アルバムレビュー:Van Halen III by Van Halen

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:1998年3月17日 / ジャンル:ハードロック、アリーナ・ロック、プログレッシブ・ハードロック

概要

Van Halenの11作目『Van Halen III』は、バンドの歴史の中で最も議論を呼んだアルバムのひとつである。David Lee Roth時代、Sammy Hagar時代という二つの成功期を経た後、Van Halenは新たなボーカリストとして元ExtremeのGary Cheroneを迎えた。本作はその唯一のスタジオ・アルバムであり、Van Halenが従来のパーティー感覚やメロディアスなアリーナ・ロックから離れ、より内省的で実験的な方向へ踏み出した作品である。

David Lee Roth期のVan Halenは、Eddie Van Halenの革新的なギターと、Rothの派手なショーマンシップが結びついた、陽気で野性的なアメリカン・ハードロックを代表していた。Sammy Hagar期になると、バンドはよりメロディアスで感情的なアリーナ・ロックへ移行し、「Dreams」「Right Now」「Why Can’t This Be Love」のように、キーボードや大きなコーラスを活かした楽曲で商業的成功を収めた。『Van Halen III』は、そのどちらとも異なる。ここでは、バンドは過去の成功パターンを再現するのではなく、長尺曲、複雑な構成、重いテーマ、より暗い音像を試みている。

Gary Cheroneは、Extremeでファンク・メタル、ハードロック、クイーン的なコーラス感覚、劇的な歌唱を経験してきたシンガーである。彼はRothのような軽妙な語り手でも、Hagarのようなストレートなハードロック・ボーカリストでもない。より演劇的で、歌詞の意味を強く伝えようとするタイプのシンガーであり、その個性は『Van Halen III』の内省的な方向性と結びついている。

本作のもうひとつの特徴は、Eddie Van Halenの主導権が非常に強く感じられる点である。ギターだけでなく、作曲、アレンジ、キーボード、さらには終盤曲「How Many Say I」でリード・ボーカルまで担当している。Van Halenというバンドが、ここでは祝祭的なロックンロール集団というより、Eddieの音楽的探求を中心とするプロジェクトに近づいている。そのため、本作は従来のVan Halenファンにとって聴き慣れない印象を与えた。

商業的には、過去の作品ほどの成功には至らず、Gary Cherone期は短命に終わった。しかし『Van Halen III』は、単なる失敗作として片づけるには複雑すぎる作品である。確かに楽曲は長く、焦点が散漫に感じられる部分もある。だが同時に、Van Halenが自分たちのブランドを安全に守るのではなく、別の音楽的可能性に踏み込もうとした記録でもある。バンドの転換点であり、迷走の記録であり、Eddie Van Halenの創作衝動が最もむき出しになった異色作である。

全曲レビュー

1. Neworld

「Neworld」は、アルバムの導入として置かれた短いインストゥルメンタルである。アコースティック・ギターを中心とした穏やかな響きが特徴で、従来のVan Halenのアルバム冒頭に期待される爆発的なギター・リフや派手なロックンロール感覚とは大きく異なる。

この曲は、タイトル通り「新しい世界」への入口として機能している。Gary Cheroneを迎えた新体制の始まりを、攻撃的に宣言するのではなく、静かで思索的な音で示している点が本作らしい。Eddie Van Halenのギターは、ここでは技巧の誇示よりも、音色と空気感を重視している。

アルバム全体の内省的な性格を考えると、この導入は象徴的である。Van Halenが従来のパーティー・ロックや大衆的なアリーナ・ロックから離れ、より個人的で不安定な領域へ進むことを暗示している。

2. Without You

「Without You」は、本作のリード・シングルであり、Gary Cherone期Van Halenの方向性を最も明確に示す楽曲である。重厚なギター・リフ、複雑な展開、長めの曲尺、そしてCheroneの力強く演劇的な歌唱が組み合わされている。

歌詞では、喪失、依存、関係の中での空白がテーマになっている。タイトルの「君なしでは」という言葉は、ラブソングの定型にも見えるが、楽曲全体には単純な恋愛感情以上の重さがある。誰かを失った後に自分が成立しなくなる感覚、あるいは他者とのつながりによってしか自分を保てない不安が描かれている。

