影響を感じさせる楽曲で、季節と愛の儚さを描いている。
15. Jaded
感傷的な歌詞とメロウなプロダクションが特徴。The Weekndの影響を感じさせるR&Bナンバー。
16. Nice for What
Bounceミュージックの要素を取り入れたダンサブルなトラックで、女性の自立をテーマにしている。ローリン・ヒルのサンプリングが印象的。
17. Finesse
スムーズなプロダクションと優しいメロディが際立つラブソング。感情豊かな歌詞が特徴。
18. Ratchet Happy Birthday
遊び心あふれるトラックで、祝祭感とユーモアが混じり合う一曲。
19. That’s How You Feel
テンポの速いリズムとメロディックなフローが融合した楽曲。恋愛の浮き沈みを描いている。
20. Blue Tint
軽快なビートとアンビエントなプロダクションが特徴。未来的な雰囲気を持つ楽曲。
21. In My Feelings
ダンスチャレンジで大流行した世界的ヒット。恋愛に対する切ない思いをコミカルに表現したキャッチーなトラック。
22. Don’t Matter to Me (featuring Michael Jackson)
未発表音源からMichael Jacksonのボーカルをフィーチャーした夢のようなコラボレーション。愛と喪失がテーマ。
23. After Dark (featuring Static Major and Ty Dolla Sign)
スムーズなR&Bトラックで、夜の雰囲気を表現。Ty Dolla Signのボーカルが楽曲を彩る。
24. Final Fantasy
個人的なテーマと幻想的なプロダクションが融合した楽曲。タイトル通り夢幻的な雰囲気が漂う。
25. March 14
アルバムを締めくくるトラックで、隠し子についての率直な告白が描かれている。感情的で内省的な内容。
アルバム総評
『Scorpion』は、Drakeのアーティストとしての幅広い音楽性を示す大作であり、ラップとR&Bの両面を楽しめる内容となっている。「God’s Plan」や「Nice for What」、「In My Feelings」といったヒット曲は、商業的な成功を収める一方で、「Emotionless」や「March 14」では彼の個人的な苦悩や成長が描かれている。全25曲というボリュームが賛否を分けるが、Drakeのキャリアにおける重要な一歩を示すアルバムとして評価される。
このアルバムが好きな人におすすめの5枚
Blonde by Frank Ocean
感情的で洗練されたR&Bが、『Scorpion』の内省的なトーンと共鳴する。
More Life by Drake
プレイリスト形式を採用した前作で、多様な音楽性が楽しめる。
Starboy by The Weeknd
ポップとダークなR&Bが融合したアルバムで、『Scorpion』のスタイルに近い。
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