1. 歌詞の概要
「If I Had Eyes」は、Jack Johnsonが2008年に発表したアルバム『Sleep Through the Static』に収録され、シングルとしてもリリースされた楽曲である。タイトルの直訳は「もし僕に目があったなら」であり、歌詞は「終わりを迎えつつある関係」をテーマにしている。
曲の語り手は、相手との関係がすでに冷めてしまい、崩壊へと向かっていることに気づいている。冒頭で「もし僕に目があれば、君の行動のすべてが見抜けるのに」と歌い、相手の態度や気持ちの変化を悟っている。サビでは「終わりはただの始まりにすぎない」と繰り返し、別れの痛みの中にも新しいスタートを肯定するメッセージが込められている。
穏やかなメロディにのせられた歌詞は、悲しみや喪失感を描きつつも、前向きな余韻を残すのが特徴である。
2. 歌詞のバックグラウンド
『Sleep Through the Static』は、イラク戦争や環境問題などを背景に、社会的・個人的テーマを織り交ぜたアルバムである。「If I Had Eyes」はその中でもより個人的なテーマを扱い、愛や人間関係の終焉を描いている。
ジャック・ジョンソンはインタビューで、この曲を「別れを描きつつも、新しい始まりを肯定する曲」と語っている。つまり単なる失恋ソングではなく、「終わり」を人生の自然なサイクルとして受け止め、そこから前に進む力を見出そうとしているのだ。
音楽的には、彼の得意とするアコースティック・サウンドに加え、軽快なリズムと明るさがあり、歌詞の切なさとは対照的な雰囲気を生み出している。この「悲しみと明るさの同居」が、曲全体にユニークなニュアンスを与えている。
3. 歌詞の抜粋と和訳
（歌詞引用元：Jack Johnson – If I Had Eyes Lyrics | Genius）
If I had eyes in the back of my head
もし僕の後ろに目があったなら
I would have told you that you looked good as I walked away
君が去っていくとき、素敵に見えたよと言えたのに
And if you could see yourself through my eyes
もし君が僕の目を通して自分を見られたなら
You would know that I tried
君はきっと、僕が努力したことを分かってくれるだろう
サビでは「It’s just the end of the world / It’s just the end of the end（これは世界の終わりなんかじゃない、ただ一つの終わりにすぎない）」と歌い、別れを「新しい始まりの契機」として肯定している。
4. 歌詞の考察
「If I Had Eyes」は、ジャック・ジョンソンの音楽の中でも特に「喪失と再生」というテーマを強く打ち出した曲である。歌詞は愛の終わりを率直に描いているが、その語り口は穏やかで優しく、別れを「悲劇」ではなく「自然な流れ」として受け止めている。
この曲における重要なモチーフは「視点」である。「もし目があれば」という仮定は、「相手の本当の姿」や「関係の真実」を見抜きたかったという後悔を含んでいる。しかし同時に「自分の目を通して君を見れば、僕がどれだけ努力したか分かるはずだ」とも語る。つまり、関係の終焉には双方の視点があり、それをどう捉えるかによって別れの意味が変わるのだ。
また、「終わりは新しい始まりでしかない」というメッセージは、アルバム全体のトーンとも呼応している。戦争や環境問題といった社会的テーマに通じる「終末感」をも内包しながら、「それでも前に進むしかない」という希望を示している。
5. この曲が好きな人におすすめの曲
- Losing Keys by Jack Johnson
同じアルバム収録で、人生と選択の意味を問いかける楽曲。 - Breakdown by Jack Johnson
立ち止まることの意味を穏やかに歌い上げる名曲。 - Better Together by Jack Johnson
愛と日常の肯定を描いた代表曲。 - Stop This Train by John Mayer
人生の流れと時間の不可逆性をテーマにした楽曲。 - Let It Be by The Beatles
別れや苦難を「受け入れること」で乗り越える普遍的アンセム。
6. 終わりを肯定する“別れの哲学”
「If I Had Eyes」は、Jack Johnsonが持つ「人生を肯定する力」が最もよく表れた楽曲のひとつである。愛や関係の終わりを否定的に捉えるのではなく、それを「自然な流れ」として受け入れ、前に進むことを歌っている。その姿勢は、彼の音楽全体に共通する「穏やかな哲学」ともいえる。
悲しみの中に優しさを見出し、別れを「始まり」として歌い上げるこの曲は、聴き手に「変化を恐れずに受け入れる勇気」を与えてくれる。まさに『Sleep Through the Static』というアルバムの核心を象徴する楽曲であり、Jack Johnsonのキャリアの中でも重要な位置を占める名曲なのである。
コメント