アルバムレビュー:Trouble Maker by ランシド(Rancid)

※本記事は生成AIを活用して作成されています。

発売日:2017年6月9日

ジャンル:Punk Rock / Ska Punk

概要

Trouble Makerは、Rancidが2017年に発表した9作目のスタジオ・アルバムである。前作…Honor Is All We Knowから約3年を経て制作され、プロデューサーには長年バンドと仕事をしてきたBrett Gurewitzが参加した。1990年代から続くパンクロック、スカ、ストリートパンクの組み合わせを大きく変更する作品ではないが、短い曲を次々につなぐ構成と、Tim Armstrong、Lars Frederiksenという個性の異なるボーカルを生かし、Rancidらしい演奏をかなり直接的な形でまとめている。

オリジナルの通常盤は全17曲で、全体の多くを2分台の曲が占める。ギターは細かな装飾よりコードとリフの勢いを重視し、Matt Freemanのベースはその隙間を縫うようによく動く。Branden Steineckertのドラムも速い8ビートだけに頼らず、曲によって跳ね方やアクセントを変えているため、曲数の多さに対して流れは軽快だ。スカの裏打ちを使う場面もあるが、アルバム全体としてはストレートなパンクロックの比重が高い。

歌詞では、社会の周縁で生きる人物、都市生活、仲間との結びつき、過去の記憶など、Rancidが長年扱ってきた題材が再び登場する。政治や社会への視線を含む曲でも大きな理念を説明するより、具体的な人物や場所を通して状況を描くことが多い。長いキャリアを振り返る要素がありながら、懐古だけに寄らず、現在進行形のバンドとして短く鋭い曲を鳴らしている点が本作の基本的な姿勢である。

全曲レビュー

1. 「Track Fast」

アルバムの入口は1分に満たない高速パンクで、イントロらしい助走もほとんどなく演奏が始まる。ギターは細かなフレーズを作るよりコードを強く刻み、ドラムも前へ押し続けるため、タイトル通り一気に駆け抜ける感覚がある。曲そのものを大きく展開させるのではなく、このアルバムが余分な部分を削った短いパンクソングを中心に進むことを最初に宣言する役割を持つ。

2. 「Ghost of a Chance」

荒いギターの音とは対照的に、サビにはすぐ覚えられるメロディが置かれている。希望がほとんど残されていない状況でも可能性を手放さないという内容が、悲観一辺倒ではない曲調につながっている。Tim Armstrongのしゃがれた声を中心にしながらコーラスで厚みを加え、Rancidが得意とする「荒い演奏の中で歌えるサビを作る」という方法をコンパクトに示した曲だ。

3. 「Telegraph Avenue」

バークレーからオークランドへ伸びるTelegraph Avenueを題材に、土地と記憶を結びつけた曲。疾走するだけではなく、歌のメロディにはどこか郷愁があり、街を単なる背景ではなく人生の時間が蓄積した場所として扱っている。Rancidにとって重要なイーストベイという地域性を、政治的な標語ではなく個人的な風景から描いている点がこの曲の魅力である。

4. 「An Intimate Close Up of a Street Punk Trouble Maker」

アルバムタイトルを含む長い曲名に対し、演奏は短く単純明快である。歪んだギターと素早いドラムを前に出し、ストリートパンクというRancid自身の出自を半ば人物紹介のような形で描く。大げさな自己神話にするより、社会の中心から外れた人物の姿を素早く切り取ることで、アルバム全体の人物描写にもつながっている。

5. 「Where I’m Going」

Lars Frederiksenの力強い歌声と、集団で歌えるようなコーラスが中心になる。コード進行は簡潔で、ギターも歌を押しのけるような装飾を入れないため、進む方向を自分で決めようとする歌詞が直接伝わる。Rancidの中でもストリートパンク寄りの力強さが前面に出ており、ライブで観客が一緒に声を上げる光景を想像しやすい作りだ。