音楽的には、従来のVan Halenらしいキャッチーさよりも、構成の複雑さが目立つ。Eddieのギターは非常に表情豊かで、リフ、アルペジオ、ソロが次々と展開する。Alex Van Halenのドラムも重く、Michael Anthonyのベースとコーラスは曲の土台を支えている。ただし、サビの明快さはHagar期ほど強くなく、楽曲全体はやや過密な印象を持つ。それでも、本作の意欲と問題点の両方を象徴する重要曲である。

3. One I Want

「One I Want」は、アルバムの中では比較的ストレートなハードロック・ナンバーである。リフは力強く、テンポも前向きで、Van Halenらしいロック・バンドとしての推進力が感じられる。

歌詞では、欲望、選択、自己主張がテーマになっている。タイトルの「自分が欲しいもの」という言葉は、恋愛対象にも、人生の目標にも、バンドの新しい方向性にも重ねられる。Gary Cheroneのボーカルは、感情を大きく表現しようとする傾向があり、この曲でも言葉をはっきり届けようとする姿勢が強い。

音楽的には、Eddieのギター・リフが中心で、曲の構造も比較的わかりやすい。サビには一定のキャッチーさがあり、本作の中では聴きやすい部類に入る。ただし、Roth期の軽妙さやHagar期のメロディアスな開放感とは異なり、全体には硬さがある。この硬さこそ、Cherone期Van Halenの特徴でもある。

4. From Afar

「From Afar」は、距離、観察、届かない思いをテーマにした楽曲である。タイトルは「遠くから」という意味で、相手に近づけない感覚、あるいは人生や世界を距離を置いて見つめる視点が含まれている。

サウンドはミッドテンポで、やや重く、内省的である。Eddieのギターは流麗だが、楽曲全体は明るく開けるというより、抑制された緊張感を保っている。Gary Cheroneの歌唱は、RothやHagarに比べて劇的で、歌詞の心理的な陰影を強く伝えようとしている。

歌詞の内容は、直接的な愛の告白ではなく、遠くから見つめることの切なさや、関係に踏み込めない不安を感じさせる。Van Halenの過去の作品には少なかったタイプの繊細な心理描写であり、本作が従来の快楽的なロックから離れていることを示している。

5. Dirty Water Dog

「Dirty Water Dog」は、本作の中でもリズム面に独特の跳ねがあり、比較的ファンキーな感覚を持つ楽曲である。タイトルはやや奇妙で、汚れた水、野良犬のようなイメージから、社会の底辺や本能的な生存感覚を連想させる。

音楽的には、ギター・リフが鋭く、リズムは硬いが、曲全体にはグルーヴがある。Gary CheroneはExtreme時代にファンク・メタル的なリズム感覚を経験しており、この曲ではその相性が比較的よく出ている。Eddieのギターも、単純なハードロックではなく、細かいリズムの切り返しを含んでいる。

歌詞では、汚れた環境の中で生きること、誇りを失わずに進むこと、あるいは人間の野性的な側面が描かれているように読める。本作の中では、重さと遊び心のバランスが比較的取れた楽曲である。

6. Once

「Once」は、『Van Halen III』の中でも特に長く、実験的な楽曲である。静かな導入、ゆったりとした展開、内省的な歌詞、キーボードや空間的な音作りが特徴で、従来のVan Halenのイメージから大きく離れている。

歌詞では、一度きりの人生、過去にあった瞬間、取り戻せない時間がテーマになっている。タイトルの「Once」は、かつて、あるいは一度だけという意味を持ち、記憶と喪失を強く感じさせる。Gary Cheroneの歌唱は非常に感情的で、楽曲のドラマ性を支えている。

音楽的には、Eddie Van Halenの作曲家としての野心が表れている。ハードロックの即効性よりも、ムードと展開を重視し、プログレッシブ・ロック的な構成に近づいている。ただし、その長尺性は評価が分かれる部分でもある。Van Halenに期待される鋭いフックやリフの瞬発力は薄く、聴き手に集中を求める曲である。とはいえ、本作の実験精神を最もよく示す一曲である。

7. Fire in the Hole

「Fire in the Hole」は、本作の中でも比較的攻撃的で、ハードロックらしい力を持つ楽曲である。リフは重く、ドラムは力強く、アルバム中盤に鋭いアクセントを加えている。

歌詞では、危機、爆発、抑圧された怒りがテーマになっている。タイトルの「Fire in the Hole」は爆破前の警告として使われる表現であり、内部にたまったエネルギーが一気に噴き出す感覚を持つ。これはバンドの状況にも重なる。新体制への不安、過去との比較、創作上の葛藤が、音楽的な爆発として表れている。

Eddieのギターはここで非常に鋭く、リフとソロの両方で存在感を放つ。Gary Cheroneの声も力強く、曲のハードな性格に合っている。本作の中では比較的即効性があり、Van Halenらしい攻撃性を求めるリスナーに届きやすい楽曲である。

8. Josephina

「Josephina」は、アルバムの中でも特にメロディアスで、バラード的な性格を持つ楽曲である。タイトルに人名を用いていることから、特定の人物への呼びかけとして聴くことができる。

歌詞では、孤独、保護、慰め、救済の感覚が描かれる。Josephinaという人物は、現実の女性であると同時に、傷ついた存在や理想化された救いの象徴のようにも響く。Gary Cheroneの歌唱は柔らかく、楽曲の感傷的な側面を強調している。

音楽的には、Eddieのギターとキーボードが穏やかな空間を作り、サビではメロディが広がる。Hagar期のパワー・バラードとは異なり、より内向的で繊細な印象がある。商業的な大きなフックには欠けるが、本作の人間的な温度を示す重要な楽曲である。

9. Year to the Day

「Year to the Day」は、アルバムの中でも特に重く、ブルージーで、長尺の構成を持つ楽曲である。タイトルは「ちょうど一年」という意味で、時間の経過、喪失、記念日、過去への回帰を示している。

歌詞では、ある出来事から一年が経った後の感情が描かれる。失われた関係、後悔、記憶の痛みが中心にある。Van Halenの過去の楽曲では、恋愛や人生を明るく豪快に扱うことが多かったが、この曲では時間の重みと精神的な疲労が前面に出る。

音楽的には、ブルース・ロック的なギターのうねりと、重いドラムが印象的である。Eddieはここで速弾きよりも、感情を引き伸ばすようなフレージングを重視している。曲の長さは聴き手を選ぶが、彼のギタリストとしての表現力がよく表れた楽曲である。

10. Primary

「Primary」は、短いインストゥルメンタルであり、次曲「Ballot or the Bullet」への導入として機能している。タイトルは「予備選挙」や「原初的なもの」を意味し、政治的なニュアンスと根源的な感覚の両方を持つ。

音楽的には、リズムとギターの断片が中心で、完成された曲というよりも、緊張を高めるための間奏に近い。Van Halenのアルバムでは、Eddieのギターによる短いインストゥルメンタルが重要な役割を果たすことがあるが、この曲もその系譜にある。

ただし、「Eruption」のような技巧のショーケースではなく、アルバム後半の重いテーマへ向かうための接続部分である。本作の構成志向を示す小品と言える。

11. Ballot or the Bullet

「Ballot or the Bullet」は、政治的な響きを持つタイトルの楽曲である。「投票か弾丸か」という表現は、マルコムXの有名な演説を想起させ、民主的手段と暴力的手段の緊張を示している。Van Halenとしては珍しく、社会的・政治的な含みの強いタイトルである。

歌詞では、選択、権力、社会の緊張、行動の必要性がテーマになっている。Gary CheroneはExtreme時代から、単なる享楽的なロックだけでなく、社会的な問題意識を含む歌詞にも関わってきた。この曲では、その傾向がVan Halenの音楽に持ち込まれている。

音楽的には、リフが硬く、リズムも前のめりである。Eddieのギターは鋭く、Alexのドラムも曲に強い圧力を与える。本作の中ではハードな側面が強く、メッセージ性と演奏の攻撃性が結びついた楽曲である。ただし、従来のVan Halenに慣れたリスナーには、その真面目さが異質に感じられる部分でもある。

12. How Many Say I

ラストを飾る「How Many Say I」は、本作最大の異色曲である。Eddie Van Halen自身がリード・ボーカルを担当し、ピアノを中心としたバラードとして構成されている。Van Halenのアルバムを締めくくる曲としては極めて異例であり、バンドの歴史の中でも特に賛否が分かれる楽曲である。