6. 「Buddy」

短い時間の中で人物に焦点を合わせる、Rancidらしいストーリーテリング型の曲である。ギター、ベース、ドラムは勢いを落とさず、説明を長く重ねる代わりに断片的な言葉から「Buddy」という人物の輪郭を作っていく。大きな社会問題を正面から論じるのではなく、一人の人間を追うことでその背後にある環境まで想像させる書き方が生きている。

7. 「Farewell Lola Blue」

タイトルが示す通り別れを扱う曲だが、演奏は沈み込まず、明確なビートを保って進む。メロディには哀愁があり、荒いボーカルとの組み合わせによって感傷を過剰に甘くしない。人物の記憶を歌に残すというRancidの得意な方法が使われており、前半の高速曲が続いた後で、歌そのものを意識させるポイントになっている。

8. 「All American Neighborhood」

短いフレーズを繰り返すギターとせわしないリズムによって、再びテンポを引き上げる。題名にある「All American」という言葉には単純な愛国的賛美とは違う含みがあり、アメリカの日常や地域社会を少し距離を置いて眺める視線が感じられる。演奏を複雑にせず、言葉と勢いを同時に押し出すことで2分前後のパンクソングとしてまとめている。

9. 「Bovver Rock and Roll」

1970年代の英国ストリート文化やグラムロックに結びつく「bovver」という言葉を掲げ、太いビートとロックンロール色の強いギターを鳴らす。高速パンク一辺倒ではなく、拍をしっかり踏むリズムによって身体を揺らす感覚が強い。Rancidの音楽にある初期パンク以前のロックンロールへの親しみを、アルバム中でも特に分かりやすく聞かせる曲である。

10. 「Make It Out Alive」

切迫したタイトルに合わせて、ギターとドラムが休まず前進する。ここでは技巧的な展開より、サビへ最短距離で到達する構成が効果を上げている。厳しい状況から「生きて抜け出す」という感覚が演奏の速度と結びつき、悲壮感を強めるより、生存への意志を集団的なエネルギーへ変えるRancidらしいパンクソングになっている。

11. 「Molly Make Up Your Mind」

Mollyという相手へ決断を促す歌詞を、軽快なロックンロールとして聞かせる。タイトルの呼びかけがそのままフックとして働き、細かな説明をしなくても人物同士の距離や焦りが伝わる。中盤以降にこうしたメロディ重視の曲を置くことで、高速曲が続くアルバムに変化を与えている。

12. 「I Got Them Blues Again」

「ブルース」という言葉を使いながら、伝統的なブルースをそのまま演奏するのではなく、Rancid流のパンクとロックンロールへ置き換えている。落ち込んだ感情を遅い演奏で表現するのではなく、動きのあるリズムに乗せるため、憂鬱さと勢いが同居する。バンドがパンク以外の古いアメリカ音楽からも語彙を取り込んできたことが見えやすい一曲だ。

13. 「Beauty of the Pool Hall」

プールホールという日常的な場所を舞台にすることで、華やかな世界ではなく街角の生活へ視線を向ける。Rancidの歌詞ではこうした場所が人物と同じくらい重要で、そこで過ごす人々や時間を断片的に描くことで風景を立ち上げる。演奏も過剰にドラマを作らず、素朴なロックンロールの感触を残している。

14. 「Say Goodbye to Our Heroes」

本作でも特に回顧的な視点が強く、失われていく「ヒーロー」たちへの別れを歌う。長く活動してきたバンドだからこそ、憧れた人物や仲間との別れは抽象的な青春の話ではなく、時間の経過そのものとして響く。力強いコーラスを使いながらも勝利の歌にはせず、喪失と敬意を同時に表しているところが後半の大きなアクセントになる。

15. 「I Kept a Promise」

約束を守るという簡潔な言葉を中心に、忠誠や人との結びつきを扱う。Rancidが繰り返し歌ってきた友情や仲間意識に近い題材だが、ここでは長い説明を避け、短い曲の中で決意そのものを押し出している。演奏も装飾を抑え、ギターとリズム隊の直線的な動きが言葉の迷いのなさとよく合う。