歌詞では、自己への問い、責任、孤独、人生の重みが描かれる。「どれだけの人が“自分”と言えるのか」というような問いは、個人の存在や主体性への内省に近い。本作全体のテーマである自己探求、変化、苦悩がここで最も直接的に表れる。

音楽的には、ロック・バンドとしてのVan Halenの力強さよりも、Eddie個人の告白に近い。歌唱はプロのボーカリストのそれではなく、非常に生々しい。技術的な完成度というより、作り手自身が言葉を発することに意味がある曲である。

この曲を成功と見るか、アルバムの焦点をさらに曖昧にした要素と見るかは評価が分かれる。しかし、Eddie Van Halenがこの時期に単なるギター・ヒーローではなく、より広い表現者として自分を提示しようとしていたことは明らかである。『Van Halen III』の異色性を最も象徴する終曲である。

総評

『Van Halen III』は、Van Halenのディスコグラフィーにおいて最も評価が難しいアルバムである。David Lee Roth期の陽気で鋭いハードロック、Sammy Hagar期のメロディアスなアリーナ・ロック、そのどちらの延長にも素直には収まらない。Gary Cheroneを迎えた本作は、より重く、長く、内省的で、実験的な方向へ進んでいる。

このアルバムの最大の問題は、Van Halenという名前に期待される快楽性と、本作が実際に提示する音楽性の間に大きな距離があることだ。Van Halenの多くの名曲は、複雑な演奏を内包しながらも、表面上は非常に明快で、楽しく、瞬発力があった。しかし『Van Halen III』では、楽曲が長く、構成が複雑で、歌詞も重く、即効性のあるフックが少ない。そのため、過去のファンにとっては戸惑いを生みやすい。

一方で、この作品を単なる失敗と断定するのは不十分である。Eddie Van Halenのギターは本作でも創造的であり、特に「Without You」「Fire in the Hole」「Year to the Day」などでは、彼のリフ構築力と感情表現がよく表れている。また、Gary CheroneはRothやHagarとはまったく異なるタイプのシンガーであり、彼の演劇的で真面目な歌唱は、本作の内省的な方向性に一定の説得力を与えている。

本作は、バンドが自らの型を壊そうとしたアルバムである。成功した部分もあれば、過剰に広げすぎた部分もある。曲をもっと短く整理し、メロディの焦点を明確にしていれば、評価は異なった可能性がある。しかし、その未整理な部分こそが、このアルバムの生々しさでもある。Eddie Van Halenが音楽的に何を求め、どこへ向かおうとしていたのかが、完成された形ではなく、模索のまま記録されている。

『Van Halen III』は、Van Halenの代表作として推奨される作品ではない。しかし、バンドの歴史を深く理解するうえでは避けて通れないアルバムである。成功の法則を繰り返すのではなく、別の可能性に踏み込んだこと。その結果として、混乱や不均衡を抱えたこと。そのすべてが、長く続いたロック・バンドの変化と限界を示している。

この作品は、Van Halenの華やかな勝利の記録ではなく、創作上のリスクと迷いの記録である。だからこそ、時間を置いて聴くと、単なる失敗作以上の意味が見えてくる。Eddie Van Halenという音楽家が、自分のギター・ヒーロー像を越えようとした瞬間。その不完全な証言として、『Van Halen III』は独自の位置を占めている。

おすすめアルバム

Van Halen『5150』

Sammy Hagar加入後の初作。ボーカリスト交代を成功へ導いた作品であり、『Van Halen III』との対比でバンドの方向性の違いがよく見える。

Van Halen『Balance』

Gary Cherone加入前の最後のSammy Hagar期アルバム。より重く内省的な要素があり、『Van Halen III』への前兆を感じられる。

Extreme『III Sides to Every Story』

Gary Cheroneの演劇的な歌唱と社会的・精神的テーマを理解するうえで重要な作品。『Van Halen III』との接点が多い。

Van Halen『A Different Kind of Truth』

後年のDavid Lee Roth復帰作。『Van Halen III』とは異なる形で、過去のVan Halenを再構築した作品である。

David Lee Roth『A Little Ain’t Enough』

Rothのソロ・キャリアにおけるハードロック作品。Van Halen本体とは別方向に展開したRothの個性を比較できる。

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