16. 「Cold Cold Blood」

題名通り、それまでより暗く攻撃的な感触を持つ曲。低いギターリフと硬いリズムが緊張を作り、明るいシンガロング型の曲とは異なる表情を見せる。終盤でこうした陰のある曲を置くことにより、アルバムが単純な祝祭感のまま終わるのを避け、最後の曲へ向けて音の色を変えている。

17. 「This Is Not the End」

通常盤の最後を飾る曲は、その題名自体がバンドの継続を宣言するように響く。Rancidはここで大作的なエンディングを作らず、最後までギター、ベース、ドラム、声という基本的な編成で押し切る。「終わりではない」という言葉は、結成から長い時間を経たバンドの立場とも自然に重なり、回顧的な要素を持つ本作を過去ではなく次へ向けて閉じている。

総評

Trouble Makerには、Rancidが新しいジャンルへ踏み出したという種類の驚きは少ない。むしろ面白いのは、長年使ってきたパンク、スカ、ロックンロールの語彙をどこまで簡潔に扱えるかという点である。17曲を詰め込みながら大半を短くまとめ、イントロや間奏を必要以上に引き延ばさない。曲ごとに一つか二つの強いアイデアを決め、それを使い切ったところで終えるため、作品全体にもライブセットのような速度が生まれている。

演奏面ではMatt Freemanのベースが大きな役割を担う。ギターが単純なコードを刻んでいる場面でも、ベースがその下を細かく移動することで曲に独特の運動量が加わる。Armstrongのしゃがれた歌声とFrederiksenの太く直線的な歌声の違いも、似たテンポの曲が続いたときの変化になる。Steineckertのドラムを含め、各メンバーが目立つために演奏するというより、短い曲を勢いよく成立させるために役割を分担している。

歌詞では、イーストベイの風景、名前を持った登場人物、仲間、別れ、社会の周辺にいる人々が何度も現れる。若い頃の反抗をそのまま再演するのではなく、長く生き残った側から過去や失われた人物を見る視点が加わったことで、1990年代の代表作とは違う重みが生まれている。それでも説教的な回顧録にはならず、個々の話を2分ほどのパンクソングへ落とし込む姿勢は変わらない。

Rancidの最高速度や最も大胆なジャンル混合を示す作品というより、バンドが長年磨いてきた方法を無駄なく使ったアルバムと考えると分かりやすい。初期作品の切迫感を完全に再現することはできない一方、メロディの作り方や曲順には経験による安定感がある。過去を振り返る歌が増えても最後を「This Is Not the End」で閉じる構成が示すように、Trouble MakerはRancidの歴史を整理する作品ではなく、その歴史を背負ったまま活動を続けるためのパンクロックである。

おすすめアルバム

###…And Out Come the Wolves by Rancid

Rancidのパンク、スカ、レゲエ、ポップなメロディが最も鮮明に組み合わされた1995年作。Trouble Makerに残るストリート感覚や人物中心の歌詞が、より若く切迫した演奏の中で聞ける。

Indestructible by Rancid

喪失や友情、バンドとして生き続けることを扱った2003年作。Trouble Makerの回顧的な歌詞につながる部分が多く、荒々しいパンクと親しみやすいメロディを両立させる作曲も比較しやすい。

Let’s Go by Rancid

1994年の2作目で、短い曲を大量に並べて勢いを維持する構成はTrouble Makerの直接的なスタイルと好相性である。後年ほどアレンジは多彩ではないぶん、初期Rancidの速度と荒さが鮮明に残っている。

Energy by Operation Ivy

Tim ArmstrongとMatt FreemanがRancid以前に在籍したOperation Ivyの音源をまとめた作品。高速パンクとスカを自然に往復する方法や、社会への視線とシンガロングを結びつける感覚から、Rancidの音楽的な原点を確認できる。

London Calling by The Clash

パンクを中心にしながらスカ、レゲエ、ロックンロールなどを一枚の中で扱った作品で、Rancidの音楽を理解するうえでも比較しやすい。Trouble Makerより音楽的な振幅は広いが、ジャンルを越えてもストリートの視点を失わない点が共通している。

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